本記事について
特定の医療機関を推薦する記事ではありません。また、「あなたの状態なら在宅医療に切り替えるべきです」という判断をする記事でもありません。 2つの言葉が制度上どう決められていて、費用や体制がどういうしくみで動いているのかという、受診行動と制度の説明にとどめています。
要件と点数は令和8年度(2026年度)の医科診療報酬点数表とその実施上の留意事項通知、在宅療養支援診療所の要件は特掲診療料の施設基準等の通知、在宅医療の位置づけは医療法と介護保険法を出典にしています(末尾に一覧・確認日を記載)。診療報酬は改定のたびに変わります。 この記事は令和8年4月1日施行の内容に基づいています。
はじめに
親が退院してくることになった。足腰が弱って、病院までタクシーで往復するのが本人にも家族にもこたえる。そういうとき、調べはじめると必ず出てくるのが「往診」と「訪問診療」という2つの言葉です。
そして、たいていの人がここで混乱します。どちらも「医師が家に来てくれること」を指しているように見えるからです。 実際、日常会話では「往診してもらう」が家に来てもらうこと全般の意味で使われています。医療機関の案内にも、両方が並んで書かれていることがよくあります。
ところが制度の上では、この2つはまったく別のものとして設計されていて、要件も、費用のかかり方も、頼み方も違います。ここを取り違えたまま問い合わせると、話がかみ合いません。
往診は、患者や家族が「来てほしい」と求めたときに、臨時で来てもらうものです。訪問診療は、通院が困難な方について、あらかじめ同意を取って計画を立て、定期的に通ってもらうものです。 制度上は「定期的・計画的に行った往診」は往診として扱われず、逆に、訪問診療を受けている方の急変時に来てもらうのは訪問診療ではなく往診にあたります。つまり2つは、どちらかを選ぶものではなく、組み合わせて使うものです。
実際に探すときは
現在、以下のエリアで在宅医療(訪問診療)の記事を公開しています。
制度の上では、「求めに応じて行く」のが往診、「計画して通う」のが訪問診療
2つの違いがいちばんはっきり書かれているのは、診療報酬の実施上の留意事項通知です。往診料(C000)の説明は、こう始まります。
往診料は、患者または家族等の患者の看護等に当たる者が、保険医療機関に対し電話等で直接往診を求め、当該保険医療機関の医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに患家に赴き診療を行った場合に算定できる——そして、定期的ないし計画的に患家に赴いて診療を行った場合には算定できない、と明記されています(出典:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1(令和8年3月5日保医発0305第6号))。同じ通知の別の項でも、定期的または計画的に行われる対診の場合は往診料を算定できないと念を押しています。
一方の在宅患者訪問診療料(C001)は、在宅での療養を行っている患者であって、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者に対して、定期的に訪問して診療を行った場合の評価と説明され、点数表の側では患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合に算定するとされています(出典:厚生労働省「別表第一 医科診療報酬点数表」(令和8年厚生労働省告示第69号))。
整理すると、こうなります。
| 往診(C000) | 訪問診療(C001) | |
|---|---|---|
| きっかけ | 患者・家族等が電話等で直接求め、医師が必要性を認めたとき | あらかじめ医師が計画を立てる |
| タイミング | 臨時。可及的速やかに赴く | 定期的。計画に基づく |
| 対象 | 明示的な限定は無い | 在宅で療養していて、通院による療養が困難な人 |
| 同意 | 求めること自体が依頼 | 本人または家族等の署名付の同意書を作成し、診療録に添付する |
| 回数の上限 | 定めは無い | 原則週3回まで(国が定める疾病等の患者は除く) |
| 基本の点数 | 720点 | 890点(同一の建物に住む他の患者を同じ日に診る場合は215点) |
「定期的・計画的かどうか」が、この2つを分ける唯一の軸です。 医師が来るという見た目は同じでも、制度はそこで線を引いています。
訪問診療中の急変で来てもらうのは、「往診」にあたる
ここが実務でいちばん誤解されるところです。通知は、定期的・計画的な訪問診療を行っている期間における緊急の場合の往診の費用については、在宅患者訪問診療料は算定せず、往診料および再診料または外来診療料を算定すると定めています。
在宅患者の診療・指導の通則でも、同じ日に訪問診療料等のいずれか1つを算定した日は他のものを算定できないと定めたうえで、訪問診療等を行った後、患者の病状の急変等により往診を行った場合の往診料の算定については、この限りではないという例外が置かれています。
制度は、訪問診療と往診を「重ねて使うもの」として設計しているということです。定期の訪問診療が土台にあり、そのあいだの急な変化を往診が受け止める。実際の在宅医療は、この2本立てで動いています。
訪問診療を受けられるのは「通院が困難な人」——線引きはどこにある?
訪問診療には、往診には無いはっきりした対象要件があります。在宅で療養していて、疾病・傷病のために通院による療養が困難な者です。
そして通知は、継続的な診療の必要のない者や通院が可能な者に対して安易に算定してはならないと釘を刺したうえで、判断の目安をひとつだけ具体的に挙げています。
「少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、通院は容易であると考えられるため、在宅患者訪問診療料は算定できない」
つまり、寝たきりであることは条件ではありません。 独りで歩いて通えるかどうかが、通知が示した一本の線です。付き添いがなければ通えない、外出のたびに介助が要る、といった状態は、この線の向こう側にあります。
通知はあわせて、訪問診療を行っておらず外来受診が可能な患者には、外来で地域包括診療加算や地域包括診療料を算定できる、とも書いています。通院できる人は外来でかかりつけを持つ、通院が困難になったら在宅医療へという役割分担が、点数表の上でもつながっているわけです(かかりつけ医のしくみは「かかりつけ医」を持つと何がいいの?にまとめています)。
なお、訪問診療を実施するときは、本人または家族等の署名付の同意書を作成して診療録に添付すること、訪問診療の計画と診療内容の要点を診療録に記載すること、訪問した日の診療の開始時刻と終了時刻および診療場所を診療録に記載することが要件として定められています。「なんとなく定期的に来てもらっている」という状態は、制度上は想定されていません。
そもそも在宅医療は、法律上どう位置づけられている?
医療法第1条の2第2項は、医療は病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設と、医療を受ける者の居宅等において提供されなければならない、と定めています(出典:医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2(e-Gov法令検索))。
「居宅等」が、病院や診療所と並んで条文に書かれている——在宅医療は例外的な扱いではなく、医療が提供される場所のひとつとして法律に位置づけられている、ということです。
24時間の往診体制を支えている「在宅療養支援診療所」とは?
「往診してもらえますか」と聞いたとき、答えが医療機関によって大きく違うのはなぜか。鍵になるのが在宅療養支援診療所(在支診)という届出の区分です。
通知は在宅療養支援診療所を、地域における患者の在宅療養の提供に主たる責任を有するものであり、患者からの連絡を一元的に当該診療所で受けるとともに、患者の診療情報を集約する等の機能を果たす必要があるものと説明し、そのために緊急時の連絡体制および24時間往診できる体制等を確保しなければならないとしています。
施設基準では、たとえば次のようなことが求められます(出典:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第8号)第9)。
- 24時間連絡を受ける保険医または看護職員をあらかじめ担当者として指定し、直接連絡がとれる電話番号等と緊急時の注意事項を、事前に文書で患者・家族に渡していること
- 患家の求めに応じて24時間往診が可能な体制を確保し、往診担当医の氏名・担当日等を文書で患家に提供していること
- 自院または他の医療機関・訪問看護ステーションとの連携により、24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保していること
- 有床診療所は自院に、無床診療所は他の医療機関との連携により、緊急時に入院できる病床を常に確保し、受入医療機関の名称等を地方厚生局長に届け出ていること
- 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン等を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を作成していること
さらに、要件を上積みした機能強化型という区分があります。単独型では、在宅医療を担当する常勤医師が3名以上、過去1年間の緊急の往診の実績が10件以上、過去1年間の在宅における看取りの実績が4件以上(または15歳未満の超重症児・準超重症児への在宅医療の実績が4件以上)といった実績が求められます。
この区分の違いは、往診の点数にもそのまま出ます。 たとえば夜間・休日往診加算は、病床を有する機能強化型の在宅療養支援診療所であれば1,700点、病床を有しない機能強化型なら1,500点、それ以外の在宅療養支援診療所は1,300点、在宅療養支援診療所でない医療機関は650点、と段階が付いています。24時間動ける体制をつくって維持することに、費用が割り当てられているという構造です。
「うちは往診はやっていません」と言われるのは、珍しいことではない
在宅療養支援診療所は全国に14,725施設あり、そのうち病床を持つのは1,330施設(9%)です(令和6年3月31日時点)。届出施設数は近年おおむね横ばいで推移しています。
そして、在宅療養支援診療所も在宅療養支援病院もどちらもない市区町村が379自治体あります。厚生労働省の調査では、届出を行わない理由として最も多かったのが「満たすことが難しい基準があるため」で、その満たすことが難しい基準としては、診療所の84.0%が「24時間連絡を受ける体制の確保」または「24時間の往診体制」を挙げています(出典:厚生労働省「在宅医療の提供体制の整備に関する検討等について」(第3回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ・令和7年11月19日))。
24時間の往診体制は、意欲だけでは維持できません。 かかりつけの診療所に「夜中でも来てもらえますか」と聞いて色よい返事がもらえなくても、それはその医療機関の姿勢の問題とは限らない、ということです。
費用は、どういう単位でかかる?
在宅医療の費用は、外来と同じ「1回いくら」だけでは決まりません。大きく3つの層があります。
1つめ。訪問1回ごとの点数です。 往診料は720点、在宅患者訪問診療料は890点(同じ建物に住む複数の患者を同じ日に診る場合は215点)。往診には、時間帯や医療機関の区分に応じた加算が付きます。夜間(深夜を除く)は午後6時から午前8時まで、深夜は午後10時から午前6時まで、休日は日曜日と祝日(および1月2日・3日と12月29日から31日まで)と定められています。ただし、その時間帯が標榜時間に含まれている場合、夜間・休日往診加算と深夜往診加算は算定できません。
2つめ。月単位の管理料です。 在宅時医学総合管理料(C002)は、通院困難な患者について個別の患者ごとに総合的な在宅療養計画を作成し、定期的に訪問して診療を行い、総合的な医学管理を行った場合の評価で、月1回に限り算定されます。点数は、同じ建物のなかで何人を診ているか(単一建物診療患者の人数)や、月の訪問回数、患者の状態によって変わります。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などに入居している場合は、施設入居時等医学総合管理料(C002-2)のほうが使われます。
3つめ。交通費です。 点数表は、往診に要した交通費は患家の負担とすると定めており、通知はこれを実費とし、自家用車による費用を含むとしています。訪問診療の交通費も同じ扱いです。ただし自転車・スクーター等の費用は往診料に含まれているので、これは患家の負担にはなりません。
なお、往診を求められて患家へ赴いたが、すでに他の医療機関を受診していたため診察を行わないで帰った場合の往診料は、療養の給付の対象とせず患者負担とするという定めもあります。呼んだあとに別の手段で受診したときは、その旨をできるだけ早く伝えるのが双方のためです。
介護保険の側にも、似た名前のサービスがある
要介護認定を受けている方の場合、介護保険に居宅療養管理指導というサービスがあります。介護保険法第8条第6項は、これを居宅要介護者について、病院、診療所または薬局の医師、歯科医師、薬剤師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の管理および指導と定めています(出典:介護保険法(平成9年法律第123号)第8条(e-Gov法令検索))。
訪問診療そのものは医療保険、療養上の管理・指導は介護保険というように、在宅医療は2つの保険にまたがっています。どこまでが医療保険でどこからが介護保険かは個別の状況で変わるため、費用の見通しは、担当のケアマネジャーと医療機関の両方に確認するのが確実です。
よくある誤解は?
「往診は、夜中でも電話すれば来てくれるサービス」——すべての医療機関がそうではありません。
24時間の往診体制は、在宅療養支援診療所などが施設基準として確保しているものです。前章のとおり、その体制の確保が届出をためらう最大の理由になっているほど負担の重いものです。かかりつけの診療所が日中しか往診していないことも、往診自体を行っていないことも、まったく珍しくありません。 在宅医療を始めるときは、24時間の連絡先と往診担当医の氏名・担当日が書かれた文書を受け取れるかを確認してください。在宅療養支援診療所の要件では、これを事前に文書で渡すことになっています。
「訪問診療は寝たきりの人のもの」——要件は「通院による療養が困難」かどうかです。
通知が示した目安は、独りで歩いて、家族や介助者の助けを借りずに通院できるかどうかでした。寝たきりかどうかではありません。一方で、「通院が面倒だから」「送迎が大変だから」という理由だけでは要件を満たしません。判断するのは医師であり、実際に受けられるかどうかは診察を経て決まります。
「往診を頼めば入院しなくて済む」——在宅医療は入院と切り離されていません。
在宅療養支援診療所の施設基準には、緊急時に入院できる病床を常に確保し、受入医療機関を届け出ておくことが含まれています。制度は、在宅医療を入院の代わりではなく、入院とつながった体制として設計しています。在宅で診るか入院するかは、そのときの状態で選び直せるものです。
「呼べば来てくれるのだから、費用は診察代だけ」——交通費は実費で患家の負担です。
点数表に明記されています。金額は距離や手段で変わるので、初回の相談のときに交通費の扱いを確認しておくと後で驚きません。
「急に具合が悪くなったら、まず往診を呼べばいい」——そうとは限りません。
点数表は緊急の往診として、往診の結果、急性心筋梗塞・脳血管障害・急性腹症等が予想される場合などを想定しています。ただしこれは費用の計算のための区分であって、救急車を呼ぶか往診を頼むかの判断基準ではありません。 意識がおかしい、息が苦しい、といった状況では、往診を待つより救急要請が適切な場合があります。迷ったときの相談先は夜間や休日に具合が悪くなったら、どこへ行けばいい?にまとめました。
「訪問診療を始めたら、かかりつけの診療所とは縁が切れる」——切れません。
訪問診療を担う医療機関と、それまでかかっていた医療機関は別でも構いません。制度上も、他の医療機関の求めを受けて訪問診療を行う枠(在宅患者訪問診療料の「2」)が用意されています。引き継ぎの要になるのは紹介状(診療情報提供書)です(紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?)。
結局、どう使えばいい?
言葉の使い分けで迷うより、次の4つを順に確認するほうが早く進みます。
- まず、「通院が困難かどうか」を医師に相談する。 訪問診療の入口はここです。判断するのは医師なので、いま通っている医療機関の外来で、通院の実際の大変さ(誰が付き添っているか、移動に何分かかるか、途中で休みが要るか)を具体的に伝えるところから始めます
- 訪問診療を頼む先には、24時間の体制を文書でもらえるかを聞く。 在宅療養支援診療所であれば、24時間連絡を受ける担当者の電話番号と、往診担当医の氏名・担当日を文書で渡すことが要件になっています。「もらえますか」と聞くだけで、その医療機関の体制がどこまで整っているかが分かります
- 費用は「1回」ではなく「1か月」で聞く。 訪問1回ごとの点数、月1回の管理料、交通費の実費——この3つを合わせた月額の見通しを聞くのが実際的です。要介護認定を受けている場合は、ケアマネジャーにも同じ質問をしてください
- 地域に選択肢が少ないことは、前提として織り込む。 在宅療養支援診療所も在宅療養支援病院もない市区町村が379自治体あります。近隣の市区町村まで含めて探す、病院の在宅部門も候補に入れる、といった広げ方が要る地域もあります
医療機関のウェブサイトで在宅医療の記載を読むときの見方は医療機関のホームページ、どこを見れば実態が分かる?に、引っ越しや退院で担当が変わるときの引き継ぎは引っ越したら、かかりつけはどう探す?にまとめています。
監修者からのひとこと
外来で「そろそろ往診をお願いしたいのですが」と言われたとき、私はいつも、その方が本当に言いたいのは「もう通うのがつらい」ということだな、と受け取っています。往診か訪問診療かという言葉の区別は、正直なところ、患者さんやご家族の側が最初から知っている必要はありません。
大事なのは、通院の何がどう大変なのかを具体的に話してもらうことです。「バスを乗り継いで1時間かかる」「途中のベンチで必ず休む」「娘が仕事を半日休まないと連れて来られない」——そういう話が出てはじめて、こちらも在宅に切り替える相談ができます。逆に、それを言わずにご本人が我慢しておられて、あるとき急に来なくなる、というのがいちばんつらい別れ方です。
もうひとつ申し上げたいのは、在宅医療は「もう治療しない」ということではないということです。定期の訪問で状態を見ながら、必要なら入院してまた戻ってくる。その行き来ができるのが在宅医療の強みで、制度もそう作られています。
通うのがつらくなったら、その時点で言ってください。 早すぎるということはありません。
よくある質問
Q. 往診と訪問診療は、制度上どう違うのですか。
A. 往診は、患者または家族等が医療機関に電話等で直接往診を求め、医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに患家に赴いて診療を行うものです。診療報酬の通知は、定期的ないし計画的に患家に赴いて診療を行った場合には往診料を算定できないと明記しています。一方の訪問診療は、在宅で療養していて通院による療養が困難な方について、患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行うものです。「定期的・計画的かどうか」が2つを分ける軸です。
Q. 訪問診療を受けている途中で急に具合が悪くなったときは、どちらになりますか。
A. 往診になります。通知は、定期的・計画的な訪問診療を行っている期間における緊急の場合の往診については、在宅患者訪問診療料は算定せず、往診料および再診料または外来診療料を算定すると定めています。在宅患者の診療・指導の通則でも、訪問診療等を行った後に患者の病状の急変等により往診を行った場合の往診料は、同日に他の項目を算定できないという原則の例外とされています。
Q. 訪問診療は、どのくらいの状態から受けられるのですか。
A. 要件は「在宅で療養を行っている患者であって、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者」です。通知は、継続的な診療の必要のない者や通院が可能な者に安易に算定してはならないとしたうえで、目安として「少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、通院は容易であると考えられる」と示しています。寝たきりであることが条件ではありませんが、判断するのは医師です。
Q. 訪問診療は、何回まで受けられますか。
A. 在宅患者訪問診療料の「1」は原則として週3回が限度です。ただし、末期の悪性腫瘍や筋萎縮性側索硬化症など国が定める疾病等の患者についてはこの限りではありません。また、急性増悪や終末期等により一時的に週4回以上の頻回な訪問診療が必要と認められた場合には、月1回に限り、その日から14日以内について14日を限度として算定できるとされています。
Q. どんな医療機関でも24時間往診してもらえるのですか。
A. いいえ。24時間往診できる体制は、在宅療養支援診療所などが施設基準として確保しているものです。厚生労働省の調査では、在宅療養支援診療所・病院の届出を行わない理由として、診療所の84.0%が「24時間連絡を受ける体制の確保」または「24時間の往診体制」を満たすことが難しい基準として挙げています。在宅療養支援診療所の要件では、24時間連絡を受ける担当者の連絡先と往診担当医の氏名・担当日等を、あらかじめ文書で患家に提供することになっているので、これを受け取れるかどうかが確認の手がかりになります。
Q. 交通費はかかりますか。
A. かかります。点数表は「往診に要した交通費は、患家の負担とする」と定めており、通知はこれを実費とし、自家用車による費用を含むとしています。訪問診療の交通費も同じ扱いです。ただし自転車・スクーター等の費用は往診料に含まれており、患家の負担となる交通費には該当しません。
Q. 在宅医療を受けている人が急変したら、入院はできないのですか。
A. できます。在宅療養支援診療所の施設基準には、有床診療所は自院において、無床診療所は他の保険医療機関との連携により、緊急時に居宅で療養している患者が入院できる病床を常に確保し、受入医療機関の名称等をあらかじめ地方厚生局長に届け出ていることが含まれています。制度は在宅医療を入院と切り離さず、つながった体制として設計しています。
Q. 介護保険の「居宅療養管理指導」とは違うのですか。
A. 別の制度です。訪問診療は医療保険の在宅患者訪問診療料として算定されます。居宅療養管理指導は介護保険のサービスで、介護保険法第8条第6項は「居宅要介護者について、病院、診療所又は薬局の医師、歯科医師、薬剤師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の管理及び指導」と定めています。在宅医療は2つの保険にまたがるため、費用の見通しは医療機関とケアマネジャーの双方に確認するのが確実です。
Q. いま通っている診療所とは別の医療機関に訪問診療を頼めますか。
A. 頼めます。在宅患者訪問診療料には、在宅時医学総合管理料等の算定要件を満たす他の保険医療機関の求めに応じ、紹介された患者に対して訪問診療を行う枠(「2」)が設けられています。引き継ぎには紹介状(診療情報提供書)が使われます。どの組み合わせが可能かは地域の体制によって変わるので、まずは現在かかっている医療機関に相談してください。
出典・参考文献
(いずれも2026年9月17日に内容を確認しました。診療報酬の記載は令和8年度診療報酬改定・令和8年4月1日施行の内容です。)
- 厚生労働省「別表第一 医科診療報酬点数表」(令和8年度診療報酬改定・令和8年厚生労働省告示第69号)(C000往診料720点/注1の緊急往診加算・夜間休日往診加算・深夜往診加算の区分と点数/注7「往診に要した交通費は、患家の負担とする」/C001在宅患者訪問診療料(Ⅰ)890点・215点/注1の「患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合」「週3回に限り」/注2の他の保険医療機関の求めに応じて行う訪問診療/注4の一時的な頻回訪問)
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1 医科診療報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日保医発0305第6号)(第2部在宅医療の通則4〈在宅療養支援診療所の位置づけ〉/C000往診料(1)〈電話等で直接往診を求め…定期的ないし計画的に患家に赴いて診療を行った場合には算定できない〉・(4)〈緊急に行う往診〉・(6)〈夜間・深夜の時間帯と標榜時間に含まれる場合の取扱い〉・(7)〈休日の範囲〉・(20)〜(23)〈交通費は実費・自家用車を含む・自転車等は往診料に含まれる・診察せず帰った場合〉・(27)〈定期的または計画的な対診では算定できない〉/C001在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(1)〈通院による療養が困難な者・独歩で通院できる者の例示〉・(9)〈週3回の限度〉・(10)〈一時的な頻回訪問〉・(11)〈訪問診療期間中の緊急の往診は往診料で算定〉・(12)〈署名付同意書・診療録への記載事項〉・(22)〈交通費は実費〉/C002在宅時医学総合管理料(1)(2)(4)〈総合的な在宅療養計画・月1回・単一建物診療患者の人数〉)
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第8号)(第9 在宅療養支援診療所の施設基準/24時間連絡を受ける体制と文書での提供/患家の求めに応じて24時間往診が可能な体制と往診担当医の氏名・担当日の文書提供/24時間訪問看護の提供体制/緊急時に入院できる病床の確保と届出/意思決定支援に関する指針の作成/機能強化型単独型の常勤医師3名以上・緊急の往診の実績10件以上・在宅における看取りの実績4件以上)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知の一覧/令和8年4月1日施行)
- 厚生労働省「在宅医療の提供体制の整備に関する検討等について」(第3回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ・令和7年11月19日)(在宅療養支援診療所14,725施設のうち有床診療所1,330施設〈9%〉・令和6年3月31日時点/在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院がどちらもない市区町村379自治体/届出を行わない理由と「満たすことが難しい基準」で診療所の84.0%が24時間連絡体制または24時間往診体制と回答/届出施設数は在宅療養支援診療所が横ばい・在宅療養支援病院は増加傾向)
- 医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2(e-Gov法令検索)(第2項「医療提供施設」と「医療を受ける者の居宅等」において医療が提供されなければならないこと)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条(e-Gov法令検索)(第6項 居宅療養管理指導の定義)
- 厚生労働省「医療情報ネット(ナビイ)」(在宅医療への対応状況などから全国の医療機関を検索できる)
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)(在宅療養支援診療所の施設基準および在宅ターミナルケア加算で参照が求められている指針)
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