本記事の事例は、2026年9月16日までに厚生労働省が示した資料をもとに、編集部が作成した仮想のケースである。実在の患者・医療機関ではない。判断の根拠は各ケースに示したが、全国共通のQ&Aや通知はまだ出ていない。施行までに出る通知で扱いが変わる可能性がある点に注意してほしい。制度の全体像はOTC類似薬の「別途の負担」は令和9年3月からで整理している。
診療所では誰が何を判断するのか?
別途の負担の対象か対象外かを最終的に確認するのは医師で、処方箋の「一部保険外療養」欄に、対象なら「○」、対象外なら「ー」を記載する。受付・事務は、受給者証や生活保護などの確認書類を集めて医師に渡す役になる。がん・指定難病・長期使用のような医学的な確認は、電子カルテが自動で判定するのではなく、システムが示す情報をもとに医師が確かめる(出典:厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1、令和8年9月16日)。
技術的検討会の中間とりまとめは、レセプトなどに「どのような判断で別途の負担の対象外となったか」の記載を求めるとしている(出典:OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」令和8年8月6日)。「ー」を付けたら、理由をカルテに残す運用が前提になる。
ケース1:同じ抗アレルギー薬でも「○」と「ー」が分かれるのはどんなときか?
状況:30代の会社員。春にアレルギー性鼻炎でフェキソフェナジン塩酸塩を30日分処方する。別の日に、蕁麻疹で同じ薬を処方することになった。
判断:アレルギー性鼻炎への処方は、OTC医薬品の効能(鼻のアレルギー症状の緩和)と対応するため別途の負担の対象(○)。蕁麻疹や湿疹・皮膚炎などに伴うそう痒はOTC医薬品にない効能なので対象外(ー)になる(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.9)。
実務の要点:判断は薬の名前ではなく、何の傷病に使うかで決まる。傷病名の付け方がそのまま判断の根拠になるため、国が公表する「効能・効果が対応しない傷病名の一覧」と自院の傷病名マスタを突き合わせておきたい。なお、花粉症やアレルギー性鼻炎を慢性疾患として扱うべきだという意見に対して、国は短期の使用は対象、年間を通じた使用を医師が確認した場合は対象外と整理している(出典:中医協 総-2「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(その2)」令和8年9月9日。同資料に再掲された第214回医療保険部会 資料2のパブリックコメント整理)。
ケース2:がんの患者なら、どの処方も「ー」になるのか?
状況:外来で抗がん剤治療中の60代。副作用の便秘に酸化マグネシウムを処方する。同じ患者が花粉症の薬も希望した。
判断:抗がん剤の副作用への支持療法は「がんやその治療に関連して生じた状態」に当たり対象外(ー)。一方、花粉症、水虫、一般的な風邪や腰痛など、がん治療と関連の薄い症状への処方は対象(○)になる。
注意点:「がん治療中」とは、診断歴があるだけではなく、現に治療を伴う診療を継続して受けているか、治療開始に向けた計画の下で管理されている状態を指す。胃がんの術後で画像検査による経過観察だけを受けている場合や、がんの疑いで精査中の場合は「がん治療中」に当たらない(出典:前掲 中間とりまとめ p.5〜6)。治療終了後も長期の薬物療法が要る場合は、ケース3の長期使用として判断する。脳腫瘍・白血病・悪性リンパ腫など、診断名に「がん」とない悪性腫瘍も「がん」に含まれる(出典:前掲 中医協 総-2 p.12)。
ケース3:長く飲んでいる薬の患者は、何を確認すれば「ー」にできるのか?
状況:寝たきりで活動量が落ちた80代の慢性便秘。酸化マグネシウムを28日分ずつ、ほぼ毎月処方している。
判断:内服薬は年間処方日数がおおむね50週(1年)が長期使用の目安で、中間とりまとめは「28日処方を概ね月1回」の酸化マグネシウムをその例に挙げている。対象外(ー)にできる(出典:前掲 中間とりまとめ p.9)。
転医してきた場合:処方歴は、診療情報提供書、薬剤情報、お薬手帳、オンライン資格確認の薬剤情報などで確認する(同 p.9)。9月16日の医療保険部会資料では、50週分の実績を一律には求めず、少なくとも6か月程度の使用実績を確認したうえで、年間を通じた使用が必要だと医師が医学的に判断すれば対象外にできると明確化された(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.4)。確認できる資料が無い初診の患者は、原則として対象から始まる。
対象のままになる例:月経困難症で毎月数日だけ鎮痛薬を使う場合は、年間を通じた使用には当たらず対象(○)と整理されている。抗真菌外用薬も、通年ではなく一定期間の治療が中心として対象である(出典:前掲 中医協 総-2 p.13)。
ケース4:処置や手術のあとに出す痛み止めはどう扱うか?
状況:外来で創傷処理をした当日に、ロキソプロフェンを処方する。
判断:検査(生検・穿刺など侵襲を伴うもの)、処置、手術に伴う疼痛管理などの急性期管理を目的に、処置と同じ日に新たに出す処方は、14日分まで対象外(ー)。処置の前から同じ・類似の薬が出ていた場合や、症状が処置の前からあった場合は含まない(出典:前掲 中間とりまとめ p.8)。
注意点:中間とりまとめは、NDBで創傷処理と同日のロキソプロフェン処方量を調べ、42錠(14日分相当)以内が89.3%だったことを14日の根拠にしている。治癒が遅れても医師判断で延長する例外は設けない方針で、リハビリの経過観察中の処方も対象とされた(出典:前掲 中医協 総-2 p.12)。胃内視鏡検査で使う炭酸水素ナトリウムのように、検査・処置の最中に使うものは対象外である(同 p.11)。
ケース5:アトピー性皮膚炎の外用薬はどうなったか?
状況:アトピー性皮膚炎の20代。保湿剤を通年で使い、寛解維持のためステロイド外用薬を週2回塗るプロアクティブ療法を続けている。急に悪化したときは、別のステロイド外用薬を短期間処方する。
判断:アトピー性皮膚炎への皮膚保湿剤と、プロアクティブ療法として通年で定期的に使うステロイド外用薬は対象外(ー)。急性増悪時の短期の使用は対象(○)になる。
経緯:ステロイド外用薬は、中間とりまとめでは対象とされていた。9月16日の医療保険部会資料で、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」の位置付けを踏まえて、プロアクティブ療法などの通年使用は対象外に改められた(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.5)。古い解説記事では対象のままになっていることがあるので注意したい。アトピー性皮膚炎以外への保湿剤と、重度の変形性膝関節症(KL分類Grade4が画像検査などで客観的に確認される場合)への湿布は、令和10年度末までの経過措置で対象外である(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.9、KL分類の条件は前掲 中医協 総-2 p.13)。
ケース6:受付では何を確認すればよいか?
受付で確認できるかどうかで判断が分かれるものは、次の4つである。
- 指定難病:原則は特定医療費(指定難病)受給者証か登録者証。令和9年度末までは、指定難病患者であることを客観的に確認できる書類での代替も認められる。難病と関係のない風邪などへの処方は対象(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.6)
- 公費負担医療:対象外になるのは「国の」公費負担医療を受けて使う場合。中間とりまとめは、地方自治体が単独で行う医療費助成を配慮の対象にすることには実務上の課題があるとしている(出典:前掲 中間とりまとめ p.7 脚注)
- 低所得者:対象外になるのは生活保護受給者が医療扶助を受ける場合で、それ以外の低所得者は対象と整理された(出典:前掲 中医協 総-2 p.12)
- 妊婦・授乳婦:OTC医薬品の添付文書に「服用しないこと」とあり、医療用医薬品の添付文書にも注意喚起がある薬が対象外になる。確認は問診票の本人申告のほか、必要に応じて母子健康手帳や診療録で医師が行う(出典:前掲 中間とりまとめ p.14 脚注)
18歳に達する日以後最初の3月31日までのこどもと、入院中(退院時処方を含む)の使用は、書類がなくても年齢や入院の事実で判断できる。
ケースの判断を一覧で見ると?
| ケース | 処方箋 | 判断のよりどころ |
|---|---|---|
| アレルギー性鼻炎にフェキソフェナジン | ○ | OTC医薬品の効能と対応 |
| 蕁麻疹にフェキソフェナジン | ー | OTC医薬品にない効能 |
| 抗がん剤の副作用の便秘に酸化マグネシウム | ー | がん治療に関連して生じた状態 |
| がん治療中の患者の花粉症 | ○ | がん治療と関連が薄い |
| 寝たきりの慢性便秘に毎月28日分 | ー | 年間処方日数おおむね50週 |
| 月経困難症で毎月数日の鎮痛薬 | ○ | 年間を通じた使用に当たらない |
| 創傷処理当日の鎮痛薬 | ー(14日分まで) | 処置の一環の処方 |
| アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法 | ー | 9月16日に対象外へ変更 |
| アトピー性皮膚炎の急性増悪時の短期使用 | ○ | 短期の使用 |
まだ判断に迷う点は何か?
次の点は、9月16日時点の資料からは確定できない。院内の手順に落とす前に、今後出る通知・Q&Aで確認してほしい。
- 処置後の処方が14日分を超えた場合に、超えた分だけが対象になるのか、処方全体が対象になるのか
- レセプトに書く「対象外とした理由」の具体的な記載方法(国が標準例を公表するとされている段階)
- 指定難病の代替確認で認められる「一定の書類」の範囲
- 別途の負担にかかる消費税の取扱い(政府内で検討中)
よくある質問
処方箋の「一部保険外療養」欄は、対象医薬品でなければ何も書かなくてよいか?
資料で「○」か「ー」の記載が求められているのは、対象医薬品を処方する場合である。当面は変更前の処方箋様式も使える経過措置がある(出典:中医協 総-2-2「一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて(補足資料)」令和8年9月16日)。
がんの疑いで検査中の患者は対象外になるか?
ならない。「がん疑い」は明確な基準を設けにくく、医師ごとに判断が分かれるおそれがあるため、対象と整理された。
在宅医療の患者は入院と同じ扱いになるか?
ならない。入院患者は医師の管理下で集中的・継続的な治療を受けている点で、在宅患者や施設入所者とは環境が異なると整理されている。
参考資料
- 厚生労働省保険局 / OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1) / 令和8年9月16日 / https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001750154.pdf / 確認日:2026年9月28日
- OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会 / OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ / 令和8年8月6日 / https://www.mhlw.go.jp/content/12403550/001734914.pdf / 確認日:2026年9月28日
- 中央社会保険医療協議会 / 総-2 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(その2) / 令和8年9月9日 / https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001747613.pdf / 確認日:2026年9月28日
- 中央社会保険医療協議会 / 総-2-2 一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて(補足資料) / 令和8年9月16日 / https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001750142.pdf / 確認日:2026年9月28日
※本文中の事例はいずれも架空である。パブリックコメントへの整理(中医協 総-2 p.11〜13)は第214回社会保障審議会医療保険部会 資料2(令和8年9月3日)の再掲であり、本記事は中医協資料の記載を典拠としている。中間とりまとめの内容のうち、9月16日の医療保険部会資料で改められた点(ステロイド外用薬、長期使用の確認期間)は後者に従った。





