OTC類似薬の「一部保険外療養」はいつから、何が変わるのか?

令和9(2027)年3月から、OTC医薬品と成分・投与経路が同じで一日最大用量も変わらない医療用医薬品(77成分・1,042品目)を処方・調剤すると、薬剤費の4分の1を患者が保険外の「別途の負担」として支払う仕組みが始まる。保険給付から外すのではなく、残りは保険外併用療養費として保険給付される。2026年9月16日に、社会保障審議会医療保険部会で実施に向けたとりまとめ(案)が、中央社会保険医療協議会(中医協)で療養担当規則等の改正案の答申がそれぞれ示され、現場の運用の骨格がほぼ固まった。

根拠は、令和8年6月に公布された健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)で創設された「一部保険外療養」である(出典:厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1、令和8年9月16日)。中医協の資料では、施行日は令和9年3月1日(予定)とされている(出典:中医協 総-2-1「個別改定項目について(一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて)」令和8年9月16日)。対象は抗アレルギー薬、鎮痛消炎剤、胃腸薬、去痰薬、皮膚保湿剤などである。

9月16日までにどこまで決まったのか?

別途の負担の対象・対象外の考え方は、8月6日に技術的検討会が公表した「中間とりまとめ」を基本とし、医療保険部会が4点を上乗せした。長期使用の基準、ステロイド外用薬のプロアクティブ療法、指定難病患者の確認方法、国による情報提供の4点である。

医学・薬学の有識者による「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」は6月以降4回開かれた。医療保険部会はその後、全国がん患者団体連合会など4団体の代表を専門委員に加え、中間とりまとめへのパブリックコメント897件も精査したうえで、9月16日にとりまとめ(案)を示した(出典:前掲 医療保険部会資料1)。同じ日、中医協は療養担当規則等の改正案を答申している(出典:中央社会保険医療協議会「答申書(一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて)」令和8年9月16日)。

別途の負担がかからないのはどんな場合か?

大きく分けて2通りある。OTC医薬品にない効能・効果で処方する場合と、配慮が必要な患者・療養に当たる場合である。医療保険部会資料1は後者を次の8つに整理している。

  • 18歳に達する日以後最初の3月31日までのこども
  • 生活保護受給者が医療扶助を受ける場合
  • がん、またはがんに関連する治療(関連のない症状は負担対象)
  • 指定難病、または指定難病に関連する治療(関連のない症状は負担対象)
  • 国の公費負担医療での使用(公費負担医療でない場合は負担対象)
  • 入院中(退院時処方を含む)の使用
  • 処置・手術・検査に伴う14日分までの使用
  • 年間を通じた長期使用などが医療上必要な場合

このほか、OTC医薬品の添付文書で「服用しないこと」とされている妊婦・妊娠している可能性がある女性・授乳婦に処方する場合も対象外とされた(例:イトプリド)。効能・効果の例では、フェキソフェナジン塩酸塩を蕁麻疹や皮膚疾患に伴うそう痒に処方する場合は、OTC医薬品にない効能のため対象外になる。OTC医薬品の効能は鼻のアレルギー症状の緩和に限られるためである(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.9)。

「長期使用」はどう判断するのか?

内服薬は、年間処方日数がおおむね50週(1年)を超える場合が対象外の目安である。ただし50週分の処方実績を一律に求めるのではなく、少なくとも6か月程度の使用実績があり、その後も年間を通じた使用が必要だと医師が医学的に判断すれば、50週に届く前でも対象外にできると明確化された。

これは、処方日数だけで判断せず治療歴や医師の管理下にあることを総合的に見るべきだという患者団体側の意見を受けたものである。初診か再診か、転医してきたかは問わず、確認期間は少なくとも6か月程度とされた。外用薬は、長期使用にエビデンスがあるもの(アトピー性皮膚炎への皮膚保湿剤、プロアクティブ療法としてのステロイド外用薬など)を除いて負担対象になる。中間とりまとめではステロイド外用薬は負担対象とされていたが、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」の位置付けを踏まえ、通年で定期的に使う場合は対象外へ改められた(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.4〜5)。

経過措置もある。重度の変形性膝関節症への湿布と、アトピー性皮膚炎以外への皮膚保湿剤は、重症患者の長期使用の実態を踏まえ、令和10年度末まで別途の負担の対象外とされた。診療ガイドラインのエビデンスの状況などを踏まえて見直すとされている。

指定難病の患者であることは何で確認するのか?

原則は、特定医療費(指定難病)受給者証か登録者証である。登録者証は交付に時間がかかるため、令和9年度末までは、指定難病患者であることを客観的に確認できる一定の書類での代替確認も認められる。令和10年度以降は受給者証または登録者証による確認だけになる。

確認書類は患者が提示する客観性のあるものに限られ、医療機関が指定難病に当たるかを医学的に確認したり、過度な事務負担を負ったりしない扱いとされた。18歳から20歳未満で小児慢性特定疾病の医療費助成を受けている人も、受給者証または登録者証での確認が基本になる(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.6)。

処方箋とレセプトの実務はどう変わるのか?

処方箋に「一部保険外療養」欄が新設される。対象医薬品を処方する場合、別途の負担の対象なら「○」、対象外なら「ー」を記載する。当面は変更前の様式も使える経過措置が設けられる。

長期収載品でもあるOTC類似薬を処方する場合、OTC類似薬として別途の負担の対象(○)になるなら、長期収載品の選定療養は対象外になる。療養担当規則は、患者から支払を受けられる費用に一部保険外療養の費用を加え、支払を受ける際は厚生労働大臣の定める基準に従うよう改められる。一方、院内掲示とウェブサイト掲示の義務は課されない。選定療養と違い、すべての保険医療機関・保険薬局で一律の内容・費用になるためである(出典:中医協 総-2-2「一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて(補足資料)」令和8年9月16日)。

電子カルテとレセコンについては、国が対象医薬品の薬剤コード、効能・効果が対応しない傷病名の一覧、別途の負担を求めない場合のレセプト記載の標準例を公表し、ベンダーの改修につなげる。紙カルテの医療機関向けには、対象成分の一覧表と簡易なチェックシートが作られる。ただし、がん・指定難病・長期使用など医学的な確認が要るものはシステムが自動判定するのではなく、システムが示す情報をもとに医師が最終確認する(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.7)。

患者の負担はいくら増えるのか?

国の試算では、3割負担の患者の薬剤部分の負担は、便秘薬30日分で360円から550円、抗アレルギー薬30日分で540円から790円になる。初診料や調剤基本料などの技術料は別にかかる。

別途の負担を含む患者負担のイメージ(3割負担・薬剤部分のみ)
薬剤(日数) 見直し前 見直し後 (参考)OTC医薬品
解熱鎮痛薬(5日分) 50円 70円 約500円
去痰薬(5日分) 50円 70円 約1,500円
便秘薬(30日分) 360円 550円 約2,000円
抗アレルギー薬(30日分) 540円 790円 約1,000円

(出典:前掲 医療保険部会資料1 p.9)。原典の注記によれば、薬価は同じ成分で最も使われている品目のものを使い、OTC医薬品は確認できた範囲でのネット上の最安額である。技術料は含まない。

計算方法について、中医協の補足資料は、薬価16.50円の内服薬を1日2錠・30日分処方する例を示している。この場合、別途の負担は4.13円×2錠×30日=247.8円で約250円になる。保険対象の費用は600円で、うち3割の180円が患者負担、420円が保険外併用療養費になり、患者の負担総額は430円となる。別途の負担は1の位を四捨五入する。別途の負担に対する消費税の取扱いは「政府内で検討中」とされ、まだ決まっていない(出典:前掲 総-2-2 p.3)。

まだ決まっていないことは何か?

運用の骨格は固まったが、細部は今後の告示・通知で示される。中医協資料も、別途の負担の計算方法、対象医薬品の考え方、対象外とする人の範囲などは「他の告示、通知等により定める」としている。

  • 別途の負担に対する消費税の取扱い(政府内で検討中)
  • 全国共通のQ&A、処方箋・レセプトの記載方法、患者説明資料(厚生労働省が整備するとされた段階)
  • 医師の判断のばらつきを抑える「標準的な考え方」の中身
  • 施行後の受療行動や処方シフトの検証と、それに基づく見直し

なお、9月16日の医療保険部会の資料は「とりまとめ(案)」であり、本記事の執筆時点で同回の議事録は公開されていない。

医療機関と薬局は施行までに何を準備すべきか?

施行まで約5か月である。外来で対象成分をよく処方する診療所ほど影響が大きい。確定した内容から逆算すると、準備は次の順になる。

  1. 自院・自薬局の処方実績から対象成分を洗い出す。国が公表する対象医薬品一覧と、自院の処方上位を突き合わせる
  2. 長期処方患者のリストを作る。6か月程度の使用実績と通年使用の医学的必要性を、カルテにどう残すかを院内で決めておく
  3. 受付で確認する書類を決める。指定難病の受給者証・登録者証、公費負担医療の受給者証、生活保護の確認方法を窓口の手順に入れる
  4. 電子カルテ・レセコンベンダーに改修予定を確認する。処方箋の「一部保険外療養」欄の出力と、別途の負担の計算・領収の対応時期を聞いておく
  5. 患者説明を用意する。国の説明資料が出るまでの間も、よく聞かれる質問(なぜ負担が増えるか、対象外になる条件)を職員で共有しておく

薬局側は、処方箋の「○」「ー」に従って別途の負担を受け取る立場になる。2027年5月に施行される一般用医薬品の遠隔管理による受渡しについては一般用医薬品の「受渡し」が2027年5月20日に施行で整理している。

よくある質問

OTC類似薬は保険適用から外れるのか?

外れない。保険給付の対象のまま、薬剤費の4分の1だけを保険外の「別途の負担」として患者が支払う仕組みである。残りは保険外併用療養費として給付される。

対象になる薬はいくつあるのか?

OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品77成分・1,042品目とされている。同一性はメーカー単位ではなく成分単位で判断する。

医療機関は別途の負担について院内掲示をしなければならないか?

義務は課されない。選定療養とは違い、全国一律の内容・費用で行われるためである。

長期収載品の選定療養とはどちらが優先されるのか?

長期収載品でもあるOTC類似薬が別途の負担の対象になる場合、長期収載品の選定療養は対象外になる。あわせて令和9年3月から、長期収載品の選定療養の特別の料金は「先発薬と後発薬の差額の2分の1×投薬全量」で計算する方法に改められる。

参考資料

  • 厚生労働省保険局 / OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1) / 令和8年9月16日 / https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001750154.pdf / 確認日:2026年9月25日
  • 中央社会保険医療協議会 / 総-2-1 個別改定項目について(一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて) / 令和8年9月16日 / https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001750141.pdf / 確認日:2026年9月25日
  • 中央社会保険医療協議会 / 総-2-2 一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて(補足資料) / 令和8年9月16日 / https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001750142.pdf / 確認日:2026年9月25日
  • 中央社会保険医療協議会 / 総-3 答申書(一部保険外療養の創設に伴う療養担当規則等の所要の見直しについて) / 令和8年9月16日 / https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001750270.pdf / 確認日:2026年9月25日

※技術的検討会の「中間とりまとめ」(令和8年8月6日)の内容とパブリックコメントの件数は、医療保険部会資料1の記載を典拠としており、中間とりまとめ本体は参照していない。

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