厚生労働省は2026年6月30日、改正薬機法の「2年目施行」にあたる整備省令を公布した。この省令で新しく形が見えたのが、薬剤師等が遠隔で管理し、薬局以外の店舗で一般用医薬品を引き渡す「受渡し」の仕組みである。施行は2027年5月20日(出典:厚生労働省医薬局長「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について」令和8年6月30日医薬発0630第1号)。
報道では「薬剤師がいない店舗でも市販薬が買えるようになる」と要約されがちだが、省令を読むと実態は逆に近い。販売の主体はあくまで委託元の薬局・店舗であり、薬局側には管理者の選任、2種類の手順書、監査、記録保存といった義務がまとめて増える。本稿では、公布された省令通知と改正法の要綱から、薬局・薬剤師の実務が具体的に何を要求されるのかを整理する。
2027年5月20日に施行されるのは、どの部分か?
結論から言えば、2027年5月20日に施行されるのは令和8年厚生労働省令第110号(整備省令)で手当てされた範囲である。整備省令が扱うのは、健康増進支援薬局の認定制度の創設、調剤の一部外部委託、より合理的な適合性調査体制の構築、薬剤師等の遠隔管理による受渡し、責任役員の変更命令等の5分野で、受渡しはこのうちの1本にあたる(出典:令和8年6月30日医薬発0630第1号「第1 改正の趣旨」)。
施行期日は先行して定められている。施行期日を定める政令(令和8年政令第209号)が2026年6月24日に公布され、その6日後に整備省令が公布された(出典:厚生労働省医薬局長ほか「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令の公布について」令和8年6月24日医薬発0624第1号・産情発0624第5号)。根拠となる法律は令和7年法律第37号で、受渡しに関する規定は「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」から施行するグループに置かれている(出典:厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律要綱」第六・一)。
同じ2027年5月20日には、健康増進支援薬局の新設と地域連携薬局の認定基準改正も施行される。受渡しの準備と認定薬局の基準対応が同じ日に重なる点は、薬局の人員計画を考えるうえで先に押さえておきたい。
「受渡し」と「登録受渡店舗」は、法律上どう定義されたのか?
受渡しとは、薬局開設者または店舗販売業者が一般用医薬品を販売・授与する場合に、委託を受けた者が、購入しようとする者に対して、当該薬局開設者等に代わって医薬品の引渡しを行うことをいう。薬局開設者・店舗販売業者以外の者が業として店舗で受渡しを行おうとするときは、その店舗について店舗所在地の都道府県知事の登録を受けなければならない(改正後薬機法第29条の5第1項。出典:同要綱 第一・四・6)。登録を受けた者が「登録受渡業者」、登録された店舗が「登録受渡店舗」である。
ここで押さえるべき点が3つある。第一に、対象は一般用医薬品に限られる。処方箋医薬品を含む薬局医薬品や要指導医薬品は受渡しの対象になっていない。第二に、販売・授与の主体は委託元の薬局・店舗のままで、登録受渡店舗が行うのは「引渡し」である。第三に、第一類医薬品も受渡しの対象になりうる。省令は受渡管理者の要件を「受渡委託により第一類医薬品を販売し、又は授与する薬局又は店舗」と「第二類医薬品又は第三類医薬品を販売し、又は授与する薬局又は店舗」に分けて定めており、第一類を除外していない。
距離の縛りもある。登録受渡店舗は、受渡委託をする薬局または店舗と同一の都道府県の区域内に所在しなければならない(薬機法施行規則第147条の14)。薬局側にも、登録受渡店舗が同一都道府県内にない場合は契約を締結してはならないという遵守事項が置かれた(同第15条の11の15第7項)。調剤の一部外部委託で受託薬局に課された「同一都道府県内」という要件と同じ考え方が、受渡しにも持ち込まれている。
新設された3つの役割は、それぞれ誰が担い、何を負うのか?
受渡しの仕組みでは、薬局側に受渡管理者、登録受渡業者側に登録受渡店舗責任者が置かれる。登録受渡業者自身の遵守事項も別に定められており、合わせて3つの主体が責任を分担する構造になっている。
| 役割 | 置く主体 | 主な要件 | 主な業務・義務 |
|---|---|---|---|
| 受渡管理者 | 受渡委託をする薬局開設者・店舗販売業者 | 第一類を扱う場合は薬剤師が原則(例外時は過去5年で通算3年以上の経験がある登録販売者+補佐する薬剤師)。第二類・第三類は薬剤師または一定の実務経験を満たす登録販売者 | 受渡しの管理の統括、登録受渡店舗責任者への指示、帳簿への記載、報告・記録の保存と薬局開設者への文書報告 |
| 登録受渡店舗責任者 | 登録受渡業者 | 拘禁刑以上の刑の執行終了等から3年、薬事関係法令違反から2年を経過しない者などを除く。登録を受けたとみなされた薬局・店舗ではその管理者が担う | 受渡業務手順書に基づく業務の実施状況の報告、従業者の監督、構造設備と医薬品の管理、サイバーセキュリティ確保の措置 |
| 登録受渡業者 | ―(登録を受けた事業者本人) | 店舗ごとに都道府県知事の登録。委託元と同一都道府県内に所在すること | 帳簿の備付けと3年保存、勤務時間の記録、委託元の求めに応じた帳簿の閲覧・写しの提出、営業時間外の施錠、無断広告の禁止 |
実務上の分岐点は受渡管理者を薬剤師で置けるかである。第一類医薬品を扱う場合、薬剤師を受渡管理者にできないときは一定の登録販売者を充てられるが、その場合は受渡管理者を補佐する薬剤師を別に置かなければならない(同第147条の23)。補佐する薬剤師は必要な意見を書面で述べる義務を負い、薬局開設者・管理者・受渡管理者はその意見を尊重し、措置を講じたときは記録して保存することとされている。「薬剤師を1人減らせる仕組み」ではなく、薬剤師の関与のしかたを書面で残す仕組みと読むのが正確である。
薬局側に増える手順書・記録・監査の実務は、どれくらいか?
受渡委託を始める薬局は、2種類の手順書を作らなければならない。ひとつは薬局側の業務を定める受渡委託販売等業務手順書(同第15条の11の17)、もうひとつは登録受渡店舗側の業務を定める受渡業務手順書(同第15条の11の18)である。いずれも薬局と登録受渡店舗の両方に備え付ける必要がある。手順書には、逸脱が生じた場合や保健衛生上の危害防止のために必要な場合の指示・報告の手順まで書き込むことが求められている。
記録の保存期間は書類ごとに異なる。登録受渡店舗への貯蔵と受渡し指示に関する書面は記載の日から2年、登録受渡業者が備える帳簿は最終の記載の日から3年、受渡管理者が薬局の管理者に述べた意見の書面の写しと、登録受渡店舗責任者から述べられた意見の書面の写しはそれぞれ3年である。登録受渡業者に改善を指示した文書と、措置が講じられたことを確認した記録も3年保存となる。期間が2年・3年に分かれているため、保存年限を一律に運用すると不足が生じる。
監査の位置づけは見落としやすい。受渡委託では、薬局開設者は登録受渡業者が契約書と受渡業務手順書に従って業務を行っているかについて監査を「行わなければならない」(同第15条の11の15第6項)。一方、調剤の一部外部委託では、委託薬局の開設者は受託薬局に対する監査を「行うことができる」(同第15条の11の4第4項)と規定されている。同じ日に施行される2つの外部委託で、監査が義務と任意に分かれている点は、規程づくりの段階で取り違えないようにしたい。
このほか、開店時間のうち受渡しを行わない時間は貯蔵設備・陳列設備に鍵をかけさせること、受渡管理者・従事する薬剤師や登録販売者・登録受渡店舗責任者らに研修その他必要な措置を講じること、登録受渡店舗が自ら販売していると誤認させる広告をさせてはならないことが、いずれも薬局開設者の遵守事項として定められている。2以上の登録受渡業者に委託する場合は、すべての業者について適正に管理できるかを確認したうえで契約する必要があり、その確認のために受渡管理者は薬局開設者に対して書面で意見を述べなければならない(同第15条の11の16)。
同時施行で見落とされやすい変更は何か?
受渡しの陰に隠れがちだが、薬剤師法の保存期間も同じ「2年以内施行」のグループに入っている。改正法は、調剤済みとなった処方箋を調剤済みとなった日から5年間、調剤録を最終の記入の日から5年間保存することとしている(薬剤師法第27条・第28条第3項。出典:同要綱 第四)。現行の3年から2年延びる変更で、書庫・電子保存の設計に直接効く。
営業時間の整理も変わる。開店時間からは、特定販売のみを行う時間に加えて、受渡委託による一般用医薬品の販売・授与のみを行う時間と、受渡しのみを行う時間が除かれる(薬機法施行規則第1条の2第2項第2号)。許可申請・変更届の記載事項としても、受渡しを行う時間と開店時間を分けて書くことが求められる。広告についても、開店時間と受渡しを行う時間が異なる場合はその両方を表示する事項が追加された。
なお、指定濫用防止医薬品の販売時確認は2026年5月施行分で、今回の受渡しとは別の枠である。受渡しの対象となる一般用医薬品にこれらが含まれる場合の取扱いは、今回の省令通知には書かれていない。
この時点で確定していないこと・確認できていないことは何か?
省令は公布されたが、運用の細目はまだ出そろっていない。今回の公布通知の範囲では、登録の手数料、登録証の具体的な様式の運用、Q&A(疑義解釈)は確認できない。1年以内施行分では公布通知の後にQ&Aや関係団体作成のガイドラインが順次示されており、受渡しについても同様の追加が想定されるが、時期についての記載は今回の通知にはない。
また、施行期日そのものについては、整備省令の公布通知が「令和9年5月20日より施行することとされた」と明記している記載を典拠としている。令和8年政令第209号の条文そのもの(別添)は本稿では参照していない。登録受渡業者となる事業者の想定や、実際にどの程度の店舗が登録に動くかを示す資料も、今回の通知には含まれていない。
よくある質問
登録受渡店舗には薬剤師や登録販売者を置く必要がありますか?
省令は登録受渡店舗に薬剤師・登録販売者を置くことを求めていません。置かれるのは登録受渡店舗責任者で、その要件は欠格事由に該当しないことと、実効的に店舗を管理できる知識・経験を有すると認められることです。薬剤師または一定の登録販売者が求められるのは、委託元の薬局・店舗に置く受渡管理者の側です。
県をまたいで受渡しを委託できますか?
できません。登録受渡店舗は委託元の薬局・店舗と同一の都道府県の区域内に所在することが登録の要件であり、薬局開設者側にも同一都道府県内にない場合は契約を締結してはならない旨の遵守事項が置かれています。委託元と登録受渡店舗の許可・登録を行う知事が異なる場合には、必要な情報を共有するものとする規定も設けられています。
受渡しを始めるとき、許可はどのような手続きになりますか?
新たに受渡委託をしようとする薬局開設者は、都道府県知事(保健所設置市等の区域内にある場合は市長・区長)に許可を申請します。申請事項と添付書類は薬局開設の許可申請時の受渡委託に係るものと同一で、契約書の写し、2種類の手順書の写し、受渡管理者の氏名・住所・週当たり勤務時間数を記載した書類、登録受渡店舗の登録証の写しなどが必要です。受渡委託を廃止・休止・再開したときは30日以内に届出を行います。
参考資料
- 厚生労働省医薬局長 / 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について(令和8年厚生労働省令第110号関係) / 令和8年6月30日 医薬発0630第1号 / https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001720341.pdf / 確認日:2026年9月21日
- 厚生労働省医薬局長・厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 / 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令の公布について(令和8年政令第209号関係) / 令和8年6月24日 医薬発0624第1号・産情発0624第5号 / https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001720339.pdf / 確認日:2026年9月21日
- 厚生労働省 / 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律要綱(令和7年法律第37号) / 令和7年 / https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001491537.pdf / 確認日:2026年9月21日
- 厚生労働省 / 令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について(概要資料・整備政令・整備省令・関係通知の一覧) / 掲載時点の最新版 / https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58083.html / 確認日:2026年9月21日
本記事の条番号は、令和8年6月30日付け医薬発0630第1号が示す整備省令の内容と、令和7年法律第37号の要綱の記載に基づく。整備省令および施行期日を定める政令の条文そのもの(各通知の別添)は参照していない。また、受渡しに関する疑義解釈(Q&A)や様式の運用については、本稿執筆時点で公表を確認できていない。
参考・一次出典
- 厚生労働省医薬局長「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について」令和8年6月30日医薬発0630第1号
- 厚生労働省医薬局長ほか「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令の公布について」令和8年6月24日医薬発0624第1号・産情発0624第5号
- 厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律要綱」(令和7年法律第37号)
- 厚生労働省「令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について」



