
2024年度(令和6年度)の特定健康診査の実施率は61.5%、受診者数は約3,161万人でした(厚生労働省「2024年度特定健診・特定保健指導の実施状況」。前年度の59.9%から1.6ポイント上昇)。健診はクリニックの外来と同じ日に重なることが多く、そこで繰り返し問題になるのが「健診の採血で保険診療の検査もした場合、どこまで算定できるのか」という論点です。2026年9月2日、厚生労働省保険局医療課が発出した疑義解釈資料(その12)の問10が、この取扱いを明示しました。
出発点は、健康診断が保険給付の対象外だということです。保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第20条は医師である保険医の診療の具体的方針を定めており、その第1号(診察)ハに「健康診断は、療養の給付の対象として行つてはならない」と明記されています。健診の費用は、受診者本人の自費、あるいは保険者や事業者の負担でまかなわれるもので、診療報酬として請求するものではありません。
問題は、同じ患者が同じ日に1回だけ来院し、1回の採血で健診の検査と保険診療の検査の両方を行う場面です。採血という手技は1回しか発生していないのに、その先の検査は健診分と保険分に分かれます。ここで切り分けを誤ると、本来は健診の費用に含まれるものを診療報酬として請求することになり、返戻や自主返還の対象になります。逆に、算定できる検査まで落としてしまえば取りこぼしです。
この論点は改定のたびに現場から質問が出る定番で、今回あらためて整理されました。
2026年(令和8年)9月2日付で、厚生労働省保険局医療課から地方厚生(支)局医療課等に宛てて事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その12)」が発出されました。令和8年度診療報酬改定は令和8年3月5日保医発0305第6号等により令和8年6月1日から実施されており、この疑義解釈はその取扱いを追加で明確化するものです。医科診療報酬点数表関係は14問が示され、そのうち問10が健診と検体検査の関係を扱っています。
問いは「同一日に1回の受診で、健診等と保険診療を実施した場合であって、健診等の一環として血液採取を行い、当該血液を用いて保険診療に係る検査を実施する場合は、検体検査料等について、どのように算定すればよいか」というものです。答えは次の2段構えになっています。
| 対象 | 該当する区分 | 取扱い |
|---|---|---|
| 健診等の一環として実施する検体採取の手技 | 第3部第4節 診断穿刺・検体採取料 | 算定できない |
| その血液を用いた検査の実施料 | 第3部第1節第1款 検体検査実施料 | 原則として算定できない(例外あり) |
| その検査の判断料 | 第3部第1節第2款 検体検査判断料 | 原則として算定できない(例外あり) |
注意したいのは、採血の手技料は言い切りで「算定できない」、検査の実施料・判断料は「原則として」と留保されている点です。この書き分けが、次に述べる例外につながります。手技料のほうには例外が置かれていません。
問10は、「健診等の実施とは別に、診療上の必要性に基づき保険診療として実施する検査については、以下に該当する場合に算定できる」として、2つの類型を挙げています。
| 内容 | 判断が生じる時点 | |
|---|---|---|
| 例外① | 健診等を実施した保険医療機関で、当該受診日より前から診療中の疾患に関する継続的な疾病管理の一環として、健診等の受診の有無にかかわらず、予め保険診療として実施を予定していた検査 | 健診より前 |
| 例外② | 健診等の検査結果を踏まえ、治療方針を確立する必要が生じたため、別途追加で保険診療として行う検査 | 健診より後 |
例外①は要件が細かく積み上がっています。(a) 健診等を実施したのと同じ保険医療機関であること、(b) その受診日より前から診療中の疾患があること、(c) その疾患の継続的な疾病管理の一環であること、(d) 健診を受けるかどうかに関係なく、あらかじめ保険診療として実施する予定だったこと。裏を返せば、健診の予定があったからついでに組んだ検査は該当しません。
例外②は逆向きで、健診の結果が出たあとに必要性が生じたケースです。要件は(a) 健診等の検査結果を踏まえていること、(b) 治療方針を確立する必要が生じたこと、(c) 別途追加で行う検査であること。健診で拾った異常値をそのまま保険で再検するという意味ではなく、治療方針を決めるために追加で必要になった検査、という位置づけです。
問10は算定の可否を示したもので、記録の残し方までは規定していません。ただ、例外①も②も「いつ、なぜその検査を決めたのか」が判断の中心にあるため、そこが診療録から追えることが実務上の要になります。
健診で拾った異常値をその後の保険診療につなげる場合、生活習慣病の管理をどう組み立てるかが次の論点になります。2026年度改定での取扱いは生活習慣病管理料 2026年度改定にまとめています。健診を収益の柱に据えるかどうかの判断材料はクリニックの損益分岐点を参照してください。
疑義解釈資料(その12)には、無床診療所に関係する項目が問10のほかにも含まれています。同じ事務連絡なので、まとめて点検しておくのが効率的です。
禁止されていません。疑義解釈資料(その12)問10は、同一日に1回の受診で健診等と保険診療を実施した場合の算定方法を示したもので、同日実施そのものを妨げる内容ではありません。ただし健康診断は療養の給付の対象として行ってはならないと定められているため(療担規則第20条第1号ハ)、費用の切り分けが必要になります。
算定できません。問10は、健診等の一環として実施する検体採取の手技について、第3部第4節の診断穿刺・検体採取料は算定できないとしています。検体検査実施料・検体検査判断料と異なり、こちらには例外が置かれていません。
問10は「当該受診日より前から診療中の疾患に関する継続的な疾病管理の一環として、健診等の受診の有無にかかわらず、予め保険診療として実施を予定していた検査」としています。健診日より前の時点で、健診とは無関係に予定されていたことが前提です。個別の事例が要件を満たすかどうかは判断が分かれうるため、管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。
問10は、健診等の検査結果を踏まえ、治療方針を確立する必要が生じたため別途追加で保険診療として行う検査について、算定できるとしています。要件は「健診結果を踏まえたこと」と「治療方針を確立する必要が生じたこと」の両方です。
事務連絡は令和8年(2026年)9月2日付です。令和8年度診療報酬改定自体は令和8年3月5日保医発0305第6号等により令和8年6月1日から実施されており、疑義解釈はその改定の取扱いを明確化するものとして発出されています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診療報酬の算定可否を保証するものではありません。健診と保険診療を同日に実施した場合の検体検査の算定、施設基準の届出、およびBCPが施設基準を満たすかどうかの判断については、管轄の地方厚生(支)局および審査支払機関に必ずご確認ください。日本医師会も、個々の医療機関のBCPが診療報酬上の施設基準に該当するかどうかは判断できないとして、地方厚生(支)局への照会を案内しています。数値・制度は2026年9月時点の情報に基づきます。
公開日:2026年9月8日/最終更新日:2026年9月8日
鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身