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健診と同日に行う検体検査の算定可否を示した疑義解釈資料(その12)問10の解説記事のアイキャッチ
経営・集患 2026.09.08

健診と同日の検体検査はどこまで算定できる?疑義解釈(その12)問10の読み方【2026年版】

2024年度(令和6年度)の特定健康診査の実施率は61.5%、受診者数は約3,161万人でした(厚生労働省「2024年度特定健診・特定保健指導の実施状況」。前年度の59.9%から1.6ポイント上昇)。健診はクリニックの外来と同じ日に重なることが多く、そこで繰り返し問題になるのが「健診の採血で保険診療の検査もした場合、どこまで算定できるのか」という論点です。2026年9月2日、厚生労働省保険局医療課が発出した疑義解釈資料(その12)の問10が、この取扱いを明示しました。

この記事の要点

  • 健診等の一環として行う検体採取の手技は、診断穿刺・検体採取料を算定できません。検体検査実施料および検体検査判断料も「原則として算定できない」とされました(疑義解釈資料(その12)問10)。
  • 例外は2つだけです。①受診日より前から診療中の疾患に関する継続的な疾病管理の一環として、健診等の受診の有無にかかわらず予め保険診療として実施を予定していた検査、②健診等の結果を踏まえ治療方針を確立する必要が生じたため別途追加で行う検査。
  • そもそも「健康診断は、療養の給付の対象として行つてはならない」と定められています(保険医療機関及び保険医療養担当規則第20条第1号ハ)。問10は、この原則を同日実施の場面に落とし込んだものです。

健診と保険診療を同じ日に行うと、なぜ算定が問題になるのか?

出発点は、健康診断が保険給付の対象外だということです。保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第20条は医師である保険医の診療の具体的方針を定めており、その第1号(診察)ハに「健康診断は、療養の給付の対象として行つてはならない」と明記されています。健診の費用は、受診者本人の自費、あるいは保険者や事業者の負担でまかなわれるもので、診療報酬として請求するものではありません。

問題は、同じ患者が同じ日に1回だけ来院し、1回の採血で健診の検査と保険診療の検査の両方を行う場面です。採血という手技は1回しか発生していないのに、その先の検査は健診分と保険分に分かれます。ここで切り分けを誤ると、本来は健診の費用に含まれるものを診療報酬として請求することになり、返戻や自主返還の対象になります。逆に、算定できる検査まで落としてしまえば取りこぼしです。

この論点は改定のたびに現場から質問が出る定番で、今回あらためて整理されました。

疑義解釈資料(その12)問10は何を示したのか?

2026年(令和8年)9月2日付で、厚生労働省保険局医療課から地方厚生(支)局医療課等に宛てて事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その12)」が発出されました。令和8年度診療報酬改定は令和8年3月5日保医発0305第6号等により令和8年6月1日から実施されており、この疑義解釈はその取扱いを追加で明確化するものです。医科診療報酬点数表関係は14問が示され、そのうち問10が健診と検体検査の関係を扱っています。

問いは「同一日に1回の受診で、健診等と保険診療を実施した場合であって、健診等の一環として血液採取を行い、当該血液を用いて保険診療に係る検査を実施する場合は、検体検査料等について、どのように算定すればよいか」というものです。答えは次の2段構えになっています。

対象該当する区分取扱い
健診等の一環として実施する検体採取の手技第3部第4節 診断穿刺・検体採取料算定できない
その血液を用いた検査の実施料第3部第1節第1款 検体検査実施料原則として算定できない(例外あり)
その検査の判断料第3部第1節第2款 検体検査判断料原則として算定できない(例外あり)

注意したいのは、採血の手技料は言い切りで「算定できない」、検査の実施料・判断料は「原則として」と留保されている点です。この書き分けが、次に述べる例外につながります。手技料のほうには例外が置かれていません。

算定できる2つの例外とは?

問10は、「健診等の実施とは別に、診療上の必要性に基づき保険診療として実施する検査については、以下に該当する場合に算定できる」として、2つの類型を挙げています。

内容判断が生じる時点
例外①健診等を実施した保険医療機関で、当該受診日より前から診療中の疾患に関する継続的な疾病管理の一環として、健診等の受診の有無にかかわらず、予め保険診療として実施を予定していた検査健診より
例外②健診等の検査結果を踏まえ、治療方針を確立する必要が生じたため、別途追加で保険診療として行う検査健診より

例外①は要件が細かく積み上がっています。(a) 健診等を実施したのと同じ保険医療機関であること、(b) その受診日より前から診療中の疾患があること、(c) その疾患の継続的な疾病管理の一環であること、(d) 健診を受けるかどうかに関係なく、あらかじめ保険診療として実施する予定だったこと。裏を返せば、健診の予定があったからついでに組んだ検査は該当しません。

例外②は逆向きで、健診の結果が出たあとに必要性が生じたケースです。要件は(a) 健診等の検査結果を踏まえていること、(b) 治療方針を確立する必要が生じたこと、(c) 別途追加で行う検査であること。健診で拾った異常値をそのまま保険で再検するという意味ではなく、治療方針を決めるために追加で必要になった検査、という位置づけです。

実務ではどう切り分ければよいのか?

問10は算定の可否を示したもので、記録の残し方までは規定していません。ただ、例外①も②も「いつ、なぜその検査を決めたのか」が判断の中心にあるため、そこが診療録から追えることが実務上の要になります。

  • 例外①は「前回までの記載」で立つ。継続的な疾病管理の対象疾患と、次回に予定する検査が、健診日より前の診療録に残っているかを確認します。
  • 例外②は「当日の記載」で立つ。健診結果のどの所見を踏まえ、どの治療方針を決めるために追加したのかを、当日の診療録に書きます。
  • 採血の手技料は、例外①②に当たる場合でも算定しない。問10が診断穿刺・検体採取料を無条件に算定できないとしているのは、健診等の一環として実施する検体採取だからです。
  • 健診メニューの設計段階で動線を決めておく。健診と保険診療を同日に受ける患者がどれくらい発生するのか、受付でどう区別するのかを先に決めておくと、会計時の判断がぶれません。
  • 患者への説明を用意しておく。同じ日に採血1回で、健診分は自費または保険者負担、保険分は窓口負担という会計になります。説明の型を決めておくと窓口が止まりません。

健診で拾った異常値をその後の保険診療につなげる場合、生活習慣病の管理をどう組み立てるかが次の論点になります。2026年度改定での取扱いは生活習慣病管理料 2026年度改定にまとめています。健診を収益の柱に据えるかどうかの判断材料はクリニックの損益分岐点を参照してください。

同じ疑義解釈で、クリニックが確認しておきたい論点は?

疑義解釈資料(その12)には、無床診療所に関係する項目が問10のほかにも含まれています。同じ事務連絡なので、まとめて点検しておくのが効率的です。

  • 問7|機能強化加算・在宅療養支援診療所のBCP。日本医師会が作成した「診療所用業務継続計画(BCP)のひな形」を参考としてよい、とされました。日本医師会によれば、令和8年度改定でこれらの施設基準に令和9年5月31日までにBCPを策定し、当該計画に従い必要な措置を講じることが追加されています。ひな形は白紙様式のほか、外来診療のみの医療機関向けと在宅医療を実施する医療機関向けの記載例が用意されています。
  • 問2・問3|電子的診療情報連携体制整備加算。加算2または3を届け出ている医療機関が加算1または2を新たに算定したい場合、辞退の届出は不要ですが、改めて届出を行う必要があります。また、マイナ保険証利用率の要件を満たさなくなった場合も辞退の届出は不要ですが、その間は算定できません。
  • 問5|眼科医療機関連携強化加算・歯科医療機関連携強化加算。患者が現に他の眼科・歯科に通院中であっても、医学的な必要性に基づき診療情報提供書等を用いて毎年定期的に情報提供する場合は、同一患者に対して年1回継続して算定できます。
  • 別添2 問1|ベースアップ評価料。常勤職員がおらず非常勤職員のみで運営している場合の対象職員の常勤換算数は、非常勤の対象職員の1週間における所定労働時間の合計を「32時間」で除して算出します。制度全体の整理はベースアップ評価料2026を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 健診と保険診療を同じ日に行うこと自体が禁止されているのですか?

禁止されていません。疑義解釈資料(その12)問10は、同一日に1回の受診で健診等と保険診療を実施した場合の算定方法を示したもので、同日実施そのものを妨げる内容ではありません。ただし健康診断は療養の給付の対象として行ってはならないと定められているため(療担規則第20条第1号ハ)、費用の切り分けが必要になります。

Q. 健診の採血で保険の検査も行った場合、採血の手技料は算定できますか?

算定できません。問10は、健診等の一環として実施する検体採取の手技について、第3部第4節の診断穿刺・検体採取料は算定できないとしています。検体検査実施料・検体検査判断料と異なり、こちらには例外が置かれていません。

Q. 「予め保険診療として実施を予定していた検査」は、いつ予定していればよいのですか?

問10は「当該受診日より前から診療中の疾患に関する継続的な疾病管理の一環として、健診等の受診の有無にかかわらず、予め保険診療として実施を予定していた検査」としています。健診日より前の時点で、健診とは無関係に予定されていたことが前提です。個別の事例が要件を満たすかどうかは判断が分かれうるため、管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。

Q. 健診の結果を見て、その場で追加の検査をしました。算定できますか?

問10は、健診等の検査結果を踏まえ、治療方針を確立する必要が生じたため別途追加で保険診療として行う検査について、算定できるとしています。要件は「健診結果を踏まえたこと」と「治療方針を確立する必要が生じたこと」の両方です。

Q. この疑義解釈はいつから適用されますか?

事務連絡は令和8年(2026年)9月2日付です。令和8年度診療報酬改定自体は令和8年3月5日保医発0305第6号等により令和8年6月1日から実施されており、疑義解釈はその改定の取扱いを明確化するものとして発出されています。

今すべきこと(チェックリスト)

  • 健診と保険診療を同日に実施している場合、直近数か月の算定パターンを問10に照らして点検する
  • 健診の採血で保険の検査を行った日に、診断穿刺・検体採取料を算定していないか確認する
  • 例外①に当たる検査について、健診日より前の診療録に予定の記載が残っているか確認する
  • 例外②に当たる検査について、健診結果と治療方針の判断が当日の診療録に残っているか確認する
  • 機能強化加算・在宅療養支援診療所を届け出ている場合、令和9年5月31日までのBCP策定の進捗を確認する
  • 電子的診療情報連携体制整備加算を算定している場合、マイナ保険証利用率を月次で確認する運用に切り替える
  • 判断に迷う事例は、自院の解釈で処理せず管轄の地方厚生(支)局に確認する

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参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診療報酬の算定可否を保証するものではありません。健診と保険診療を同日に実施した場合の検体検査の算定、施設基準の届出、およびBCPが施設基準を満たすかどうかの判断については、管轄の地方厚生(支)局および審査支払機関に必ずご確認ください。日本医師会も、個々の医療機関のBCPが診療報酬上の施設基準に該当するかどうかは判断できないとして、地方厚生(支)局への照会を案内しています。数値・制度は2026年9月時点の情報に基づきます。

公開日:2026年9月8日/最終更新日:2026年9月8日

執筆者

鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身

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