
令和8年度(2026年度)診療報酬改定で、生活習慣病管理料が見直されました。基本点数は据え置かれた一方、算定要件や加算の中身が変わり、内科クリニックの日々の運用に直結します。2026年6月1日の施行後も疑義解釈が積み上がっており、算定漏れや要件の取りこぼしを防ぐ準備が欠かせません。本記事では、変更点5つと今すぐ着手すべき実務対応を整理します。
改定内容は2026年6月1日から適用されています。令和8年度改定は診療報酬改定DXにより施行が例年の4月から後ろ倒しとなり、6月1日施行となりました(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定特設ページ/2026年6月時点)。
生活習慣病管理料は、脂質異常症・高血圧症・糖尿病を主病とする患者に対し、生活習慣に関する総合的な治療管理を評価する管理料です。許可病床数200床未満の病院または診療所で、月1回算定できます。管理料には、検査・注射・病理診断を包括する(Ⅰ)と、それらを包括せず出来高で算定できる(Ⅱ)の2種類があります。
背景にあるのは、前回(令和6年度)改定後の算定実態です。特定疾患療養管理料の対象から糖尿病・脂質異常症・高血圧が外れ、その受け皿として生活習慣病管理料が再編されましたが、中医協の調査では約73%の医療機関が管理料(Ⅱ)のみを算定している状況が示されました(報道による)。
課題として挙がったのは、治療を途中で中断する患者の存在、管理料(Ⅰ)を算定していながら6か月に一度も血液検査を実施していない患者が一定数いること、糖尿病の重症化予防に向けた眼科・歯科との連携不足、そして療養計画書への署名取得が現場負担になっている点でした。これらを踏まえ、質の高い疾病管理を推進する観点から5つの見直しが行われています。
主な変更点は次のとおりです。
| 項目 | 現行 | 改定後 |
|---|---|---|
| 管理料(Ⅰ)基本点数 | 脂質610/高血圧660/糖尿病760 | 変更なし |
| 管理料(Ⅱ)基本点数 | 333点 | 変更なし |
| 管理料(Ⅰ)血液検査 | 明示的な要件なし | 6か月に1回以上(要件化) |
| 療養計画書の患者署名 | 署名が必要 | 署名不要 |
| 眼科・歯科連携強化加算 | 規定なし | 各60点(年1回)新設 |
| 管理料(Ⅱ)包括範囲 | 広範な医学管理料等を包括 | 縮小(併算定可能範囲を拡大) |
| 在宅自己注射指導管理料 | 算定時は生活習慣病管理料を算定不可 | 一部薬剤を除き併算定可 |
(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定/中医協答申資料/2026年6月時点)
管理料(Ⅰ)では、原則として必要な血液検査等を少なくとも6か月に1回以上行うことが要件に加わりました。検査を包括する報酬でありながら実施されていないケースが多いという実態への対処です。管理料(Ⅱ)にこの要件は適用されません。
療養計画書について、患者の署名を受けることが不要になりました。ただし省けるのは署名だけで、計画書の作成・交付・説明と患者同意の取得は引き続き必要です。運用を「署名を取る」から「説明して交付する」フローへ組み替える視点が求められます。
糖尿病の重症化予防を目的に、他院の眼科・歯科と連携した場合の加算が新設されました。眼科医療機関連携強化加算、歯科医療機関連携強化加算はいずれも60点で、患者1人につき年1回、糖尿病を主病とする患者が対象です。管理料(Ⅰ)(Ⅱ)双方に加算できます。糖尿病網膜症や歯周病の予防・診断・治療を目的に他院受診を促し、必要な連携を行うことが要件です。
管理料(Ⅱ)の包括範囲から複数の医学管理料等が外れ、別途(出来高)算定できるようになりました。特定薬剤治療管理料や悪性腫瘍特異物質治療管理料などが対象で、生活習慣病と直接関係の乏しい管理を併算定しやすくなっています。
糖尿病を主病とする患者について、併存する糖尿病以外の疾患に係る在宅自己注射指導管理料を併算定できるようになりました。ただしインスリン製剤、GLP-1受容体作動薬、両者の配合剤は「厚生労働大臣が定める薬剤」として引き続き併算定不可です。
対応の優先度が高い項目を整理します。
医療DX関連では、電子処方箋の導入補助や期限切れ健康保険証への窓口対応など、2026年に運用が変わる論点が続いています。制度改正のたびに要件を追いきれない、事務体制の見直しに手が回らないという場合は、事務長代行や開業・経営支援の専門家に相談する選択肢もあります。株式会社ENでは、クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで支援しています。算定要件の運用や施設基準の整備でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
2026年6月1日から適用されています。令和8年度改定は診療報酬改定DXにより施行が6月へ後ろ倒しとなりました(2026年6月時点)。
変わっていません。管理料(Ⅰ)は脂質異常症610点・高血圧症660点・糖尿病760点、管理料(Ⅱ)は333点で据え置きです(2026年6月時点)。
作成は必要です。不要になったのは患者の署名のみで、計画書の作成・説明・交付と同意取得は引き続き求められます。
管理料(Ⅰ)です。原則6か月に1回以上の血液検査等が要件化されました。管理料(Ⅱ)には適用されません。
各60点で、患者1人につき年1回、糖尿病を主病とする患者が対象です。管理料(Ⅰ)(Ⅱ)どちらにも加算できます。
著者プロフィール
鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の算定可否を保証するものではありません。実際の施設基準の届出やレセプト請求にあたっては、管轄の地方厚生局に必ずご確認ください。数値・制度は2026年8月時点の情報に基づきます。
公開日:2026年8月8日/最終更新日:2026年8月8日
※本記事は制度の概要を整理したものです。個別の算定可否・施設基準・税務等の判断にあたっては、厚生労働省の一次情報を確認のうえ、医師・税理士等の専門家にご相談ください。