「かかりつけ医」を持つと何がいいの?

「かかりつけ医」を持つと何がいいの?
目次

はじめに

「体調が心配なときは、設備の整った大きな病院に行ったほうが安心なのでは」——そう考えたことがある方は多いと思います。反対に「かかりつけ医」という言葉は聞くけれど、具体的に何が違うのか、どう使い分ければいいのかが分からないという声もよく聞きます。

本記事は、「かかりつけ医とは何か」「大病院にいきなり行くと実際どうなるのか」を、公的な制度の説明として整理します。特定の医療機関をおすすめする記事ではありません。むしろ本サイトが扱っている「地域でかかりつけを探す」という作業そのものへの、入り口として書いています。

かかりつけ医を持つと、普段の健康状態を継続的に把握してもらえ、必要なときには専門の医療機関へ的確につないでもらえます。紹介状を持たずにいきなり大きな病院を受診すると、決められた追加の料金がかかる仕組みがあり、専門外来は予約制で対応にも時間がかかりがちです。ただし、精密検査や入院・手術など専門的な診断・治療が必要な段階では、かかりつけより病院の専門外来のほうが適切な選択肢になります。

かかりつけ医とは何か

日本医師会は、かかりつけ医を日常的な健康相談に応じ、必要なときには適切なタイミングで専門の医師や専門医療機関につなぐ役割を持つ、身近な医師と位置づけています。2013年に日本医師会と四病院団体協議会が公表した合同提言では、かかりつけ医の機能として「なんでも相談でき、必要な時には専門医・専門医療機関を紹介できる、地域医療を担う総合的な能力を有する医師」という考え方が示されました。

ポイントは、かかりつけ医が「その医師だけで全部を治す人」ではないという点です。日常の健康管理・体調変化への初期対応・予防接種や健診の相談を受け持ちながら、自分の手に余ると判断したときに、専門の医療機関へつなぐ——この橋渡しの機能こそがかかりつけ医の役割です。

大病院にいきなり行くと何が起きるか

紹介状(診療情報提供書)を持たずに、大きな病院をいきなり受診すると、通常の診察料に加えて追加の料金がかかる仕組みがあります。これは「選定療養費」と呼ばれる制度で、対象になるのは特定機能病院、一般病床200床以上の地域医療支援病院、一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関です。

金額は病院ごとに設定されますが、国が定める最低額は初診が医科7,000円以上・歯科5,000円以上、再診(紹介状を渡されたのに同じ病院にかかり続ける場合)が医科3,000円以上・歯科1,900円以上です(令和6年度診療報酬改定時点)。救急搬送された場合や、やむを得ない事情がある場合はこの負担を求めないこととされています。

費用だけの問題ではありません。大きな病院の専門外来は多くが予約制で、初診の予約が数週間先になることも珍しくありません。専門外来は特定の病気を精密に診るための体制なので、「まず相談したい」という段階の窓口としては動きにくいという事情もあります。

かかりつけを持つメリット

かかりつけ医を決めておくメリットは、主に3つに整理できます。

  • 継続的な健康状態の把握——毎回違う医師に一から説明するのではなく、これまでの経過を知っている医師に相談できます
  • 薬の重複・飲み合わせの管理——複数の症状で別々の医療機関にかかっていると、同じ成分の薬が重なったり、飲み合わせの確認が漏れたりすることがあります。かかりつけが窓口になっていると、この管理がしやすくなります
  • 専門医療機関への的確な紹介——大きな病院(地域医療支援病院など)は、地域のかかりつけ医からの紹介を受け入れ、治療後は状態が落ち着いた患者を再びかかりつけへ戻す「逆紹介」という仕組みで地域と連携しています。かかりつけを経由することで、この連携に乗りやすくなります

「入り口」としてのかかりつけ

かかりつけ医は「そこだけで全部が完結する場所」ではなく、医療にアクセスするときの入り口として機能する仕組みです。日常の相談・初期対応はかかりつけで受け、専門的な診断・治療が必要だと判断された段階では、病院の専門外来など、より適切な選択肢に紹介してもらう——この往復が前提になっています。

よくある誤解

誤解1:「かかりつけは、軽い症状の人・持病がある人向け」

そう捉えられがちですが、かかりつけ医機能は持病の有無や年齢に関わらず、誰にとっても入り口として機能する仕組みです。健康なうちに決めておくと、体調を崩したときにあわてて探さずに済みます。

誤解2:「大きな病院のほうが、何かあったときに安心」

大きな病院は、紹介を前提にした専門的な医療の提供に体制を割いています。紹介状なしでいきなり受診すると、前述の追加料金がかかるうえ、専門外来は予約制で対応に時間がかかりがちです。「まず相談したい」という段階では、かかりつけのほうが動きやすい場面が多くあります。もっとも、精密検査や入院・手術が必要な段階まで進んでいる場合は、話が逆になります。その段階では、大きな病院の専門外来のほうが適切な選択肢です。

誤解3:「一度かかりつけを決めたら、そこ以外を受診してはいけない」

そのような決まりはありません。かかりつけはあくまで最初に相談する窓口で、必要に応じて専門の医療機関を紹介してもらったり、他の医療機関にセカンドオピニオンを求めたりすることは制限されません。

こう考えて選ぶとよい

かかりつけを持つタイミングは、体調を崩してからではなく、元気なうちに決めておくのが基本です。転居したとき、健診を受けたとき、家族が増えたときなどが決めるきっかけになります。

選ぶときに見ておくとよい点は次のとおりです。

  • 通いやすさ——自宅や職場から通える距離・診療時間か
  • 対応できる範囲——日常的な体調不良や健診結果の相談を、幅広く受けているか
  • 紹介の実績・体制——必要なときに専門の医療機関へ紹介する仕組みが整っているか(紹介状の発行には、健康保険の診療情報提供料として自己負担割合に応じた実費がかかります。3割負担の場合はおおむね750円程度です)

実際に探すときは

本サイトは、東京23区・多摩地域・神奈川県のエリアごとに、一般内科(プライマリケア)をはじめとする各診療科のクリニックを紹介しています。かかりつけを探す入り口として、お住まいのエリアの記事もあわせてご覧ください。

監修者からのひとこと

外来をしていると、「こんな軽いことで来ていいのか分からなくて」とためらいながら受診される方によく出会います。かかりつけの役割の半分は、実はそのためらいを引き受けることだと感じています。

一方で、専門的な検査や治療が必要だと判断したときに、迷わず紹介先につなぐこともかかりつけの仕事です。大きな病院の専門外来にできることと、かかりつけにできることは別物で、どちらが上ということはありません。「まず相談できる相手を一人決めておく」——それだけで、いざというときの動き方がずいぶん変わります。

※この節は監修医師本人の確認前の草案です。

よくある質問

Q. かかりつけ医は、どうやって決めればいいですか。特別な手続きは必要ですか。

A. 特別な登録や手続きは必要ありません。日常的に相談しやすい医療機関を自分で選び、継続して受診することで、その医師が実質的な「かかりつけ」になっていきます。通いやすさや対応できる範囲、紹介の体制などを手がかりに選ぶとよいでしょう。

Q. 引っ越しをしたら、かかりつけ医も変える必要がありますか。

A. 通院の負担を考えると、生活圏が変われば新しいかかりつけを探すのが現実的です。これまでの受診歴や薬の情報は、お薬手帳や、依頼すれば発行してもらえる診療情報提供書(紹介状)で新しい医療機関に伝えることができます。

Q. 紹介状はどこでもらえますか。費用はかかりますか。

A. 現在受診している医療機関に依頼して発行してもらいます。健康保険の診療情報提供料として費用がかかり、自己負担割合に応じておおむね数百円程度です(3割負担の場合は750円程度)。

Q. 紹介状なしで大きな病院に行くと、必ず追加料金がかかりますか。

A. 特定機能病院、一般病床200床以上の地域医療支援病院、一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関を紹介状なしで受診すると、決められた追加料金がかかります。国が定める最低額は初診が医科7,000円以上・歯科5,000円以上です。ただし救急搬送された場合など、やむを得ない事情があるときはこの負担を求めないこととされています。

Q. かかりつけ医に「うちでは対応が難しい」と言われたら、どうなりますか。

A. その場合は、症状に応じた専門の医療機関を紹介してもらう流れになります。かかりつけ医は「なんでも自分だけで治す」役割ではなく、専門的な診断・治療が必要な段階を見極めて、より適切な選択肢につなぐことも役割のひとつです。

Q. 持病がなくても、かかりつけ医は必要ですか。

A. 持病の有無に関わらず役に立つ仕組みです。健診結果の相談や急な発熱など、誰にでも起こりうる場面で、まず相談できる窓口を持っておくと、体調を崩したときにあわてて探さずに済みます。

出典・参考文献

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