
従来の健康保険証をめぐる特例対応が2026年7月31日で終了し、8月1日以降は期限切れの保険証を窓口でそのまま使うことができなくなりました。患者はマイナ保険証(利用登録済みのマイナンバーカード)または「資格確認書」で受診することになります。これは新規に開業する診療所はもちろん、開業直後のクリニックの受付・保険請求フローにも直接関わる変更です。本記事では、制度の内容と施行時期を事実ベースで整理し、受付現場で押さえておきたい実務ポイントを解説します。
従来の健康保険証は、2024年12月2日をもって新規発行が終了しました。すでに発行済みの保険証は経過措置により、資格喪失などがない限り最長2025年12月1日まで利用可能とされていました。その後も、有効期限が切れた従来保険証を持参した患者について、医療機関がオンライン資格確認で資格を確認できる場合に限り通常の保険診療を認める特例対応が続いていましたが、この特例が2026年7月31日で終了しました。
したがって2026年8月1日以降は、原則としてマイナ保険証、または加入している保険者から交付される「資格確認書」のいずれかがなければ、通常どおりの保険診療(1〜3割負担)を受けられません。マイナ保険証を保有していない人や後期高齢者などには、申請によらず資格確認書が順次交付される仕組みが整えられています。
受付で特に混同が起きやすいのが、「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」の違いです。両者は見た目や名称、記載情報が似ているため患者も取り違えやすいのですが、役割は異なります。
「資格確認書」は、それ単独で医療機関の窓口に提示して受診できる書類です。一方の「資格情報のお知らせ」は、自分の保険資格を本人が確認するための通知であり、原則として単独では受診に使えません。マイナ保険証とあわせて用いることが想定されているものです。全国の保険医団体からも、「資格情報のお知らせ」のみを持参した患者との窓口トラブルが報告されており、受付スタッフが両者を正確に見分けられるよう、事前の周知が重要になります。
期限切れの従来保険証しか持っていない患者については、基本的に「保険証を忘れた場合」と同様の対応になります。この場合、患者はいったん窓口で医療費の全額(10割)を支払い、後日、加入する健康保険組合・協会けんぽ・市町村国保などに差額分を請求して償還を受ける流れとなります。患者にとっては一時的な負担が大きくなるため、窓口での丁寧な説明とトラブル回避のための案内文の準備が求められます。
なお、オンライン資格確認システムで資格情報が確認できるケースもあるため、まずはシステムでの資格確認を試みることが実務上の起点になります。
第一に、オンライン資格確認の安定運用が前提になります。これから開業する診療所は、保険医療機関の指定手続きとあわせてオンライン資格確認の導入・接続テストを早めに済ませ、カードリーダーやネットワークの動作を開業前に確認しておくと安心です。
第二に、受付フローの見直しです。マイナ保険証・資格確認書・(マイナ保険証と併用する)資格情報のお知らせの3つを整理し、「どれを提示されたら何ができるか」をスタッフ間で共有しておくと、8月以降の窓口混乱を減らせます。院内掲示や問診票への一言案内も有効です。
第三に、償還払いとなるケースの手順化です。全額負担が発生する場合の説明文・領収書の扱い・後日の資格確認後の対応(差額精算の可否は保険者や運用によります)を、あらかじめ院内ルールとして定めておくことをおすすめします。
2026年8月1日以降、期限切れの従来健康保険証は原則として窓口で使用できなくなり、マイナ保険証または資格確認書での受診が基本となりました。クリニックにとっては、オンライン資格確認の安定運用、受付スタッフへの周知、償還払い対応の手順化が当面のポイントです。制度の細部や運用は保険者・地域によって異なる場合があるため、最新情報は厚生労働省の一次情報で確認することをおすすめします。
期限切れの従来の健康保険証は窓口で使用できなくなりました。これまでの特例対応が終了し、原則としてマイナ保険証か「資格確認書」がないと通常の保険診療を受けられなくなっています。
従来の健康保険証は2024年12月2日をもって新規発行が終了しており、既に発行されていたものは経過措置により最長2025年12月1日まで利用可能とされていました。
別のものです。資格確認書は単独で受診に使えますが、資格情報のお知らせは本人確認用の書類で、原則として単独では受診の根拠になりません。
保険証を忘れた場合と同様の扱いになり、患者は窓口で医療費を全額支払ったうえで、後日加入している保険者に差額を請求する流れが基本になります。
資格確認書と資格情報のお知らせを見分けるための見本の用意、全額自己負担時の説明文・領収書様式の確認、マイナ保険証の読み取り不良時の代替手順の共有、来院患者への事前掲示・案内が挙げられます。
本記事は公表されている制度情報の解説を目的としたものであり、個別の経営判断・医療判断・保険請求実務の最終的な取り扱いを保証するものではありません。制度の運用は保険者や地域、時期によって異なる場合があります。個別の判断にあたっては、厚生労働省の一次情報を確認のうえ、必要に応じて社会保険労務士・税理士・行政書士等の専門家にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の請求実務を保証するものではありません。実際の窓口対応や保険請求にあたっては、加入先の保険者および審査支払機関に必ずご確認ください。数値・制度は2026年8月時点の情報に基づきます。
鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身