はじめに
駅の構内や繁華街のビルで、「予約不要」「夜9時まで診療」「土日も受付」といった看板を掲げるクリニックを見かけたことがある方は多いと思います。ネット上ではこうしたクリニックが「コンビニクリニック」と呼ばれることがありますが、かかりつけ医とは何が違うのか、いざというときに使ってよいものなのか、判断に迷うという声もよく聞きます。
コンビニクリニックという呼び方は、法令で定められた制度上の区分ではなく、予約不要・夜間や休日も診療・駅前や繁華街のビルに立地といった特徴を持つクリニックを指す便宜上の呼び方です。急な発熱や、出張・旅行先での体調不良など、一時的に医療につながりたい場面では使いやすい一方、同じ医師に継続して診てもらえる保証はなく、専門的な検査体制を持たない場合もあるため、継続的な治療管理には向かないことがあります。使い分けの軸は、一時的な窓口か、継続的な窓口かです。
コンビニクリニックとは何か
医療法・医療法施行規則には、診療所の診療日数や診療時間についての最低基準は定められていません。診療所は、保健所や地方厚生局へ届け出た診療日・診療時間を「標榜診療時間」として掲示する仕組みになっており、何時から何時まで診療するか、予約制にするかどうかは、各医療機関が届け出た範囲で自由に設定できます。夜間だけ診療する診療所や、予約を取らずに受け付ける診療所も、この仕組みのうえで開設されています。
いわゆる「コンビニクリニック」は、この自由度を使って、次のような特徴を持たせたクリニックを指すことが多い呼び方です。
- 予約なし、または当日の受付を中心にしている
- 夜間や土日・祝日も診療している
- 駅の構内や駅前のビル、繁華街など、通いやすい立地にある
- 1回あたりの診察時間が短めで、比較的よくある症状への対応を中心にしていることが多い
これらは業態としての傾向であって、すべてのクリニックに一律に当てはまるわけではなく、また「コンビニクリニック」という名称を医療機関側が公式に名乗っているとも限りません。
似た言葉に「コンビニ受診」がありますが、これは別の意味の言葉です。 総務省消防庁は、緊急性の低い症状であるにもかかわらず救急車を要請したり、夜間・休日の救急外来を安易に受診したりする行動を指して、救急医療の適正利用という文脈でこの言葉を使っています。これはクリニックの業態を指す「コンビニクリニック」とは異なる話で、混同すると受診行動の判断を誤りかねません。
使いどころ
コンビニクリニックの特徴が活きるのは、主に次のような場面です。
- 急な発熱や体調不良が、かかりつけ医の休診時間帯に起きたとき
- 出張や旅行など、ふだんの生活圏を離れている場所で急に受診が必要になったとき
- 平日の日中に受診時間を取りにくい人が、仕事帰りや休日に受診したいとき
このほか、厚生労働省の「医療情報ネット」では、休日・夜間に対応している医療機関を場所や条件から検索できる仕組みが公的に用意されています。お住まいの地域でどこが対応しているかを調べる際の入り口として使えます。
限界・注意点
一時的な窓口として使いやすい反面、次のような限界があることも押さえておく必要があります。
- 継続的な治療管理には向かない場合がある。 生活習慣病の管理など、経過を追いながら治療方針を調整していく診療では、毎回同じ医師に診てもらえるとは限らない、カルテの継続性が保たれにくいといった事情から、続けて通うことが前提の診療には不向きなことがあります
- 専門的な検査体制を持たないことがある。 画像診断機器や入院設備を備えていない診療所も多く、詳しい検査や入院が必要と判断された場合は、他の医療機関への紹介が前提になります
- 夜間・早朝・休日の受診には、追加の費用がかかることがある。 診療報酬制度上、標榜時間の外での受診には時間外加算・休日加算・深夜加算などが設定されており、これはクリニックの業態にかかわらず、時間帯に応じて適用される仕組みです
- 緊急性の高い症状への対応窓口ではない。 予約不要・夜間対応という特徴から救急対応の窓口のように見えることがありますが、重い症状や急変が疑われる場合の受診先ではなく、そうした場合は救急要請や救急医療機関の受診が前提です
かかりつけとの使い分け
コンビニクリニックとかかりつけ医は、どちらが優れているという関係ではなく、役割が違う窓口です。
- コンビニクリニック——突発的な体調不良や、生活圏外での受診など、一時的につながる窓口
- かかりつけ医——普段の健康状態を継続的に把握し、必要なときには専門の医療機関へつなぐ、継続的な窓口
日常の健康管理や持病の経過観察はかかりつけ医に任せ、かかりつけが休診の時間帯や、出張・旅行先など一時的な場面ではコンビニクリニックのような窓口を使う、という整理が基本になります。かかりつけ医の役割や選び方については、「かかりつけ医」を持つと何がいいの?でも解説しています。
よくある誤解
誤解1:「コンビニクリニック」と「コンビニ受診」は同じ意味である
名前が似ていますが、別の言葉です。「コンビニクリニック」は予約不要・夜間対応といった特徴を持つクリニックの業態を指す呼び方で、「コンビニ受診」は緊急性の低い症状で救急外来や救急車を安易に使ってしまう受診行動を指す、総務省消防庁などが使う言葉です。コンビニクリニックを利用すること自体が「コンビニ受診」にあたるわけではありません。
誤解2:予約不要だから、必ず待たずに受診できる
予約が不要というのは受付の仕組みの話であり、混雑状況とは別です。時間帯や立地によっては、予約不要のクリニックほど受診が集中し、結果的に待ち時間が発生することもあります。
誤解3:夜間や休日に対応しているので、緊急時の窓口として使える
前述のとおり、コンビニクリニックは緊急性の高い症状への対応窓口ではありません。強い痛みや急変が疑われる症状がある場合は、救急安心センター事業(#7119)などの相談窓口や、救急医療機関の受診を優先してください。
こう考えて選ぶとよい
受診先を考えるときは、まず症状の緊急性を見極めることが出発点になります。
- 緊急性が高いと感じる症状——救急安心センター事業(#7119、小児は#8000)に相談する、または救急要請・救急医療機関の受診を検討する
- 急ではあるが緊急性は高くない症状で、かかりつけが対応できない時間帯・場所にいる——コンビニクリニックのような、一時的に対応してくれる窓口を検討する場面にあたる
- 継続して経過を診てもらいたい症状、持病の管理——かかりつけ医を窓口にする
コンビニクリニックを受診した場合も、そこで完結させず、受診した内容をお薬手帳などでかかりつけ医と共有しておくと、その後の管理につながりやすくなります。
監修者からのひとこと
外来をしていると、「休日に具合が悪くなって、たまたま開いているクリニックに駆け込んだ」という患者さんに出会うことがあります。それ自体は悪いことではなく、そうした窓口があること自体が、体調を崩した人にとっての助けになっている場面は実際にあります。
ただ、そこで完結させず、後日かかりつけの医師にも「こういう症状で、こういう診療を受けた」と伝えていただけると、その後の管理がずっとやりやすくなります。一時的な窓口と、継続して診ている窓口の両方があることを、患者さん自身に知っておいてもらえるとありがたいです。
※この節は監修医師本人の確認前の草案です。
よくある質問
Q. コンビニクリニックでも健康保険は使えますか。
A. 保険医療機関として指定を受けているクリニックであれば、通常の保険診療と同じように健康保険を使って受診できます。ただし、これは個々のクリニックの指定状況によるため、初めて受診する場合は各クリニックの案内で確認することをおすすめします。
Q. 夜間や休日に受診すると、追加の料金がかかりますか。
A. 診療報酬制度上、標榜している診療時間の外での受診には、時間外加算・休日加算・深夜加算などが設定されていることがあります。これはクリニックの業態にかかわらず、受診した時間帯に応じて適用される仕組みです。
Q. 同じ症状で、コンビニクリニックに通い続けることはできますか。
A. 制度上は可能ですが、同じ医師が継続して担当するとは限らず、詳しい検査体制を持たない場合もあります。経過を追いながら治療方針を調整していく必要がある症状は、かかりつけ医のもとで継続的に診てもらうほうが向いていることが多いです。
Q. 出張先や旅行先で急に具合が悪くなりました。コンビニクリニックを使ってもよいですか。
A. 生活圏を離れた場所での急な体調不良は、コンビニクリニックのような窓口が使いやすい場面のひとつです。受診後は、内容をお薬手帳などでかかりつけ医と共有しておくと、帰宅後の管理につながりやすくなります。
Q. 「コンビニクリニック」と「コンビニ受診」は同じことですか。
A. 別の言葉です。「コンビニクリニック」は予約不要・夜間対応といった特徴を持つクリニックの業態を指す呼び方で、「コンビニ受診」は緊急性の低い症状で救急外来や救急車を安易に利用してしまう受診行動を指す言葉です。
Q. 症状が重い場合や、急変が心配な場合はどうすればいいですか。
A. コンビニクリニックは緊急性の高い症状への対応窓口ではありません。強い痛みや急変が疑われる場合は、救急安心センター事業(#7119、小児は#8000)に相談するか、救急要請・救急医療機関の受診を優先してください。

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