高血圧のことをもっと知って、もっと健康に。
高血圧と年齢の関係|若年性高血圧と加齢による変化

高血圧と年齢の関係|若年性高血圧と加齢による変化

はじめに

血圧は 年齢とともに変化 し、加齢に伴い高血圧のリスクが高まります。一方で、若年者でも高血圧を発症するケース もあり、早期の発見と管理が重要です。本記事では、若年性高血圧と加齢による血圧変化の特徴、リスク、治療法 について詳しく解説します。


1. 年齢による血圧の変化

(1) 年齢別の平均血圧(JSH2019)

年齢層収縮期血圧(mmHg)拡張期血圧(mmHg)高血圧有病率(%)
20代115〜12070〜755%
30代120〜13075〜8010%
40代125〜13580〜8520%
50代130〜14085〜9040%
60代140〜15085〜9560%
70代以上150〜16090〜10075%

ポイント

  • 若年者の正常血圧は120/80mmHg未満
  • 40歳以降、収縮期血圧(上の血圧)が上昇
  • 60歳以上では、高血圧の有病率が60%以上に達する

(2) 加齢に伴う血圧上昇のメカニズム

要因血圧への影響
動脈の硬化(弾力性低下)収縮期血圧が上昇
腎機能の低下ナトリウム排泄能力の低下、体液貯留
交感神経の活性化血管収縮、心拍数増加
インスリン抵抗性の進行血管内皮機能障害、動脈硬化の促進

ポイント

  • 加齢とともに血圧は自然に上昇
  • 特に収縮期血圧(上の血圧)の上昇が顕著
  • 生活習慣の影響も大きく、食塩摂取や運動不足が悪化要因

2. 若年性高血圧の特徴

(1) 若年性高血圧とは?

若年性高血圧は 40歳未満で発症する高血圧 を指し、生活習慣の影響が大きい「本態性高血圧」と、病気が原因の「二次性高血圧」の2つ に分けられます。

種類特徴
本態性高血圧(一次性高血圧)遺伝や生活習慣の影響(食塩過多、肥満、ストレス)
二次性高血圧特定の病気が原因(腎疾患、ホルモン異常、睡眠時無呼吸症候群)

ポイント

  • 若年者の高血圧は、遺伝的要因と生活習慣が大きく関与
  • 40歳未満での高血圧は、二次性高血圧の可能性も考慮
  • 運動不足・肥満・過剰な食塩摂取がリスクを高める

(2) 若年性高血圧のリスク

  • 高血圧の放置で 脳卒中・心筋梗塞リスクが増加
  • 腎臓・血管へのダメージが長期間蓄積
  • メタボリックシンドロームの発症リスク
  • 30代・40代で心筋梗塞を発症するケースが増加

ポイント

  • 若年者の高血圧は長期間放置すると重大な合併症につながる
  • 生活習慣の改善と早期の治療が重要

若年性高血圧の検査と治療戦略|早期発見と適切な管理のポイント

はじめに

若年性高血圧(40歳未満で発症する高血圧)は、生活習慣や遺伝的要因だけでなく、二次性高血圧の可能性も高いため、正確な診断と適切な治療戦略が重要 です。
特に、20代・30代の高血圧患者では、腎疾患やホルモン異常などの病態を見逃さないことが重要 であり、適切なスクリーニング検査を行いながら、早期の生活習慣改善や治療を進める必要があります。

本記事では、若年性高血圧の診断・検査の進め方、治療戦略、合併症リスクの管理 について詳しく解説します。


1. 若年性高血圧の分類

若年性高血圧は、以下の2つに分類される

  1. 本態性高血圧(一次性高血圧)
    • 遺伝的要因(家族歴)
    • 生活習慣要因(食塩過多、肥満、ストレス、運動不足)
    • 交感神経の過活動(ストレスや睡眠不足の影響)
  2. 二次性高血圧
    • 腎血管性高血圧(腎動脈狭窄)
    • 原発性アルドステロン症
    • クッシング症候群
    • 褐色細胞腫
    • 甲状腺機能異常
    • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)

ポイント

  • 40歳未満での高血圧は、二次性高血圧の可能性が高い
  • 本態性高血圧と判断する前に、二次性高血圧の鑑別が必須
  • 特に、急激な血圧上昇や降圧薬の効きにくいケースでは、徹底的な検査が必要

2. 若年性高血圧の診断と検査

若年性高血圧の診断は、以下のステップで進める

(1) まずは基本的な評価

  1. 診察室血圧・家庭血圧測定
    • 診察室血圧 140/90mmHg以上、家庭血圧 135/85mmHg以上 なら高血圧
    • 白衣高血圧仮面高血圧 の可能性を考慮
    • 24時間血圧測定(ABPM)で詳細な血圧変動を確認
  2. 生活習慣・家族歴の評価
    • 両親・兄弟姉妹に高血圧の人がいるか?
    • 食塩摂取量や運動習慣はどうか?
    • ストレス・睡眠状況の確認
  3. 基本的な血液検査・尿検査
    • 血清カリウム(K)値(原発性アルドステロン症のスクリーニング)
    • 腎機能(クレアチニン、eGFR)
    • 尿蛋白・尿アルブミン値(腎疾患の可能性を確認)
    • 血糖・脂質異常症の有無

(2) 二次性高血圧を疑う場合の追加検査

以下の特徴がある場合、二次性高血圧を疑い、専門的な検査を行う

疑われる疾患特徴必要な検査
腎血管性高血圧(腎動脈狭窄)腹部血管雑音、急激な血圧上昇、利尿薬で腎機能低下腎動脈エコー、CT/MRI
原発性アルドステロン症低カリウム血症、頑固な高血圧レニン・アルドステロン比測定
クッシング症候群中心性肥満、満月様顔貌、筋力低下24時間尿中コルチゾール、夜間唾液コルチゾール
褐色細胞腫発作性高血圧、動悸・発汗・頭痛血漿メタネフリン測定、MIBGシンチ
甲状腺機能異常頻脈・体重減少(甲状腺機能亢進症)、浮腫・倦怠感(甲状腺機能低下症)甲状腺ホルモン(TSH, FT4, FT3)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)いびき、日中の眠気、肥満終夜睡眠ポリグラフ(PSG)

ポイント

  • 40歳未満の高血圧では、二次性高血圧のスクリーニングを徹底
  • 特に、低カリウム血症・急激な血圧上昇・難治性高血圧の場合は慎重に評価

3. 若年性高血圧の治療戦略

若年者の高血圧は、まず生活習慣の改善が第一選択

4. 高血圧を予防・管理するための生活習慣

(1) 生活習慣の改善

生活習慣予想される血圧低下量 (mmHg)
減塩(6g/日以下)-5~6
有酸素運動(週150分以上)-5~8
体重減少(5kg減)-4~5
節酒(1日アルコール20g以下)-3~4
禁煙-3~4

具体的な改善方法

  • 減塩のコツ:だし・香辛料の活用、加工食品の摂取制限
  • 運動習慣の確立:ウォーキング・水泳・ヨガを継続

禁煙・節酒:医師の禁煙外来利用、休肝日の設定


(2) 薬物治療の選択

生活習慣の改善だけでは血圧が下がらない場合、薬物治療を開始

第一選択薬代表薬
ARB / ACE阻害薬ロサルタン, バルサルタン, エナラプリル
カルシウム拮抗薬アムロジピン, ニフェジピン
利尿薬(サイアザイド系)ヒドロクロロチアジド, インダパミド

二次性高血圧が疑われる場合の特別な治療

  • 原発性アルドステロン症 → MR拮抗薬(スピロノラクトン)
  • 褐色細胞腫 → α遮断薬(ドキサゾシン)
  • 甲状腺機能異常 → 甲状腺ホルモン補充 or 甲状腺機能抑制

ポイント

  • 若年者の降圧薬は、副作用が少なく、長期使用に適したものを選択
  • 特に腎機能保護作用のあるARB・ACE阻害薬が第一選択
  • 二次性高血圧の場合、原因疾患の治療が最優先

まとめ

若年性高血圧は、生活習慣要因と二次性高血圧の鑑別が重要
診断には、基本的な血圧測定・血液検査に加え、スクリーニング検査が必要
二次性高血圧の可能性がある場合、専門的な検査を行う
治療は、まず生活習慣改善を優先し、必要に応じて降圧薬を使用する


次回の記事:「高血圧と睡眠の関係|夜間高血圧と仮面高血圧に注意」では、睡眠と血圧の関係について詳しく解説します!

監修

鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNSメディア

関連リンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です