高血圧は大きく「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2つに分けられます。どちらに該当するかによって検査の進め方や治療の選択肢が変わってくるため、両者の違いを知っておくことは診断や治療を理解するうえで役立ちます。
本態性高血圧とは
本態性高血圧(一次性高血圧)は、これといった単一の原因を特定できないタイプの高血圧です。遺伝的な体質に加え、食塩の摂りすぎ、運動不足、肥満、ストレスなど複数の生活習慣的な要因が積み重なって発症すると考えられています。日本高血圧学会によると、日本人の高血圧の約8〜9割はこの本態性高血圧にあたるとされ、多くの場合は中年以降にゆっくりと進行し、親が高血圧の場合に起こりやすい傾向があります(出典:日本高血圧学会・日本高血圧協会「一般向け『高血圧治療ガイドライン』解説冊子」)。自覚症状がないまま進行することが多く、食生活を中心とした生活習慣の見直しが予防・治療の基本になります。
二次性高血圧とは
二次性高血圧は、腎臓の病気、副腎などのホルモンの異常、血管の病気、特定の薬剤の影響など、はっきりとした原因があって血圧が上がっているタイプの高血圧です。原因を特定して取り除くことができれば、血圧が正常化する可能性があるのが本態性高血圧との大きな違いです。二次性高血圧は一般に本態性高血圧よりも若い人に多くみられます。代表的な原因としては、原発性アルドステロン症、腎動脈狭窄症、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などが挙げられます。
二次性高血圧を疑うきっかけ
日本高血圧学会のガイドライン(JSH2025)では、初診時の評価の中で二次性高血圧を除外することが手順の一つとして位置づけられています。具体的には、40歳未満での発症、低カリウム血症、複数の薬を使っても血圧が下がらない治療抵抗性高血圧、副腎の腫瘍が画像検査で偶然見つかった場合、強い家族歴などが、二次性高血圧を疑って詳しく調べるきっかけとして挙げられています(出典:日本高血圧学会「Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025(JSH2025)」Hypertension Research誌)。
- 40歳未満で高血圧を指摘された
- 血液検査でカリウム値が低い
- 3種類以上の降圧薬を使っても目標の血圧に届かない
- 健康診断などで副腎に腫瘍が偶然見つかった
- 若くして高血圧になった家族が複数いる
治療方針の違い
本態性高血圧の治療は、減塩や運動、体重管理といった生活習慣の改善を土台に、必要に応じて降圧薬を組み合わせていくのが基本です。薬の種類や選び方については降圧剤の種類と効果で詳しく解説しています。一方、二次性高血圧では、原因となっている病気そのものの治療(手術やホルモンを調整する薬など)によって血圧が改善する場合があり、原因を特定するための検査が治療方針を大きく左右します。
まとめ
高血圧の多くは本態性高血圧ですが、若い年代での発症や治療抵抗性など、気になる特徴がある場合は二次性高血圧の可能性も念頭に置くことが大切です。正しい血圧の測り方で普段の血圧を把握しつつ、気になる点があれば早めに医師に相談しましょう。
原因ごとの手がかりとなる症状
二次性高血圧の原因によって、血圧上昇以外に現れやすい症状や検査所見には特徴があります。日本高血圧学会のガイドラインが示す二次性高血圧の鑑別表では、代表的な原因とその手がかりが整理されています(出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」二次性高血圧の鑑別表)。
- 原発性アルドステロン症:低カリウム血症を伴うことがある(ただし正常なことも多い)
- 腎動脈狭窄症:腎機能の急な悪化、腹部の血管雑音
- 褐色細胞腫:発作性の血圧上昇、動悸、頭痛、発汗
- 甲状腺機能亢進症:頻脈、体重減少、暑がり
- 睡眠時無呼吸症候群:いびき、日中の眠気、夜間の血圧が下がらない
こうした随伴症状に心当たりがある場合は、単なる本態性高血圧として一律に治療を始めるのではなく、原因を特定するための追加検査が検討されます。
二次性高血圧の診断・治療の流れ
二次性高血圧が疑われた場合、まず血液検査・尿検査によるスクリーニングが行われ、異常が見つかれば、ホルモン負荷試験や画像検査(超音波、CT、MRI、シンチグラフィーなど)によって原因を絞り込んでいきます。原因が特定できれば、手術やその原因に応じた薬物療法によって、血圧が大きく改善したり、複数飲んでいた降圧薬を減らせたりすることも少なくありません。一方で、本態性高血圧と診断された場合は、生活習慣の見直しと、必要に応じた降圧薬による治療を長期的に継続する方針が基本になります。どちらのタイプであっても、高血圧の基本で解説している降圧目標(診察室血圧130/80mmHg未満)を目指すという治療のゴール自体は共通しています。
なぜこの区別が重要なのか
本態性高血圧と二次性高血圧を区別することは、単なる分類上の話ではなく、実際の治療方針を大きく左右します。本態性高血圧であれば、生活習慣の改善と降圧薬による長期的な管理が治療の中心になりますが、二次性高血圧の場合、原因を放置したまま一般的な降圧薬による治療を続けても、血圧が思うように下がらなかったり、原因となっている病気そのものが進行してしまったりすることがあります。特に、複数の降圧薬を使ってもなかなか血圧が目標値に届かない「治療抵抗性高血圧」の背景には、見逃された二次性高血圧が隠れていることも少なくありません。血圧がなかなかコントロールできないと感じている場合は、自己判断で薬を増やすことだけを考えるのではなく、一度、二次性高血圧の可能性について主治医に相談してみることをおすすめします。
参考文献
監修
監修:鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
専門科目 救急・地域医療
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
SNSメディア
- Youtube Dr.鎌形の正しい医療ナビ https://www.youtube.com/@Dr.kamagata
- X(twitter) https://x.com/Hiro_MD_MBA
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