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本態性高血圧と二次性高血圧の違いとは?診断と治療法を徹底解説

本態性高血圧と二次性高血圧の違いとは?診断と治療法を徹底解説

はじめに

高血圧は 「本態性高血圧(一次性高血圧)」「二次性高血圧」 の2種類に分類されます。本態性高血圧は 遺伝や生活習慣 が関与し、高血圧患者の約90%を占めます。一方、二次性高血圧は 特定の疾患が原因 で発症するため、原因を特定し治療することで血圧を正常化できる可能性があります(JSH2019, ESC/ESH 2018)。

本記事では、両者の違い、診断基準、治療方法 を詳しく解説します。


1. 本態性高血圧とは?

(1) 定義と特徴

本態性高血圧(一次性高血圧) は、明確な病因が特定できず、遺伝的要因や生活習慣の影響 によって発症します。

特徴

  • 家族歴がある(遺伝的要因)
  • 生活習慣(食塩摂取量、運動不足、ストレス)が影響
  • 年齢とともに発症率が増加
  • 自覚症状がなく進行し、脳卒中・心筋梗塞リスクが高まる

(2) 発症メカニズム

主要因影響
交感神経過活動ストレスや睡眠不足により血圧が上昇
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の異常腎臓がナトリウム・水分を過剰に保持
血管内皮機能障害(NO産生低下)血管の収縮・拡張異常
肥満・インスリン抵抗性動脈硬化の進行

ポイント

  • 本態性高血圧は 生活習慣改善と薬物療法でコントロール可能
  • 早期の介入が重要(未治療のまま進行すると合併症リスク増)

2. 二次性高血圧とは?

(1) 定義と特徴

二次性高血圧 は、特定の疾患が原因で引き起こされる高血圧です。高血圧患者の約10% が該当し、原因疾患を治療することで血圧が正常化する可能性があります

疑うべきケース

  • 40歳未満での高血圧発症
  • 急激な血圧上昇
  • 降圧剤が効きにくい
  • カリウム異常、腎機能低下を伴う

(2) 主な原因疾患と診断法

疾患特徴診断のポイント
腎動脈狭窄症腎臓への血流低下腹部血管雑音, レノグラム, MRI
原発性アルドステロン症アルドステロン過剰分泌低カリウム血症, レニン/アルドステロン比
クッシング症候群コルチゾール過剰中心性肥満, ムーンフェイス, 24時間尿中コルチゾール
褐色細胞腫副腎カテコラミン過剰発作性高血圧, 血漿メタネフリン
甲状腺機能亢進症甲状腺ホルモン過剰頻脈, 体重減少, 甲状腺ホルモン検査
睡眠時無呼吸症候群(SAS)無呼吸による血圧上昇いびき, 日中の眠気, 終夜睡眠ポリグラフ

ポイント

  • 二次性高血圧を疑った場合、専門医の診断が必要
  • 適切な治療により、血圧が正常化する可能性がある

3. 診断の流れ

(1) 一次スクリーニング

  • 診察室血圧 & 家庭血圧測定
  • 尿検査(蛋白尿・ナトリウム排泄)
  • 血液検査(腎機能・ホルモン異常)
  • 心電図・心エコー(心肥大の有無)
  • 24時間血圧モニタリング(ABPM)

(2) 二次性高血圧が疑われる場合の追加検査

疑われる疾患検査
腎血管性高血圧腎動脈エコー・CT/MRI
原発性アルドステロン症レニン・アルドステロン比測定
クッシング症候群24時間尿中コルチゾール
褐色細胞腫カテコラミン・メタネフリン測定

ポイント

  • 夜間高血圧・仮面高血圧の評価が重要
  • 二次性高血圧は専門的な検査が必要

4. 治療方針

(1) 本態性高血圧の治療

クラス作用機序代表的な薬剤
カルシウム拮抗薬(CCB)血管平滑筋のCaチャネルを遮断し血管拡張アムロジピン(ノルバスク), ニフェジピン(アダラート), シルニジピン(アテレック), ベニジピン(コニール), アゼルニジピン(カルブロック)
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)アンジオテンシンⅡの受容体をブロックし血管収縮を抑制ロサルタン(ニューロタン), バルサルタン(ディオバン), オルメサルタン(オルメテック), カンデサルタン(ブロプレス), テルミサルタン(ミカルディス), アジルサルタン(アジルバ)
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)アンジオテンシンⅡの産生を抑え、血管拡張・ナトリウム排泄を促進エナラプリル(レニベース), リシノプリル(ゼストリル), ペリンドプリル(コバシル), イミダプリル(タナトリル), ラミプリル(トリテース)
利尿薬(サイアザイド系・ループ系・カリウム保持性)腎臓でナトリウム再吸収を抑制し体液量を減少ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド), インダパミド(ナトリックス), トリクロルメチアジド(フルイトラン), フロセミド(ラシックス, ループ利尿薬), スピロノラクトン(アルダクトンA, MR拮抗薬), エプレレノン(セララ, MR拮抗薬)
β遮断薬(βブロッカー)交感神経β受容体を遮断し心拍数・心収縮力を低下ビソプロロール(メインテート), メトプロロール(ロプレソール), アテノロール(テノーミン), カルベジロール(アーチスト, αβ遮断薬), ラベタロール(トランドール, αβ遮断薬)
α遮断薬(αブロッカー)血管平滑筋のα受容体を遮断し血管拡張ドキサゾシン(カドゥラ), プラゾシン(ミニプレス), テラゾシン(ハイトラシン)
MR拮抗薬(アルドステロン拮抗薬)アルドステロン受容体を遮断しナトリウム排泄を促進スピロノラクトン(アルダクトンA), エプレレノン(セララ)
ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)ARBとネプリライシン阻害薬の複合薬サクビトリル/バルサルタン(エンレスト)
直接的レニン阻害薬(DRI)レニンの活性を直接阻害しRAASを抑制アリスキレン(ラジレス)

✔ ポイント

  • カルシウム拮抗薬は、降圧効果が強く、第一選択薬としてよく用いられる
  • ARB・ACE阻害薬は、腎保護作用があり糖尿病や慢性腎臓病の患者に推奨
  • 利尿薬は、塩分感受性高血圧や高齢者に適応されるが、電解質異常に注意
  • β遮断薬は、心疾患合併例(心筋梗塞後・狭心症・心不全)に有効
  • MR拮抗薬(スピロノラクトン)は、治療抵抗性高血圧の第一選択
  • ARNI(エンレスト)は、特に心不全合併の高血圧患者に推奨される新規治療薬
  • 直接的レニン阻害薬(DRI)は、降圧効果は高いが使用機会は限定的

まとめ

高血圧は「本態性高血圧」と「二次性高血圧」に分類される
本態性高血圧は生活習慣改善と薬物療法で管理
二次性高血圧は原因疾患の治療が最優先
特に40歳未満の高血圧、急激な血圧上昇、薬が効かない場合は二次性高血圧を疑う


次回の記事:「高血圧と年齢の関係|若年性高血圧と加齢による変化」では、年齢による血圧変化の特徴と対策を解説します!

監修

鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

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