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高血圧の診断基準と測定方法|正しい血圧の測り方

高血圧の診断基準と測定方法|正しい血圧の測り方

はじめに

血圧は日々変動するため、1回の測定結果だけで高血圧と判断するのは不適切です。高血圧の正確な診断には、診察室血圧・家庭血圧・24時間血圧測定(ABPM) などの複数の測定方法を組み合わせることが推奨されています(JSH2019, ACC/AHA 2017)。
本記事では、高血圧の診断基準と正しい血圧測定方法について詳しく解説します。


1. 高血圧の診断基準

(1) 日本高血圧学会(JSH2019)による診断基準

測定方法高血圧の基準 (mmHg)
診察室血圧140/90 以上
家庭血圧135/85 以上
24時間血圧測定(ABPM)昼間 135/85 以上, 夜間 120/70 以上

(2) 国際的な診断基準の比較

ガイドライン診察室血圧家庭血圧24時間血圧
JSH2019(日本)140/90135/85135/85 (昼), 120/70 (夜)
ACC/AHA 2017(米国)130/80125/75130/80 (昼), 110/65 (夜)
ESC/ESH 2018(欧州)140/90135/85135/85 (昼), 120/70 (夜)

ポイント

  • 米国(ACC/AHA 2017)では130/80mmHg以上を高血圧と定義し、日本より厳格な基準を採用
  • 欧州(ESC/ESH 2018)は日本と同様の基準
  • 24時間血圧測定(ABPM)では夜間血圧の管理が重要

2. 診察室血圧 vs 家庭血圧 vs 24時間血圧(ABPM)

(1) 診察室血圧

  • 基準値:140/90 mmHg以上
  • メリット:短時間で測定可能、診療の指標となる
  • デメリット:「白衣高血圧」や「仮面高血圧」の見逃しリスクあり

(2) 家庭血圧

  • 基準値:135/85 mmHg以上
  • メリット
    • 診察室の影響を受けず、実際の血圧を反映
    • 白衣高血圧(診察時のみ血圧上昇)仮面高血圧(診察室では正常、家庭で高い) を発見できる
  • 測定方法
    • 朝と夜の決まった時間に測る
    • 朝:起床後1時間以内、排尿後、食事前
    • 夜:就寝前に測定
    • 座位で1-2分安静にした後、2回測定し平均値を記録

(3) 24時間血圧測定(ABPM)

  • 基準値:昼間135/85mmHg以上、夜間120/70mmHg以上
  • メリット
    • 1日の血圧変動を詳細に把握できる
    • 夜間高血圧(ノンディッパー・リバースディッパー) の発見が可能
  • 適応
    • 夜間高血圧や仮面高血圧が疑われる場合
    • 糖尿病・慢性腎臓病(CKD)などの高リスク患者
    • 降圧剤の効果を評価するため

ポイント

  • 家庭血圧測定は診断・治療の重要な指標
  • 24時間血圧測定(ABPM)は、夜間高血圧や変動パターンを把握できる

3. 正しい血圧の測り方

誤った測定方法では、実際よりも10~20mmHg高く出ることがある

(1) 測定前の準備

NG行動

  • 測定前 30分以内の喫煙・カフェイン摂取
  • 運動直後やストレス状態
  • 食後すぐの測定

適切な準備

  • 測定前5分間は安静にする
  • カフを心臓の高さにセット
  • 足を組まず、背もたれのある椅子に座る

(2) 腕の選び方

  • 両腕で測定し、高い方の値を基準とする
  • 片腕で10mmHg以上の差がある場合、血管狭窄などの異常が疑われる

ポイント

  • 正しい測定法を守ることで、より正確な血圧データを得ることができる

4. 最新の研究と今後の展望

(1) AIとデジタルヘルスの活用

  • スマートウォッチ型血圧計 の普及
  • AIを活用した個別化降圧治療 が進行中
  • 遠隔医療での血圧管理

(2) 新しい診断基準の研究

  • 夜間血圧の重要性 が再評価されている(JSH2022予定)
  • 仮面高血圧の治療適応 を明確にする研究が進行中

まとめ

高血圧は140/90mmHg以上(家庭血圧135/85mmHg以上)で診断される
診察室血圧だけでなく、家庭血圧・24時間血圧を活用することが推奨
正しい測定法を守らないと、誤った診断につながる可能性がある
AIやデジタルヘルスの進化により、より正確な血圧管理が可能になりつつある


参考文献

  1. 日本高血圧学会(JSH2019)「高血圧治療ガイドライン2019」
  2. American Heart Association (AHA) – Blood Pressure Measurement Guidelines
  3. European Society of Hypertension (ESC/ESH) 2018 Guidelines
  4. The SPRINT Research Group. “A Randomized Trial of Intensive vs. Standard Blood-Pressure Control.”

次回の記事:「高血圧のリスクとは?放置すると怖い合併症」では、高血圧を放置することで生じる重大なリスクについて解説します!

監修

鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

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