厚生労働省は2026年7月13日、「第1回 令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会」を開催した。2024年4月に始まった医師の時間外・休日労働の上限規制について、地域医療を確保するために設けられた暫定的な特例水準(年1860時間)を2035年度末までにどう解消していくかを、あらためて検証する場である。上限規制は法施行後3年ごとに見直すこととされており、施行から2年が経過した今回はその最初の本格的な点検にあたる。長時間労働が構造的に残りやすい診療科で働く医師や、これから専門を選ぶ研修医・専攻医にとって、自分のキャリアの前提が中期的にどう変わるのかを確認しておきたい。

何が動いたのか──令和8年度の検討会が始動

厚労省は今回の検討会で、議事次第や開催要綱に加え、「医師の働き方改革に係る現状等」「推進等に係る論点」といった資料を公表した。目的は、上限規制の施行後の勤務実態や各医療機関の取り組み状況を確認し、働き方改革をさらに前に進めるための論点を整理することにある。特例水準や、労働時間短縮に関する指針に基づく短縮目標ラインについては、法施行後3年ごとに必要な見直しを行うと定められており、今回はその規定に沿った検討の起点となる(出典:厚生労働省)。

特例水準(年1860時間)と2035年度末という期限

2024年4月から、医師にも時間外・休日労働の上限が適用されている。原則となるA水準は年960時間だが、地域医療の確保が必要な医療機関などに認められるB水準・連携B水準、研修医や専攻医の集中的な技能向上に対応するC水準では、年1860時間という高い上限が特例として認められている。この特例水準はあくまで暫定的な措置と位置づけられ、2035年度末までに解消することが目標とされている(出典:厚生労働省)。

つまり、救急や外科など長時間労働に依存してきた診療科でも、2036年度以降は原則としてA水準(年960時間)の枠組みへ移行していくことが想定されている。今回の検討会は、この長期目標に向けた進捗と課題を確認する意味を持つ。

実態はどこまで変わったか

厚労省が示した実態調査では、時間外労働が年換算で960時間以上に相当する病院常勤医の割合は15.0%と報告された(発表:2026年7月1日)。上限規制の施行後、全体としては長時間労働が縮小する方向にある一方で、外科や救急など特定の診療科では依然として高い水準が残ると指摘されている。検討会では、タスクシフト・タスクシェア、宿日直許可の運用、副業・兼業を行う場合の労働時間の通算といった実務的な論点も、引き続き議論の対象となっている。

キャリアへの示唆

第一に、診療科選択の観点である。特例水準に依存してきた診療科では、2035年度末に向けて勤務体制の再設計が段階的に進む可能性がある。志望する診療科の働き方が中期的にどう変わりうるかは、専門を決めるうえでの判断材料の一つになりうる。

第二に、研修医・専攻医の視点である。C水準は集中的な技能向上のための枠組みだが、その運用も見直しの検討対象に含まれる。研修プログラムの組み方や勤務環境が今後どう調整されるかは、専攻医のうちに情報を追っておく価値がある。

第三に、働き方の選択肢である。副業・兼業の労働時間通算や宿日直許可の扱いは、非常勤勤務やスポット勤務を組み合わせる医師の働き方に関わる。制度の運用がどう整理されるかによって、勤務先の組み合わせ方や時間管理の前提が変わる場合がある。いずれも現時点では検討段階であり、確定した変更ではない点に留意したい。

まとめ

今回の検討会は、特例水準の2035年度末解消という長期目標に向けた最初の本格的な点検の場である。上限規制そのものが直ちに変わるわけではないが、3年ごとの見直しという仕組みのなかで、勤務医の働き方の前提は段階的に調整されていく。診療科選択やキャリア設計を考えるうえで、厚労省の一次資料を折に触れて確認しておくことをおすすめしたい。

出典

  • 厚生労働省「第1回 令和8年度医師の働き方改革の推進等に関する検討会」資料(2026年7月13日開催) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74139.html
  • 厚生労働省「医師の働き方改革」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata_34355.html
  • 医師の時間外労働時間の上限(A・B・C水準)について(日本産婦人科医会) https://www.jaog.or.jp/work-style-reform/work-style-reform/detail02/

免責

本記事は公表された制度情報の解説であり、特定の診療科・勤務先・サービスを推奨するものではありません。制度の内容・数値・施行時期は今後の検討や制度改正により変わる可能性があります。個別のキャリア判断にあたっては、厚生労働省などの一次情報で最新の内容を確認のうえ、ご自身の状況に応じてご検討ください。

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