※2026年7月時点の情報です。制度・スコア要件は変更される可能性があるため、出願前に必ずECFMG・USMLE公式で最新情報をご確認ください。
「いつかアメリカで臨床をしてみたいが、USMLEは何から手をつければいいのか分からない」——そう感じている医学生・若手医師は少なくありません。結論から言うと、USMLE(United States Medical Licensing Examination)とは、米国で医師として臨床研修(レジデンシー)を行うために必要な医師免許試験のことで、日本人医師の場合は「Step 1・Step 2 CK合格→ECFMG認証取得→レジデンシーマッチング」という順に進むのが基本ルートです。本記事では、厚生労働省が所管する国内制度ではなく米国のNRMP(全米研修マッチングプログラム)やECFMG(外国医学部卒業生教育委員会)の公式情報をもとに、2026年時点での試験構成・英語要件・ビザ・準備期間を、現場の視点を交えて整理します。
この記事の要点
- USMLEはStep 1・Step 2 CK・Step 3の3段階で、レジデンシー出願に必須なのはStep 1とStep 2 CKの合格です。
- Step 1は2022年1月から合否のみ(pass/fail)の判定になり、点数競争はStep 2 CKに移りました。
- 実技試験のStep 2 CSは2021年に廃止され、代わりにECFMGの「Pathways」+英語試験OET Medicineで臨床・コミュニケーション能力を証明します。
- 2025年マッチでは米国市民でないIMG(外国医学部卒)のPGY-1マッチ率は58%で、狭き門である一方、毎年一定数の日本人医師が合格しています(出典: NRMP)。
- 多くの日本人はECFMGがスポンサーするJ-1ビザで研修に入りますが、帰国義務などH-1Bとの違いを早期に理解しておく必要があります。
USMLEのロードマップ、結論はこう
日本人医師が米国臨床研修を目指す場合、越えるべき関門は大きく「試験(USMLE)」「資格認証(ECFMG Certification)」「就職活動(マッチング)」の3層に分かれます。試験に受かるだけでは研修は始められず、認証とマッチングまで到達して初めてスタートラインに立てる、という全体像をまず押さえることが重要です。
USMLEとは何か(定義・前提)
USMLEとは、米国で医師として診療するために必要な医師免許試験のことです。日本の医師国家試験とは別物で、日本の医師免許を持っていても、米国で臨床研修を行うにはUSMLEの受験とECFMG認証が必要になります。前提として、受験資格には「世界医学校名簿(World Directory of Medical Schools)」に登録され、ECFMGの要件を満たすと注記された医学部の卒業生・在学生であることが求められます。日本の多くの医学部はこの名簿に掲載されていますが、自分の卒業年度が対象年度に含まれるかを出願前に確認しておくと安心です。
試験・認証・マッチングの全体像
| ステップ | 内容 | 評価方式 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| Step 1 | 基礎医学(解剖・生理・薬理・病理など) | 合否のみ(2022年1月〜) | 受験必須 |
| Step 2 CK | 臨床医学の知識 | 3桁スコア | 受験必須・点数が重視される |
| OET Medicine | 医療英語(聞く・読む・話す・書く) | サブテストごとの基準点 | Pathwaysの一部として必須 |
| ECFMG認証 | 上記+出身校確認を統合した資格証明 | 要件充足で発行 | マッチング出願に必須 |
| Step 3 | 診療現場を想定した総合問題 | 3桁スコア | 研修中〜研修後(H-1Bでは早めに必要) |
各試験の中身と最新の制度変更
結論として、近年の最大の変化は「Step 1のpass/fail化」と「Step 2 CS(実技)の廃止」の2点です。この2つを知らないまま古い情報で準備を始めると、対策の重点を置く場所を誤ります。
Step 1:合否化で「足切り」から「土台」へ
Step 1は基礎医学を問う試験で、2022年1月からスコア表示が廃止され合否のみの判定になりました(出典: USMLE)。かつては高得点がそのまま出願上の強みになりましたが、現在は「確実に合格する」ことが目標です。その分、プログラム側が応募者を数値で比較する軸はStep 2 CKへ移っており、点数競争の重心が後ろにずれた形です。
Step 2 CK:スコアが合否を左右する最重要関門
Step 2 CKは臨床医学の知識を問う試験で、3桁スコアで評価されます。Step 1が合否化された現在、IMGにとってはここでのスコアが書類選考(面接に呼ばれるか)を大きく左右します。人気の高い科や競争率の高いプログラムを狙う場合ほど、高いスコアが実質的な条件となる傾向があります。準備時間は個人差が大きいものの、基礎学力と英語力次第で数百時間規模の学習が必要とされることが一般的です。
Step 2 CS廃止とPathways+OET
従来あった実技試験のStep 2 CSは、2020年に中止され2021年1月に正式に廃止されました(出典: USMLE/ECFMG)。現在は、ECFMGが定める「Pathways」という枠組みの中で臨床技能・コミュニケーション能力を証明します。すべてのPathways出願者は、母国語や医学部の授業言語にかかわらず、医療英語試験OET Medicineで基準点を満たす必要があります。OET Medicineの基準は、聞く・読む・話すの各サブテストで350点以上、書くで300点以上を1回の受験でそろえることとされています(出典: ECFMG)。日本人にとっては、英語試験が事実上の必須関門になった点が重要です。
マッチングまでの手順とキャリアパス
結論として、ECFMG認証を取得したうえでNRMP(全米研修マッチングプログラム)を通じてプログラムに応募し、面接を経てランキング登録し、マッチ結果を待つ、という流れになります。以下に標準的な手順を示します。
ステップで見る全体の流れ
- 世界医学校名簿で自校・卒業年度の受験資格を確認し、ECFMGに登録する。
- Step 1に合格する(合否のみ)。
- Step 2 CKで可能な限り高いスコアを取る。
- OET Medicineで基準点をそろえ、Pathwaysの要件を満たす。
- ECFMG認証を取得する。
- ERAS(出願システム)を通じて各プログラムに応募し、面接を受ける。
- NRMPにランキングを登録し、マッチ結果を待つ。
米国での臨床経験(USCE)や推薦状、リサーチ経験などが選考で重視されるため、試験対策と並行して現地の臨床見学(オブザーバーシップ等)の機会を早めに探すことが、現場では合否を分ける要素とされています。
マッチングの難易度(データで見る)
2025年のメインマッチでは、米国市民でないIMGのPGY-1マッチ率は58%、アクティブ応募者の最終的な充足率は60.3%でした(出典: NRMP 2025 Main Residency Match)。応募者数自体も前年比14.4%増と過去最大規模になっており、競争は緩んでいません。数字だけを見れば狭き門ですが、裏を返せば毎年4割以上が実際にマッチしており、準備を積み重ねた日本人医師が合格している事実も変わりません。
ビザ:J-1とH-1Bの違い
研修に入る際のビザは主にJ-1とH-1Bの2種類です。J-1はECFMGがスポンサーとなる交流訪問者ビザで、多くのプログラムが対応しているため日本人が使う最も一般的なルートですが、研修修了後に原則2年間の母国滞在義務(ホームレジデンシー要件)が課される点に注意が必要です。一方H-1Bは研修先が雇用主としてスポンサーする就労ビザで、就労・グリーンカード取得と両立しやすい「dual intent」が認められる反面、発給前にStep 3合格を求められることが多く、対応するプログラムが限られます。将来的に米国残留を視野に入れるかどうかで、早い段階からビザ戦略を考えておくとよいでしょう。
向いている人・向いていない人
USMLEルートは、数年単位の長期戦を計画的に進められる人、医療英語の学習を継続できる人、研究や海外臨床見学など機会を自分から取りにいける人に向いています。一方で、短期間での結果を求める人や、家庭・経済面で長期の準備期間を確保しにくい状況にある人にとっては、負担が大きくなりやすい選択です。どちらが良し悪しということではなく、自分のライフプランと照らして現実的な時間軸を引けるかが判断の分かれ目になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本の医師免許があればUSMLEは免除されますか?
免除されません。日本の医師免許と米国のライセンスは別制度で、米国で臨床研修を行うにはUSMLEの受験とECFMG認証が必要です。日本での臨床経験は選考上の強みにはなりますが、試験そのものを代替するものではありません。
Q2. Step 1が合否だけになったなら簡単になったのですか?
難易度が下がったわけではありません。合否化で「高得点で目立つ」戦略が使えなくなった分、比較の重心がStep 2 CKのスコアに移りました。結果として、Step 2 CKでの高得点の重要性はむしろ増したと理解しておくとよいでしょう。
Q3. 実技試験(Step 2 CS)は今もあるのですか?
ありません。Step 2 CSは2021年1月に廃止されました。現在は臨床・コミュニケーション能力を、ECFMGのPathwaysと医療英語試験OET Medicineの合格で証明します。母国語や授業言語に関係なく、全員がOETの基準を満たす必要があります。
Q4. 準備にはどれくらいの期間が必要ですか?
個人差が非常に大きく、一概には言えません。基礎学力・英語力・学習に割ける時間によって数百時間規模の学習が必要とされ、社会人医師が働きながら進める場合は数年計画になることも珍しくありません。まずはStep 2 CKまでの到達時期から逆算して計画を立てるのが現実的です。
まとめ
- ルートは「Step 1・Step 2 CK合格→ECFMG認証→マッチング」の3層構造。
- 制度変更の要点はStep 1のpass/fail化とStep 2 CS廃止(→Pathways+OET)。
- ビザ(J-1/H-1B)の違いを含め、数年単位の計画で臨むことが鍵。
USMLEと米国臨床研修は、情報の新しさと計画性が結果を大きく左右する分野です。株式会社ENでは、医師のキャリア相談、転職先の個別探索、アルバイトのご紹介、開業支援、M&A支援などを行っております。海外を含めた中長期のキャリア設計について相談したい方は、Med-Pro Doctorsをご覧ください。
出典一覧
- USMLE 公式「Work to relaunch USMLE Step 2 CS discontinued」 https://www.usmle.org/work-relaunch-usmle-step-2-cs-discontinued
- ECFMG「Requirements for 2027 Pathways」/「Assessment of Communication Skills(OET)」 https://www.ecfmg.org/certification-pathways/
- ECFMG Certification(受験資格・要件) https://www.ecfmg.org/certification/eligibility-for-examination.html
- NRMP「2025 Main Residency Match Results and Data」 https://www.nrmp.org/about/news/2025/05/nrmp-releases-2025-main-residency-match-results-and-data-report-providing-in-depth-insight-into-the-largest-residency-match-in-history/
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監修・著者
鎌形 博展(かまがた・ひろのぶ)
医師/株式会社EN 代表取締役/医療法人社団季邦会 理事長/東京医科大学病院 救急・災害医学講座 非常勤医師
救急・災害医療の現場で臨床経験を積んだ後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)にて経営学を修める。認知症予防や感染症診断デバイスのスタートアップ経営を経て、現在は東京・神奈川で複数のクリニックを運営する医療法人社団季邦会の理事長を務めるほか、医療業界の構造的な人材課題の解決を目指し株式会社ENを創業。医師紹介プラットフォーム「Med-Pro Doctors」、開業支援コミュニティ「クリニック開業ラボ」、医療機関M&Aアドバイザリーを展開する。現在も東京医科大学病院にて救急・災害医学の臨床に携わる。社会医学系専門医指導医。臨床医・経営者・採用側の三つの視点から、医師のキャリア形成についての実践的な情報を発信している。






