本記事について
特定の医療機関を推薦する記事ではありません。また、お子さんの症状について「何科にかかるべきか」を判断する記事でもありません。 「小児科の対象年齢」が制度上どう決められている(あるいは決められていない)のか、実際にはどこで線が引かれているのかという、受診行動のしくみの説明にとどめています。
診療科名の根拠は医療法施行令、年齢の区切りは令和8年度の医科診療報酬点数表(厚生労働省告示)とその実施上の留意事項通知、小児科の対象年齢と移行期医療の考え方は日本小児科学会の公表資料を出典にしています(末尾に一覧)。
はじめに
子どもが中学生になり、熱を出して「いつもの小児科でいいのだろうか」と迷う。待合室に並んでいるのが自分よりずっと小さな子ばかりで、本人が気まずそうにしている。あるいは高校生になり、そろそろ内科に移ったほうがいいのか、それとも今の先生に診てもらい続けていいのか分からない——外来でも、保護者の方からよく聞く迷いです。
インターネットで調べると「小児科は15歳まで」と書かれていたり、「中学生まで」と書かれていたり、「20歳まで」と書かれていたりして、かえって分からなくなります。実は、書いてあることがばらばらなのには理由があります。
法令には「小児科は何歳まで」という定めがありません。 日本小児科学会は2006年(平成18年)4月に、小児科が診療する対象年齢を「中学生まで」から「成人するまで」に引き上げることを決めており、15〜20歳の方の相談も受け付けるとしています。ただし、実際に何歳まで診るかは医療機関ごとの方針で決まっているため、迷ったらその院の案内を確認するのが確実です。
実際に探すときは
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政令が決めているのは「小児科」という名前であって、年齢ではない
医療機関が「小児科」と掲げる(標榜する)ことができるのは、医療法施行令第3条の2が、広告できる診療科名のひとつとして「小児科」を挙げているからです。同じ条文は、内科・外科に「男性、女性、小児若しくは老人又は患者の性別若しくは年齢を示す名称」を組み合わせた診療科名(たとえば「小児眼科」)も認めています。
しかし、この政令が定めているのは診療科の名称であって、その科が何歳の患者を診るかではありません。 「小児科」という名前を掲げてよいという規定はあっても、「小児科は◯歳未満を対象とする」という規定は置かれていないのです。
診療科の標榜は、各医療機関が地方厚生局や保健所に届け出た範囲で行われます。何歳まで診るかは、その医療機関が自院の体制に応じて決めていることになります。「小児科は何歳まで」の答えが調べても一定しないのは、そもそも全国一律に決めた人がいないからです。
「子ども」として扱う年齢の線は、目的ごとに違う
では、制度が年齢をまったく使っていないかというと、そうではありません。医療費の計算に使う診療報酬(点数表)には、年齢による区切りがいくつも出てきます。ただし、その線は目的ごとに違う場所に引かれています。
令和8年度の医科診療報酬点数表と留意事項通知から、小児に関係する主な区切りを並べると、次のようになります。
| 年齢の区切り | 主な項目 |
|---|---|
| 6歳未満 | 初診料・再診料の乳幼児加算(初診75点・再診38点)/小児科外来診療料(6歳未満のすべての者が対象)/小児かかりつけ診療料(未就学児が対象。6歳以上は、6歳未満から算定している場合に限る) |
| 6歳以上15歳未満 | 救急医療管理加算の小児加算(緊急入院を要する重症患者に7日を限度。6歳未満は乳幼児加算) |
| 15歳未満 | 小児科療養指導料(慢性疾患で生活指導が特に必要なものを主病とする15歳未満の外来患者)/小児特定集中治療室管理料 |
| 20歳未満 | 小児運動器疾患指導管理料(運動器疾患を有する20歳未満)/通院・在宅精神療法や心身医学療法の年齢に応じた加算/小児特定集中治療室管理料(小児慢性特定疾病医療支援の対象である場合) |
注目してほしいのは、いちばん下の行です。 集中治療室の管理料は原則15歳未満が対象ですが、小児慢性特定疾病医療支援の対象である場合は20歳未満まで小児として扱われます。運動器の指導管理料も20歳未満です。つまり制度は、「何歳から大人か」を一本の線では決めていません。乳幼児期に手厚くする目的なら6歳、小児の慢性疾患を継続してみる目的なら15歳や20歳、というように、目的ごとに別の線を引いています。
「小児科は15歳まで」という説明をよく見かけるのは、この15歳の線(小児科療養指導料など)や、後で触れる自治体の小児救急の対象年齢が広く知られているからだと思われます。それは診療報酬や自治体事業の区切りであって、小児科を受診できる年齢の上限ではありません。
日本小児科学会は2006年に「成人するまで」に引き上げている
小児科の側は、対象年齢についてどう考えているのでしょうか。
日本小児科学会は、小児科が診療する対象年齢を「中学生まで」から「成人するまで」に引き上げることを平成18年(2006年)4月に決定し、その運動を全国的に展開するとしています。学会の案内は、それまで小児科に通っていた15〜20歳の方はもちろん、これまで小児科に通っていなかった15〜20歳の方も、気軽に小児科医に相談してほしいと呼びかけています。
背景には、思春期から若年成人期にかけての体と心の問題を、成長の過程を知っている医師が続けてみることに意味がある、という考え方があります。医療の進歩によって、小児期に発症した慢性疾患を持つ患者が成人期を迎えるようになったことも、この時期の医療をどう続けるかという課題を大きくしました。
ただし、これは学会としての方針であって、個々の医療機関を拘束するものではありません。 学会が「成人するまで」と言っていることと、近所の小児科が実際に何歳まで診ているかは、別に確認が必要です。
実際に何歳まで診るかは、医療機関ごとに違う
当サイトが各エリアの小児科の記事をつくる過程で公式サイトを確認していると、方針が院によってはっきり分かれることが分かります。
- 「新生児から中学生まで」「15歳以下のみ」と対象年齢を明記し、大人の診察は行わないとしている院
- 大人の内科などを併設し、家族全員を同じ院で診る形にしている院
- 年齢の上限を明記せず、継続して診てきた患者は年齢が上がっても診るという運用をしている院
どれが良い悪いではなく、その院が何を得意にしているかの表れです。予防接種や乳児健診に手厚い体制を組んでいる院は乳幼児中心の設計になりやすく、内科を併設する院は年齢の幅が広くなりやすい、という傾向はあります。
確認する場所は、公式サイトの「診療案内」「対象年齢」の記載か、受付への電話です。 初めてかかる院で、お子さんが中学生以上の場合は、受診前に確認しておくと確実です。
なお、自治体が休日や夜間に開く小児初期救急(準夜間診療室など)は、「15歳以下」「中学生まで」で対象を区切っていることが多いという別の事情があります。こちらは自治体の事業として対象を定めているもので、その年齢を超える場合は一般の救急医療機関が受け皿になります。夜間・休日の行き先については夜間や休日に具合が悪くなったら、どこへ行けばいい?で解説しています。
よくある誤解
「中学生になったら、もう小児科には行けない」——行けます。
法令にも学会の方針にも、そのような制限はありません。むしろ学会は15〜20歳の相談を受け付けると明言しています。ただし院ごとの方針はあるので、確認は必要です。
「大きくなったら内科に移るのが正しい」——持病がある場合は、自己判断で移らないでください。
小児期に発症した病気を小児科で継続してみてもらっている場合、成人の診療科へ移る時期は、病気の種類や状態、本人の生活の状況によって個別に決めるべきものとされています(次章)。「何歳になったから」という理由だけで移る話ではありません。
「子ども医療費の助成が終わったら、小児科も終わり」——別の制度の話です。
医療費の助成は自治体の制度です。東京都の場合、乳幼児医療費助成(マル乳)が義務教育就学前まで、義務教育就学児医療費助成(マル子)が中学生まで、高校生等医療費助成(マル青)が18歳に達する日以後の最初の3月31日まで、と年齢で区切られています(助成の範囲や窓口負担の扱いは区市町村によって異なります)。これは費用の助成の話であって、どの科にかかれるかとは関係がありません。
「小児科は風邪などの急な病気を診るところ」——それだけではありません。
診療報酬にも、小児の慢性疾患の生活指導(小児科療養指導料)、心身症や情緒の問題へのカウンセリング(小児特定疾患カウンセリング料)、運動器疾患の指導管理(小児運動器疾患指導管理料)といった項目が置かれています。思春期の心身の不調や、発達に関する相談も、小児科が扱ってきた領域です。
持病があって小児科に通っている場合は、「移行」という別の話になる
小児期に発症した慢性疾患があり、小児科で継続的にみてもらっている場合、大人の診療科へ移ることは「移行期医療」「成人移行支援」として、医療の側で計画的に扱うべきものとされています。
日本小児科学会が2023年に公表した提言は、成人移行支援を「小児期発症の慢性疾患を持つ患者が成人期を迎えるにあたり、本来の持てる能力や機能を最大限に発揮でき、その人らしい生活を送れることを目的とした支援」と定義したうえで、20項目の提言をまとめています。読者に関係が深いのは、次のような点です。
- 移行の準備は10代の早期から始める。 患者本人の健康管理の自立に向けて、個々の能力に応じた移行プログラムを進めるとしています
- 転科の時期は個別化する。 病気の種類、重症度、移る先の診療科の状況、患者・家族の社会的な状況などによって決めるべきものとされています
- 病状や心理状況が不安定な時期の転科は避けるべきとされています
- 携帯できる医療サマリーを患者と一緒に作る。 移った後も継続して使えるようにするとしています
- 救急や入院が必要になった場合の対応を、連携先の連絡先も含めてあらかじめ明確にしておく必要があるとしています
つまり、「何歳になったから内科へ」という切り替えではなく、本人が自分の病気を説明し、自分で管理できるようになっていく過程そのものが移行だ、というのが学会の整理です。
行政の側にも受け皿があります。都道府県には移行期医療支援センターの設置が進められており、東京都の場合は東京都立小児総合医療センター(府中市武蔵台2-8-29)内に東京都移行期医療支援センターが置かれ、小児診療科と成人診療科の間の連携支援のほか、患者本人からの相談も受け付けています。
こう考えて選ぶとよい
年齢そのものより、次の4つで考えると迷いにくくなります。
- 一時的な症状か、続いている病気か。 発熱や腹痛のような一時的な症状であれば、年齢が上がっても小児科でも内科でも受けられます。判断が必要なのは、継続してみてもらっている病気があるときです
- その院が何歳まで診ると書いているか。 初めてかかる院で、お子さんが中学生以上なら、公式サイトの診療案内か受付への電話で先に確認します
- 移るなら、まず今の主治医に相談する。 転科の時期は病状や本人の状況によって決めるものとされています。移りたい理由(本人が小児科の待合室を居心地悪く感じている、通いにくい、など)も含めて、率直に相談してください。次の医療機関へは紹介状(診療情報提供書)で情報が引き継がれます(紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?)
- 本人が自分で説明できる材料を持たせる。 学会の提言も、携帯できる医療サマリーを本人と作ることを挙げています。日常的には、お薬手帳を本人が持ち、自分で出せるようにしておくのが第一歩になります(お薬手帳って、本当に必要?)
大人になってからのかかりつけを新しく探す段階に入ったら、「かかりつけ医」を持つと何がいいの?もあわせてご覧ください。
監修者からのひとこと
外来で「もう中学生なので、小児科は卒業ですよね」と保護者の方から聞かれることがよくあります。制度上そういう決まりがあるわけではないので、いつも「決まりではないですよ」とお答えしています。
ただ、本人が待合室で居心地の悪そうな顔をしているのも事実で、そこは無視できません。私は、年齢ではなく「本人が自分の症状を自分の言葉で説明できるようになったか」を目安にしています。それができるようになった子は、大人の科に移ってもきちんと自分の医療を続けられます。
持病があるお子さんの場合は、移る時期を急がないでください。落ち着いているときに準備して、落ち着いているときに移るのが、いちばん失敗が少ないやり方です。
よくある質問
Q. 「小児科は15歳まで」と決まっているのですか。
A. 決まっていません。医療法施行令は広告できる診療科名として「小児科」を挙げていますが、その対象年齢は定めていません。15歳という数字は、小児科療養指導料(慢性疾患で生活指導が特に必要な15歳未満の患者が対象)のような診療報酬上の区切りや、自治体の小児初期救急の対象年齢としてよく使われているものです。診療報酬には6歳未満・15歳未満・20歳未満と目的の異なる複数の区切りがあり、「何歳から大人か」を一本で決めた制度はありません。
Q. 中学生・高校生が小児科にかかっても構いませんか。
A. 構いません。日本小児科学会は平成18年(2006年)4月に、小児科が診療する対象年齢を「中学生まで」から「成人するまで」に引き上げることを決定しており、これまで小児科に通っていなかった15〜20歳の方も気軽に相談してほしいと案内しています。ただし、何歳まで診るかは医療機関ごとの方針によりますので、初めてかかる院では事前に確認してください。
Q. 大人と同じ内科に移ったほうがよいのは、どんなときですか。
A. 一時的な症状であれば、年齢が上がればどちらでも受けられます。判断が必要なのは、小児期に発症した病気を継続してみてもらっている場合です。日本小児科学会の2023年の提言は、転科の時期は病気の種類・重症度・移る先の診療科の状況・患者や家族の社会的状況などにより個別化すべきであり、病状や心理状況が不安定な時期の転科は避けるべきだとしています。まず今の主治医に相談してください。
Q. 移るときは、何を持っていけばよいですか。
A. 紹介状(診療情報提供書)が基本です。今の主治医から次の医療機関へ、経過や検査結果、治療内容が引き継がれます。あわせて、学会の提言は患者が自分で管理しやすい携帯可能な医療サマリーを患者と作成し、転科後も継続して使うことを挙げています。日常的にはお薬手帳を本人が持ち、自分で提示できるようにしておくと役に立ちます。
Q. 持病があって20歳を過ぎましたが、どこに相談すればよいか分かりません。
A. 都道府県に置かれている移行期医療支援センターが相談先のひとつです。東京都では東京都立小児総合医療センター(府中市武蔵台2-8-29)内に東京都移行期医療支援センターが設置され、医療機関からの相談だけでなく、患者本人からの相談も受け付けています。まずは今かかっている医療機関に相談したうえで、こうした窓口も併せて利用できます。
Q. 子どもの医療費の助成は、何歳まで受けられますか。
A. 自治体の制度なので、お住まいの区市町村によって異なります。東京都の場合、乳幼児医療費助成(マル乳)が義務教育就学前まで、義務教育就学児医療費助成(マル子)が15歳に達する日以後の最初の3月31日まで、高校生等医療費助成(マル青)が18歳に達する日以後の最初の3月31日までとされています。助成の範囲や窓口での負担の有無は区市町村によって異なります。なお、これは費用の助成であり、小児科にかかれる年齢とは別の話です。
Q. 夜間や休日に子どもが具合を悪くしたときの受診先も、年齢で変わりますか。
A. 変わることがあります。自治体が開く小児初期救急(準夜間診療室など)は「15歳以下」「中学生まで」で対象を区切っていることが多く、その年齢を超える場合は一般の救急医療機関が受け皿になります。詳しくは夜間や休日に具合が悪くなったら、どこへ行けばいい?をご覧ください。
出典・参考文献
- 医療法施行令(昭和23年政令第326号)第3条の2(e-Gov法令検索)(広告することができる診療科名として「小児科」を掲げる規定/「小児若しくは老人又は患者の性別若しくは年齢を示す名称」との組み合わせ)
- 日本小児科学会「小児科医は子ども達が成人するまで見守ります」(対象年齢を「中学生まで」から「成人するまで」に引き上げる決定/平成18年4月/15〜20歳の方への案内)
- 日本小児科学会「小児期発症慢性疾患を有する患者の成人移行支援を推進するための提言」(日本小児科学会雑誌127巻1号・2023年)(成人移行支援の定義/移行準備は10代早期から/転科の時期の個別化/医療サマリー/救急・入院時の対応)
- 厚生労働省「別表第一 医科診療報酬点数表」(令和8年度診療報酬改定・令和8年厚生労働省告示第69号)(初診料・再診料の乳幼児加算/小児科療養指導料〈15歳未満〉/小児運動器疾患指導管理料〈20歳未満〉/小児特定集中治療室管理料〈15歳未満、小児慢性特定疾病医療支援の対象は20歳未満〉/小児特定疾患カウンセリング料)
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1 医科診療報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日保医発0305第6号)(小児科外来診療料は6歳未満のすべての者が対象/小児かかりつけ診療料は未就学児が対象/救命救急入院料の小児加算は6歳以上15歳未満)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知の一覧/令和8年4月1日施行)
- 東京都福祉局「成人期医療への移行支援(移行期医療支援体制整備事業)」(東京都移行期医療支援センターの設置場所と役割/患者からの相談受付)
- 東京都福祉局「乳幼児医療費助成制度(マル乳)」
- 東京都福祉局「義務教育就学児医療費の助成(マル子)」
- 東京都福祉局「高校生等医療費の助成(マル青)」(15歳に達する日の翌日以後の最初の4月1日から18歳に達する日以後の最初の3月31日まで/助成範囲は区市町村により異なる)
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