本記事について
特定の医療機関を推薦する記事ではありません。また、あなたの検査値が何を意味するかを判断する記事でもありません。 健診の判定区分が制度上どう決められていて、どこへ持っていき、費用はどう扱われるのかという、受診行動の説明にとどめています。
判定区分は日本人間ドック・予防医療学会の判定区分表(2026年4月1日改定)、判定値と受診勧奨の考え方は厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」を出典にしています(末尾に一覧)。
はじめに
健診の結果が郵送で届いて、いくつかの項目に「C」や「D」の印が付いている。「要再検査」「要精密検査」「経過観察」——書かれている言葉は分かるのですが、では明日どこへ行けばいいのかが書かれていないことがよくあります。会社の健診なら「かかりつけの医療機関を受診してください」と一行あるだけ、ということも珍しくありません。
そのまま封筒を引き出しに入れて、次の健診でまた同じ項目に印が付く——これは外来でとてもよく見る流れです。本記事は、判定の言葉が制度としてどう決められているか、そしてどこへ持っていけばよいかを整理します。
「要再検査」は同じ検査をもう一度受けて数値を確かめること、「要精密検査」は別の検査で原因を調べることで、やることが違います。 どちらも、まずは健診結果の紙を持ってかかりつけの医療機関へというのが公的な資料の示す流れです。健診そのものは健康保険の対象外ですが、そこで見つかった疾患に対する診療は保険診療として行われます。
判定区分のA〜Eは何を表しているか
健診結果に付いている記号は、多くの健診機関が日本人間ドック・予防医療学会の判定区分にそろえています。2026年4月1日改定の判定区分表では、次の5段階です。
| 判定 | 区分名 |
|---|---|
| A | 異常なし |
| B | 軽度異常 |
| C | 要再検査・生活改善 |
| D | 要精密検査・治療 |
| E | 治療中 |
ここで大事なのは、この記号が「病気の重さ」ではなく「次に何をするか」を表しているという点です。Eが一番悪いという意味ではなく、Eは「すでに薬などで治療を受けている項目」を指します。
学会は、Cの表現について「Xか月後など再検査時期を明記し、受診者行動を明確に指示する」こと、そして「経過観察、定期的検査、症状あれば受診、などの不明瞭な記載は行わない」ことを求めています。つまり、「経過観察」だけで終わっている結果票は、学会が避けるよう求めている書き方にあたります。いつ・何をすればよいかが読み取れない結果票を受け取ったときは、健診機関に問い合わせてよいということです。
「要再検査」と「要精密検査」は、やることが違う
要再検査(C)は、同じ検査をもう一度受けて数値を確かめることです。血液検査の値は、その日の食事・睡眠・体調で動きます。1回の数値だけでは判断できないので、期間を置いて測り直します。学会の判定区分表は、血圧については健診機関での再検査よりも家庭での血圧測定を推奨すると注記しています。
要精密検査(D)は、別の検査を足して原因を調べることです。学会は、精密検査を行うか治療を行うかは「紹介先が決定することになる」として、DにあたるものをD1・D2に分けず一つにまとめています。値の高さや所見によって「要精密検査」「要治療」を使い分けてもよい、という整理です。
つまりDは、「どんな検査をするか」も「治療が必要か」も、まだ決まっていない段階です。 決めるのは結果票ではなく、紙を持っていった先の医師ということになります。
厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」も、判定値を2段階に分けています。血圧を例にとると、保健指導判定値が収縮期130mmHg以上・拡張期85mmHg以上、受診勧奨判定値が収縮期140mmHg以上・拡張期90mmHg以上です。そして受診勧奨のレベルの中でも、フィードバックの文例は次のように行動を分けています。
- 収縮期160mmHg以上または拡張期100mmHg以上——「この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください」
- 収縮期140〜159mmHgまたは拡張期90〜99mmHg——生活習慣を改善する努力をしたうえで、医療機関の受診を
同じ「基準を超えている」でも、急ぐ度合いが制度上分けられているわけです。結果票のCとDの違いも、おおむねこの線引きに対応しています。
「要精密検査」は、病気が見つかったという意味ではない
D判定を受け取ると、「何か見つかったのだろう」と受け取る方が多くいます。制度の設計はそうなっていません。
学会の判定区分表は、「判定区分は、初回受診時の拠り所とするものです」と明記し、要精密検査・治療(判定D)と判定した例で、精密検査の結果、異常となる原因が明確なものがなかった、生まれつきのものであった、陰影の大きさが変わらないなどの結果が得られた場合は、その内容によって判定Cなどに変更することが適切だとしています。Dは「調べる必要がある」という意味であって、「病気である」という意味ではありません。
がん検診では、この関係が数字で公表されています。国が示すがん検診のプロセス指標では、要精検となった人のうちがんが発見された人の割合(陽性反応適中度)の許容値が、胃1.0%以上、大腸1.9%以上、肺1.3%以上、乳房2.5%以上、子宮頸部4.0%以上と設定されています。「要精検」となった人の大多数は、精密検査でがんが見つかりません——それが公的な基準値の前提です。
一方で、精密検査を受けた人の割合(精検受診率)は許容値70%以上・目標値90%以上とされ、国立がん研究センターは「本来は100%を目指すべき指標」だと説明しています。行かないままの人が現実に一定数いることが、この指標の存在自体から読み取れます。
どこへ持っていくか——結果票を持って、かかりつけへ
厚生労働省のフィードバック文例が「この健診結果を持って」と書いているのが、実務上いちばん大事な点です。行き先の候補は主に3つあります。
- かかりつけの医療機関——ふだん通っている診療所があるなら、まずここです。前年までの数値や服薬の状況を把握しているぶん、判断が速くなります
- 健診を受けた医療機関・健診機関——そのまま再検査や精密検査に進める体制があることが多く、検査のデータもそこにあります
- 紹介された医療機関——内視鏡やCTなど、設備が必要な検査は紹介先で受けることになります
迷ったときは、まず一般内科(プライマリケア)の診療所に結果票を持っていくのが分かりやすい入り口です。そこで必要な検査を組むか、専門の医療機関へ紹介するかが決まります。専門的な検査や治療が必要な段階では、紹介のうえで受けることになります。かかりつけの役割そのものについては「かかりつけ医」を持つと何がいいの?、紹介の仕組みについては紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?で解説しています。
持っていくものは、結果票そのものです。 できれば前年・前々年の結果票も一緒に持っていってください。学会の判定区分表は、eGFR(腎機能の指標)について、1〜3年間でeGFRが40もしくは30%以上低下した場合は有意な慢性腎臓病の進行の指標であり、腎臓専門医への紹介にあたると注記しています。1回の数値ではなく、数年の動きで意味が変わる項目があるということです。腎機能の項目については腎臓内科ってどんなところ?でも解説しています。
費用——健診は保険の対象外、そのあとの診療は保険
費用の扱いは、健診そのものとそのあとの検査・治療で分かれます。
健診・人間ドックそのものは、健康保険の給付の対象になりません。 保険医療機関及び保険医療養担当規則の第20条は、「健康診断は、療養の給付の対象として行ってはならない」と定めています。会社の定期健康診断が自己負担なしで受けられるのは、健康保険ではなく事業者が費用を負担しているためです。
一方で、健診で見つかった疾患に対する診療は保険診療として行われます。 厚生労働省「保険診療の理解のために【医科】」は、健診等で疾患が発見された患者について治療を開始した場合の初診料の扱いを、次のように定めています。
- 自他覚的症状がなく健診等を目的とする受診により疾患が発見された患者について、その保険医が治療を開始した場合には、初診料は算定できない
- 健診等で疾患が発見された患者が、疾患を発見した保険医以外の保険医(同じ保険医療機関の保険医を除く)において治療を開始した場合には、初診料を算定できる
つまり、健診を受けたところでそのまま治療に入る場合と、別の医療機関へ移ってから始める場合で、初診料の扱いが変わります。 費用だけで決める話ではありませんが、同じ場所で続けるか、かかりつけに持ち帰るかで窓口負担に差が出ることは知っておいてよいでしょう。金額は検査の内容によって大きく変わるため、心配な場合は予約の電話で「健診の結果で受診したい」と伝えて確認するのが確実です。
勤め先の健診には、事業者側の手続きもある
会社の定期健康診断(労働安全衛生法にもとづく健診)の場合、結果を受け取ったあとに動くのは本人だけではありません。
- 医師の意見聴取——事業者は、健診の項目に異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置について医師または歯科医師の意見を聴かなければならない(労働安全衛生法第66条の4)
- 就業上の措置——その意見を勘案し、必要があると認めるときは、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少などの措置を講じなければならない(第66条の5)
- 結果の通知——事業者は、健診を受けた労働者に結果を通知しなければならない(第66条の6)
- 保健指導——特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師または保健師による保健指導を行うよう努めなければならない(第66条の7第1項)。同条第2項は、労働者の側についても「通知された健康診断の結果及び保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする」と定めています
もうひとつ、知られていない給付があります。労災保険の二次健康診断等給付です。定期健康診断(一次健康診断)で、血圧検査・血中脂質検査・血糖検査・腹囲の検査またはBMIの測定の4項目すべてに異常の所見があると診断され、脳・心臓疾患の症状がない場合、脳血管と心臓の状態を把握するための二次健康診断と、発症予防のための特定保健指導を、1年度内に1回、無料で受診できます。 請求は、一次健康診断の結果を証明する書類を添えて、健診給付病院等を経由して行います。
よくある誤解は?
誤解1:「経過観察と書かれていたので、何もしなくてよい」
「経過観察」は、学会が「不明瞭な記載は行わない」として避けるよう求めている書き方です。本来は「Xか月後に再検査」のように時期と行動が明記されているべきものです。時期が書かれていない結果票を受け取ったときは、放置してよいという意味ではなく、確認が必要な状態だと考えてください。
誤解2:「要精密検査は、病気が見つかったということ」
違います。学会は、精密検査の結果として原因が明確でなかった場合や、生まれつきのものだった場合は、判定をCなどに変更するのが適切だとしています。がん検診でも、要精検となった人のうちがんが発見される割合の許容値は数%の水準で設定されています。Dは「調べる段階」を指す記号です。
誤解3:「再検査は、健診を受けたところで受けなければならない」
決まりはありません。かかりつけの診療所に結果票を持っていって、そこで検査を組んでもらう形でも構いません。ただし前述のとおり、健診を行った医療機関でそのまま治療を始める場合と、別の医療機関で始める場合で初診料の扱いが違います。 また、画像などのデータがある場合は、あるところで続けたほうが検査の重複を避けられます。
誤解4:「毎年同じ項目に印が付いているから、自分にとっては正常値なのだろう」
判定区分は集団の基準値をもとに決められたもので、「毎年出ているから問題ない」という判断の根拠にはなりません。学会が示すように、数年の変化そのものが紹介の判断材料になる項目(eGFRなど)もあります。毎年続いていることは、むしろ一度きちんと調べる理由になります。
こう考えて動くとよい
自分の場面に当てはめて考えるときの軸を挙げます。
- 「至急」と書かれているかを最初に見る。 制度上、受診勧奨のレベルはさらに「至急受診」と「生活習慣を改善したうえで受診」に分かれています。結果票の文面がどちらの言い方をしているかで、動く速さが変わります
- 結果票と、前年までの結果票をまとめて持っていく。 1回の数値では判断できず、数年の動きで意味が変わる項目があります
- 要再検査なら「いつ受けるか」を先に決める。 「Xか月後」と書かれていれば、その時期に予約を入れてしまうのが確実です。時期が書かれていなければ、健診機関か受診先に聞いてよい質問です
- 要精密検査なら、検査の内容を自分で決めようとしない。 何を調べるかは紹介先が決めることになっています。検査名を調べるより、結果票を持って相談したほうが早く決まります
- 予約の電話で「健診の結果で受診したい」と伝える。 検査に予約枠や食事制限が必要な場合があり、伝えておくと二度手間になりません
- 勤め先の健診なら、産業医・保健師の窓口も入り口になる。 事業者側にも意見聴取や保健指導の仕組みがあり、4項目すべてに異常の所見があれば無料の二次健康診断等給付の対象になることがあります
実際に探すときは
結果票を持っていく先を決めていない場合は、一般内科(プライマリケア)を掲げる診療所が入り口になります。本サイトでは、エリアごとに一般内科のクリニックを紹介しています。
監修者からのひとこと
外来でいちばん多いのは、「去年も同じことを書かれたんですけど」という受け取り方です。毎年同じ項目に印が付いているのは、正常だという意味ではなく、一度きちんと調べる理由になります。
そして、結果票は捨てずに持ってきてください。数字は前年・前々年と並べたときに意味が変わります。1枚だけを見て言えることは、実はそれほど多くありません。
「何を調べればいいか」を自分で調べてから来ようとしなくて大丈夫です。それを決めるのがこちらの仕事です。紙を持って来ていただければ十分です。
よくある質問
Q. 「要再検査」と「要精密検査」は何が違いますか。
A. 要再検査(判定C)は、同じ検査をもう一度受けて数値を確かめることです。日本人間ドック・予防医療学会の判定区分表は、Cについて「Xか月後など再検査時期を明記し、受診者行動を明確に指示する」ことを求めています。要精密検査(判定D)は、別の検査を足して原因を調べることで、学会は「精密検査を行うか、治療を行うかは、紹介先が決定することになる」としています。どちらも、まず結果票を持って医療機関に相談する流れは同じです。
Q. 健診結果はどこへ持っていけばよいですか。
A. 厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」のフィードバック文例は、「この健診結果を持って、至急かかりつけの医療機関を受診してください」という表現を用いています。かかりつけの診療所、健診を受けた医療機関、紹介された医療機関のいずれでも構いません。決めていない場合は、一般内科(プライマリケア)を掲げる診療所が分かりやすい入り口になります。
Q. 「要精密検査」と言われました。がんなどの病気が見つかったということですか。
A. そうとは限りません。学会の判定区分表は「判定区分は、初回受診時の拠り所とするものです」として、精密検査の結果、原因が明確なものがなかった場合や生まれつきのものであった場合は、判定をCなどに変更することが適切だとしています。がん検診では、要精検となった人のうちがんが発見された人の割合(陽性反応適中度)の許容値が、胃1.0%以上、大腸1.9%以上、肺1.3%以上、乳房2.5%以上、子宮頸部4.0%以上と設定されています。
Q. 再検査や精密検査に健康保険は使えますか。
A. 健診・人間ドックそのものは対象外です。保険医療機関及び保険医療養担当規則第20条は「健康診断は、療養の給付の対象として行ってはならない」と定めています。一方で、健診で見つかった疾患に対する診療については、厚生労働省「保険診療の理解のために【医科】」が初診料の算定の扱いを定めており、保険診療として行われる前提になっています。金額は検査内容によって変わるため、受診先に確認してください。
Q. 健診を受けたところで続けたほうがよいですか。それともかかりつけに持ち帰るべきですか。
A. どちらでも構いません。ただし、厚生労働省の資料では、健診等で疾患が発見された患者について、その疾患を発見した保険医が治療を開始した場合は初診料を算定できず、別の保険医療機関で治療を開始した場合は算定できるとされています。窓口負担に差が出る点と、画像などのデータがすでにある点は、健診を受けたところで続ける側の利点です。前年までの経過を知っているのは、かかりつけの側の利点です。
Q. 勤め先の健診で異常があったとき、無料で受けられる検査はありますか。
A. 労災保険の二次健康診断等給付があります。定期健康診断(一次健康診断)で、血圧検査・血中脂質検査・血糖検査・腹囲の検査またはBMIの測定の4項目すべてに異常の所見があると診断され、脳・心臓疾患の症状がない場合、脳血管と心臓の状態を把握する二次健康診断と特定保健指導を、1年度内に1回、無料で受診できます。一次健康診断の結果を証明する書類を添えて、健診給付病院等を経由して請求します。
Q. 忙しくて行けないうちに、次の年の健診が来てしまいました。
A. がん検診では、要精検者のうち精密検査を受けた人の割合(精検受診率)が指標として公表されており、許容値70%以上・目標値90%以上とされています。国立がん研究センターは、この指標について「本来は100%を目指すべき指標」だと説明しています。前年の結果票も一緒に持っていけば、2年分の変化として見ることができます。時間が経ってから行くことは、行かないことより意味があります。
出典・参考文献
- 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」(A〜Eの区分名・注記*1〜*3・*6/判定区分は初回受診時の拠り所である旨)
- 日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方」
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」(別紙5 健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値/別添資料 フィードバック文例集)
- 厚生労働省「保険診療の理解のために【医科】」(保険医療機関及び保険医療養担当規則第20条「健康診断の禁止」/健診等で疾患が発見された患者の初診料の扱い)
- 国立がん研究センター がん統計「がん検診の都道府県別プロセス指標」(要精検率・精検受診率・陽性反応適中度・がん発見率の定義)
- 厚生労働省「がん検診事業の評価について」(がん検診事業の評価に関する研究)(プロセス指標基準値一覧・許容値/目標値)
- 労働安全衛生法 第66条の4〜第66条の7(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「労災保険二次健康診断等給付」
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