はじめに
高血圧は 世界中で最も多い生活習慣病の一つ であり、心血管疾患の主要なリスク因子です。WHO(世界保健機関)によると、世界の成人の約4人に1人が高血圧を有している と報告されています(WHO, 2023)。
本記事では、高血圧の世界的な動向、日本の高血圧事情、各国の対策、最新の治療トレンド について詳しく解説します。
1. 世界の高血圧有病率
(1) 世界の高血圧有病率(WHO, 2023)
地域 | 高血圧有病率(成人) |
世界全体 | 約25% |
ヨーロッパ | 30〜40% |
アメリカ(北米) | 25〜30% |
アジア | 20〜35% |
アフリカ | 35〜45% |
✔ ポイント
- アフリカ、ヨーロッパ地域の高血圧有病率が高い
- アジア・日本は比較的低いが、高齢化に伴い増加傾向
- 低所得国では高血圧の治療率が低く、脳卒中リスクが高い
(2) 世界各国の高血圧管理状況(Lancet, 2023)
国 | 高血圧有病率 | 治療率 | コントロール率(140/90mmHg未満) |
日本 | 35% | 60% | 50% |
アメリカ | 30% | 70% | 55% |
イギリス | 32% | 75% | 60% |
中国 | 33% | 45% | 30% |
インド | 34% | 35% | 25% |
ナイジェリア | 42% | 25% | 10% |
✔ ポイント
- 日本は高血圧の治療率が高いが、コントロール率は欧米より低い
- アメリカ・イギリスは、薬物治療と生活習慣改善の両立が進んでいる
- 中国・インド・アフリカ地域では、治療率・コントロール率が低く、高血圧関連疾患の死亡率が高い
2. 日本の高血圧の現状
(1) 日本における高血圧の有病率(JSH2019)
年齢層 | 高血圧有病率(%) |
30代 | 10% |
40代 | 20% |
50代 | 40% |
60代 | 60% |
70代以上 | 75% |
✔ ポイント
- 日本の高血圧患者数は約4300万人
- 高齢化とともに有病率が上昇
- 特に60歳以上では半数以上が高血圧を抱える
(2) 日本の高血圧対策
✔ 日本で実施されている高血圧予防・管理対策
- 健康診断の義務化(特定健診)
- 減塩推進(1日6g未満の推奨)
- 高血圧ガイドライン(JSH2019)による治療標準化
- 遠隔医療・AIを活用した血圧管理の導入
3. 各国の高血圧対策の比較
✔ 世界各国での高血圧対策の特徴
国 | 主要な対策 | 成果 |
日本 | 減塩政策・特定健診・降圧薬普及 | 治療率は高いが、コントロール率に課題 |
アメリカ | DASH食の推奨・生活習慣指導・保険制度改革 | コントロール率向上(55%) |
イギリス | 国民健康サービス(NHS)による早期介入 | 高血圧管理が効率的 |
中国 | 大規模な減塩キャンペーン | 治療率向上中(45%) |
インド | 高血圧診断・治療の普及活動 | 治療率が依然として低い |
✔ ポイント
- アメリカ・イギリスは「生活習慣の改善」に重点
- 日本は「薬物治療の普及」に強みがあるが、減塩意識が不足
- 中国・インドでは、高血圧治療の普及が課題
4. 最新の高血圧治療トレンド
✔ 近年の高血圧治療の進歩
治療法 | 内容 | 期待される効果 |
ARNI(エンレスト) | ARB+ネプリライシン阻害薬 | 心不全を伴う高血圧患者に有効 |
SGLT2阻害薬 | 糖尿病合併高血圧の降圧効果 | 腎保護作用も期待 |
腎デナベーション(RDN) | 交感神経を抑制するカテーテル治療 | 治療抵抗性高血圧に有効 |
デジタル血圧管理(AI活用) | スマートウォッチ・アプリで血圧測定 | 生活習慣の改善を支援 |
✔ ポイント
- 新しい薬剤(ARNI, SGLT2阻害薬)による治療選択肢の拡大
- 腎デナベーションが、薬物療法に抵抗性のある高血圧患者に有効
- デジタルヘルスの活用が進み、個別化血圧管理が可能に
5. 高血圧の未来|日本が取り組むべき課題
✔ 今後、日本が取り組むべき高血圧対策
- コントロール率の向上
- 薬物治療と生活習慣改善の両立
- 降圧目標を達成するためのアプローチ強化
- 減塩のさらなる推進
- 加工食品・外食の塩分削減
- 国民の減塩意識向上
- デジタルヘルスの活用
- 遠隔診療やスマートウォッチによる血圧管理
- 高血圧患者への早期介入
- 30代・40代の高血圧予防を強化
- 企業健康プログラムの導入
✔ ポイント
- 高血圧コントロール率の向上が課題
- 生活習慣の改善を促す取り組みが必要
- デジタル技術を活用した新たな治療戦略が求められる
まとめ
✔ 世界の成人の約4人に1人が高血圧を有し、特にアフリカ・ヨーロッパで有病率が高い
✔ 日本の高血圧治療率は高いが、コントロール率は欧米より低い
✔ 各国の対策には、減塩推進・生活習慣指導・デジタルヘルス活用が含まれる
✔ 今後、日本では高血圧のコントロール率向上とデジタルヘルス活用が重要となる
監修
鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
専門科目 救急・地域医療
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
SNSメディア
- Youtube Dr.鎌形の正しい医療ナビ https://www.youtube.com/@Dr.kamagata
- X(twitter) https://x.com/Hiro_MD_MBA
関連リンク
- 株式会社EN https://www.med-pro.jp/en/
- 医療法人社団季邦会 https://wellness.or.jp/kihokai/