新潟県福祉保健部 松澤知氏へ
ProDoctors運営が独自に取材した内容に基づく記事の【後編】です。
取材・撮影・文/ProDoctors運営
新潟県福祉保健部 松澤知 氏

2017年近畿大学医学部卒業。初期研修修了後、2019年新潟県入庁。新潟県福祉保健部(福祉保健総務課、地域医療政策課)と佐渡地域振興局健康福祉環境部(佐渡保健所)に所属。福祉保健部と保健所業務のほか、嘱託産業医や大学非常勤講師など携わる業務は多岐にわたり、県民のために東奔西走している。コロナ禍では県医療調整本部にて、県内の医療提供体制の整備等に携わった経験を持つ。
「医療崩壊を防ぐために」 これまで最も印象に残っている、コロナ禍での仕事
新型コロナウイルス感染症の県内初の感染者の確認を受け、令和2年2月29日に知事を本部長とする県対策本部が設置されました。3月30日には感染拡大のピークに対応するための医療提供体制および軽症者等の宿泊療養体制の確立等を目的として、対策本部内に、福祉保健部長の松本晴樹(まつもと・はるき)先生を本部長とするとする医療調整本部が設置されました。
感染者が増加する状況下においても、感染症患者への医療と並行して、その他の疾患を有する患者にも適切な時期に適切な医療が提供される体制を確保し、医療崩壊を防ぐこと――そのための入院外療養(宿泊療養・自宅療養)の整備が、本部の一員として、主に担当させていただいた最初のミッションでした。
入院外療養においては、全患者にパルスオキシメーターを貸出、看護師による電話聞き取りやアプリを活用した健康状態のモニタリングを実施しました。また、郡市医師会の先生方等に御尽力いただきオンライン診療担当医を配置し、診察・処方が受けられる体制を構築しました。処方がある場合には、県薬剤師会による薬剤交付支援事業により、患者に速やかに薬剤が配送されます。また、入院が必要な場合は、DMAT医師等を含む体制で構成される患者受入調整センター(PCC)により県内一元で入院調整を行いました。

入院外療養の整備に加え、検査体制やワクチン接種体制の構築、罹患後症状への対応、さらには5類感染症への移行など、数多くのプロジェクトに携わりました。研修医時代とは比較にならないほど、物事を深く「考え」、相手に「伝える」ことに注力する日々であり、日々試行錯誤の連続でしたが、人と人とのつながりによって物事が前に進んでいく手応えを、幾度となく実感させていただきました。
このように、県民や事業者をはじめ、国、市町村、専門家、医療機関、入院外療養者の受入施設、関係機関及び関係団体等が一体となって、感染拡大防止対策の実施、医療提供体制の整備及び新型コロナウイルスワクチン接種の推進などに取り組んできました。このような「オール新潟」の取り組みの結果、全国の中でも相対的に感染率や死亡率が低い水準にとどまったと受け止めています。 「オール新潟」の一員である全ての皆様に改めて深く感謝を申し上げたいと思います。
「医療を取り巻く急速な変化に、県民のために県民と力を合わせて必死に適応していく」
コロナ禍を経て、次の感染症危機から県民の生命・健康を守るため、感染の初期段階から、より迅速に、より効果的に「オール新潟」による対応を行えるよう、新型コロナウイルス感染症対応の教訓を踏まえ、新潟県感染症予防計画等の計画策定を行いました。一つの感染症危機を乗り越え、次の計画策定まで携わらせていただけたことに感謝しています。現在は、人口構造や需要の変化に適応した持続可能な医療提供体制を構築するため、地域医療構想やオンライン診療、医師確保を進めています。
地域医療構想は、いかに各地域の方々と力を合わせ、未来で戦える地域の医療提供体制のフォーメーションを築いていくかが重要であると認識しています。これまで地域医療構想は、病床機能の分化・連携に重点が置かれることが多かったという印象ですが、持続可能な外来医療の実現のため、オンライン診療という手段も各地域が持てるよう、へき地や専門外来、初期救急といった様々な場面を想定してオンライン診療のモデル事業を展開しています。
そして、一番大切なのは将来を担う人材の確保であり、医学生から新潟県を選んでもらえるよう、県医師会と協力し産業医資格取得コースを新設する等の研修プログラムの充実を図っています。

フィールドは感染症対策から地域医療政策や医師確保に移りましたが、本質は変わっていないと感じます。
私の仕事は、これまでもこれからも、「医療を取り巻く急速な変化に、県民のために県民と力を合わせて必死に適応していく」ということになると思います。
コロナ禍で託されたのは、療養体制をゼロから築くという前例のないミッションでした。
「県民の皆さんと一緒に」——苦難を乗り越えた経験と新潟県民への思いが、医療を陰で支える行政医師としての覚悟をより確かなものにしていきます。






