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東京都で専攻医として研修するという選択

・ 2026年8月21日 ・更新
東京都で専攻医として研修するという選択
この記事の内容 10項目

新潟県の記事では、県内に点在する「その地域で唯一の病院」を中心に、施設群を広域に組んで研修する姿を見ました。東京都はその対極にあります。同じ「地域」でも、東京で問われるのは広さではなく密度です。

ただし、その密度は領域によって3倍近く違います。この記事では、ResidentStory が掲載している東京都内の535件を分解して、「東京を選ぶ」ということが領域ごとに何を意味するのかを見ていきます。数字はすべて2026年10月19日時点の掲載データによります。

東京の535件は、全国の13%

東京都内の専門研修プログラムは535件です。全国3,989件に対して13.4%にあたります。

内訳は、19の基本領域すべてに、基本領域とは別枠の社会医学系を加えた20区分です。東京都内にはこの20区分すべてに掲載があります。

都道府県別では最多で、2位の神奈川県253件、3位の大阪府249件を離しています。面積あたりで見れば、この集中はさらに極端になります。

密度は領域によって約3倍違う

ところが領域ごとに「全国のうち東京が占める割合」を出すと、13.4%という平均値はあまり意味を持ちません。

最も高いのが病理の21.7%(全国115件のうち25件)、次いで臨床検査19.3%(83件中16件)、麻酔科17.5%(268件中47件)、皮膚科17.4%、耳鼻咽喉科16.7%、眼科16.4%、放射線科16.0%、泌尿器科15.9%、精神科15.8%。

低いほうは整形外科の7.2%(全国250件のうち18件)、内科11.1%(667件中74件)、総合診療11.2%(456件中51件)、救急科11.9%です。

同じ「東京の密度」でも、病理と整形外科では約3倍の開きがあります。

全国の件数が少ない領域ほど、東京に寄っている

この並びには規則性があります。全国の掲載件数が少ない領域ほど、東京の占有率が高くなっています。病理115件・臨床検査83件・放射線科125件はいずれも全国で少ない領域で、東京の割合が高い。逆に内科667件・総合診療456件・整形外科250件は全国に広く分布していて、東京の割合は7〜11%にとどまります。

読み替えると、こうなります。地方で候補を見つけにくい領域ほど、東京に集まっている。病理や臨床検査を志望する場合、県によっては候補が1〜2件しかありません。その領域では、東京を選ぶことが候補数そのものを増やす選択になります。

一方、内科・総合診療・整形外科は全国どこでも一定の候補があります。これらの領域で東京を選ぶ理由は「候補が多いから」ではなく、別のところにあるはずです。それが何かを自分で言語化できているかどうかが、志望理由の強さに効いてきます。

13の大学が、ほぼ全領域を単独で揃えている

東京の535件のうち、基幹施設名に大学名を含むプログラムは292件、15校です。割合にすると55%で、残る243件(45%)は大学以外の施設が基幹施設になっています。

この15校のうち13校は、20区分のうち18〜20区分を単独でカバーしています。東邦大学28件・20区分、東京女子医科大学28件・19区分、東京医科大学24件・20区分、日本大学23件・20区分、杏林大学・順天堂大学・東京慈恵会医科大学が各21件・20区分、日本医科大学21件・19区分、帝京大学・東京科学大学・慶應義塾大学が各20件・20区分、昭和医科大学20件・18区分、東京大学19件・19区分です。

新潟県では新潟大学医歯学総合病院が18件で、臨床検査を除くほぼ全領域を1校で抱えていました。東京では同じことを13校が並行してやっています。「この大学に行けばどの科でも研修できる」という状態が、13通り同時に成立しているということです。

大学以外の45%——都立病院という層

残る243件も、東京の特徴をよく表しています。件数の多い順に、聖路加国際病院14件、国立病院機構東京医療センター13件、国立国際医療センター12件、東京都立墨東病院8件、日本赤十字社医療センター8件、虎の門病院8件、東京都立多摩総合医療センター8件、武蔵野赤十字病院7件、東京都立駒込病院6件。

都立病院は12施設が基幹施設になっています。墨東・駒込・大塚・広尾・荏原・豊島・松沢・大久保・小児総合医療センター・多摩総合医療センター・多摩北部医療センター・多摩南部地域病院。地方では県立病院が「県内唯一の総合病院」として機能することが多いのに対し、東京の都立病院は大学病院と並び立つ選択肢の層として存在しています。

文京・新宿・板橋という三極

区市町村別では文京区78件、新宿区72件、板橋区53件、港区32件、大田区25件、品川区23件、目黒区22件、三鷹市19件、中央区17件と続きます。上位3区で203件、全体の38%です。

この集中には理由があります。文京区には東京大学・東京科学大学・順天堂大学・日本医科大学が、新宿区には慶應義塾大学・東京女子医科大学・東京医科大学が、板橋区には日本大学・帝京大学が、それぞれ電車で数駅の距離に並んでいます。1つの区の中に複数の大学病院があり、しかもそれぞれが独立して同じ領域のプログラムを運営している。1県に医学部がひとつの県では起こり得ない構造です。

区をまたいだ見学が現実的である、という点も東京特有です。文京区の4校を1日で回ることは物理的に可能で、同じ領域のプログラムを並べて比べる機会は地方より得やすくなります。

東京のプログラムは、定員をどこまで確認できるか?――確認率は全国平均より低い

ここまでの数字には但し書きがあります。東京都内535件のうち、定員を一次資料から数値として確認できたのは402件、75%です。全国平均の85%を下回っています。このほか54件は「若干名」のように資料の書き方のまま掲載しており、数値には数えていません。

理由は二つあります。一つは領域の構成です。東京は総合診療51件・精神科42件を多く抱えていますが、この2領域は学会の公表資料に定員がほとんど載っておらず、全国でも確認率が低い領域です(総合診療74%、精神科63%)。都内では総合診療29件(57%)、精神科19件(45%)にとどまります。もう一つは資料の違いです。熊本県や大分県などは会議資料でプログラムごとの定員を公表していますが、東京都の資料は領域ごとの合計のみで、個々のプログラムの定員は病院の募集要項や学会の冊子で確かめるしかありません。脳神経外科は都内15件のいずれも、定員を数値として確認できていません。

確認できた402件の定員は合計2,617名、中央値4名、最大43名でした。

東京でプログラムを比べるとき、何を見ればよいか?

「記載がない」ことも情報として読む

東京都内のプログラムは情報量そのものは多いものの、当直の年間回数やプログラム責任者名が非公開のままだったりする例が、大学系・非大学系を問わずあります。

ResidentStory では、確認できなかった項目を憶測で埋めず「要確認」と表示しています。出典を確認したうえで記載が無かった項目は「出典に記載なし」として区別しています。見学や問い合わせの際は、この「要確認」の項目こそが聞くべき質問リストになります。

そして、それだけ選択肢が多いからこそ、実際にそこで研修した人の実感が比較の決め手になります。ResidentStory では、東京で研修した専攻医・修了者の口コミを集めています。

この記事の数字について

本文の数値は、ResidentStory が掲載している専攻医プログラム3,989件(うち東京都535件)を2026年10月19日に集計したものです。「大学名を含む」は基幹施設名に大学名を含むプログラムを数えたもので、経営主体による分類ではありません。定員は募集要項などの一次資料から数値として確認できたものだけを母数にしています。領域の区分は19の基本領域に社会医学系を加えた20区分で数えています。

なお、2026年10月7日の公開時点では東京都の小児科プログラムが未掲載で、本文にもその旨を記載していました。翌8日に日本小児科学会の基幹施設一覧から東京都の24件を追加し、本文の数値を更新しています。同じ日に、同一プログラムの二重登録を統合したため、全国の件数も4,258件から4,210件に変わっています。

専門研修の制度と募集の日程は、日本専門医機構の専攻医募集の案内で確認できます。各プログラムの定員などの出典は、プログラムのページの出典欄に載せています。

掲載データは随時更新しているため、本文の数値は今後変わります。最新の件数はプログラム一覧でご確認ください。対になる地域の記事として新潟県で専攻医として研修するという選択が、領域ごとの定員の違いについては同じ領域でも規模はそろっていないがあります。

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