中国の医師国家試験「国家执业医师资格考试」は、外国人留学生にも門戸が開かれており、日本人も中国の医学部を卒業し所定の条件を満たせば受験可能です。筆記と実技の2段階で行われ、中国語での受験が必須。試験制度や出題範囲、日本との違い、受験までのステップ、学習教材などを詳しく解説します。

試験の概要と出題範囲

中国の医師資格試験は正式には国家执业医师资格考试といい、国家衛生健康委員会 (NHC) 傘下の国家医学試験センター (NMEEC)が主催します。試験は「医学综合考试(筆記)」と「实践技能考试(実技)」の二本立てで構成されており、毎年全国で実施されます  。受験者は自分の医学教育に応じて「臨床(西医)」「中医(漢方)」「口腔(歯科)」「公衆衛生」などの受験区分を選びます 。試験言語は中国語で、すべての問題・科目とも中国語で出題されます 。

試験形式

実技試験(实践技能考试)は各省級の試験機関が実施し、原則として国家指定の実技試験センターで行われます。内容は問診、身体診察、基本手技(CPR、穿刺など)、病例分析などで6月ごろ実施。実技試験の合格点は60点です 。筆記試験(医学综合考试)は計算機化CBT形式で8月ごろに実施され、医学生の基礎医学(解剖学、生理学、生化学、病理学、薬理学、微生物学・免疫学など)・臨床医学(内科学(各論含む)、外科学(各論含む)、婦人科学、小児科学、精神医学、神経学、皮膚科学、眼科学、耳鼻咽喉科学など)・予防医学・医学人文(予防医学・公衆衛生、衛生法規・医学倫理・医患関係、心理学など)・中医学などが出題範囲です 。臨床医学分野では内科・外科・婦産科・小児科など主要科目が中心となっています。

受験資格

登録:受験には医学部卒業(中国政府承認の医学校)が必要で、登録時に本人確認書類の提出が求められます。中国本土出身者は身分証、外国人はパスポートを用います 。受験登録は毎年年初に国家医学考试网などで告知され、オンライン申請+現地審査という流れになります 。

合格基準・合格率

筆記・実技ともに点数制で、臨床類执业医師は総得点600点中360点以上、助理医師は180点以上が合格基準です 。近年の合格率は変動し、例年30〜50%の合格率だが、2024年度の臨床执业医師試験では全国で約61~80%という高い報告例があります (助理医師は約21~40%)。実技試験の全国平均合格率は約70%程度とされています(参考)。

日本の国家試験との違い

中国と日本の医師国家試験では、試験制度や科目構成に大きな違いがあります。最大の相違点は実技試験の有無です。中国試験では卒業試験・国家試験の両方に臨床技能の実技が含まれ、患者対応・検査手技などが評価されます。一方、日本の医師国家試験では筆記試験が主体で、実技試験は原則としてありません。 また出題範囲について、中国試験は中医学(漢方医療)や伝統民族医療など日本にはない分野が含まれます 。試験形式も異なり、中国では計算機化試験が導入されている一方 、日本ではペーパー方式が中心です。受験資格では、日本は医学部6年修了後すぐ受験可能ですが、中国では学士課程修了後さらに1年の医療機関実習が必要です(実習証明が要件となっています)。採点基準にも違いがあり、中国では360点以上などの絶対的な得点基準で合否が決まるのに対し、日本では配点率や領域別の正答率、禁忌肢の選択の有無などを総合的に判断して合否が判定されます。

外国人でも受けられるのか?(日本人学生の視点)

原則として中国の医師資格は中国国籍者向けですが、中国で医学学位を取得した外国人(留学生)には受験の道が開かれています。中国政府は2001年の通達で「中国政府承認の医学専門学位を取得し、附属病院などで所定の1年間実習を修了した外籍者」が受験可能と定めました 。受験できる科目は「臨床・中医・口腔」の3類型に限られます 。受験登録には在学大学および実習先の承認証明書が必要で、実習中に取得した学籍・実習記録、健康診断書や「Xビザ」などの書類を揃える必要があります  。また外国人医師向けに政府案では「中国語で実施すること」が外国人受験者にも義務付けられていると明記されています。受験時にはパスポートが公式身分証明書となります 。

日本人医学生の場合、中国の医学部を卒業し上記条件を満たせば試験自体は受けられますが、中国で医師資格を取得しても、日本で医師免許を得るには厚生労働省による審査と日本の国家試験合格が別途必要です。

現実的なルートと注意点

  1. 中国の医学部に入学し卒業する:最も確実な方法。多くの大学が留学生向けの英語、中国語コースを提供(但し、試験は中国語)。
  2. 中国政府奨学金を利用する。
注意点
  • 資格取得≠中国での就労ビザ取得。別途手続きが必要。
  • 資格は中国国内でのみ有効。日本での医師資格とは無関係。
  • 情報は常に国家医学試験センター(NMEEC)公式サイトで確認が必要。

受験対策・学習法

日本人や中国人の先輩方に教えて頂いたおすすめの教材を紹介いたします。

昭昭医考

受験生の定番教材で、教材も動画授業もどちらもおすすめです。要点が簡潔にまとめられており、効率よく学習できます。

贺银成

こちらも受験生にとって定番の教材で、テキストも動画授業もおすすめです。ただし、動画授業では講師の方言がやや強く、留学生にとっては聞き取りにくい場合があるかもしれません。

医学教育网

教材も動画授業も両方ともおすすめです。

飞飞医考

教材も動画授業もどちらもおすすめです。個人的な感覚では、教材の情報量は贺银成と昭昭医考のちょうど中間くらいだと感じます。

丁香医考

基本的には問題演習用として使いますが、試験直前講座は要点が分かりやすく整理されていて、おすすめです。

医考帮

問題演習用として使われていますが、問題解説動画が丁寧で分かりやすいと好評です。

まとめ

  • 执业医师资格考试は、中国で医師として働くための絶対的な関門。
  • 日本の試験と比べ、卒業後の受験必須、実技試験の存在、臨床重視の膨大な出題範囲が特徴。
  • 日本人が受験するには、中国の医学部卒業と超ハイレベルな医学中国語が必須条件。
  • 中国での医師資格取得を目指す日本人学生は、入学時からこの試験を見据えた計画的な学習と中国語習得が不可欠。
参考リンク

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