この記事は、医療法人社団 静恒会 理事長/本多病院 院長 医師 石川 輝 氏 へ
ProDoctors運営が独自に取材した内容に基づく記事の【後編】です。
取材・撮影・文/ProDoctors運営
医療法人社団 静恒会 理事長/本多病院 院長 医師 石川 輝 氏

2015年聖マリアンナ医科大学卒。自治医大さいたま医療センター、さいたま市民医療センターを経て、現東京科学大学大学院総合診療医学分野臨床准教授、医療法人社団 静恒会理事長・本多病院院長。
30代で院長に就任し、中小規模病院の経営と臨床の両立に挑み続ける現場の実践者。臨床医として個々の患者に寄り添うとともに、地域社会と密にコミュニケーションを図りながら地域医療の持続可能性をいかに守るかという視点で、病院の進むべき道の新たな舵取りに挑んでいる。
30代で院長へ。「自分でいいのか?」から始まった、新しい挑戦
兵庫には専攻医プログラムの研修で赴任しており、もともとその土地を離れる時期は決まっていました。しかし、そこでの仕事でやりがいを実感できるのが楽しく、「まだやり残していることがある!」と思い延長希望を出し、結果的に1年半ほど延長して勤務することになりました。その後は埼玉に戻り、総合診療を中心に、呼吸器内科にも一部携わりながら、臨床医としてのキャリアを重ねていきました。
転機となったのは2023年です。師匠である石田岳史先生が東京科学大学 総合診療科の教授に就任され、そのご縁で「東京都大田区にある本多病院を再生をする。力を貸してくれないか。」というお話をいただきました。
正直なところ、その連絡を受けたときは「本当に自分でいいのだろうか」と悩みました。ただ同時に、「なかなか巡ってこない機会かもしれない」とも感じ、覚悟を決めました。
そして2024年11月、本多病院の理事長・院長に就任しました。
それまで私は、ずっと臨床医として現場に立ってきましたし、経営に関わった経験もありませんでした。医師としてのキャリアの中で「経営をやりたい」と考えたことも正直ありません。
ただ今回に関しては、コンサルティングが入り、経営面をしっかりサポートしてもらえる体制があること、そして「二人三脚で病院経営を進めていこう」というお話だったことが、大きな後押しになりました。こうした環境の中で、少しずつ経営そのものにも興味を持つようになった、というのが率直なところです。
院長の役割を果たしながら、臨床もやる。
充実した毎日を送っていますが、忙しいのは事実です。臨床にもかなり携わっており、外来は週2回、在宅診療は週3回担当しています。宅直も行っているため、緊急の連絡があれば患者さんのもとへ駆けつけることもあります。
また、院長としての院内マネジメント業務に加え、隙間の時間を使って近隣のクリニックやケアマネージャーの方々のもとへ顔を出すこともあります。
それでも「本当に恵まれている」と感じています。その理由は、経営の部分にコンサルティングがしっかり入っているからです。会議に参加した際には、院長として必要なことや大切なポイントはきちんと伝えるなど、院長としての役割を果たしながら、現状はかなり臨床に軸足を置いた働き方ができています。
今後は、こうした「コンサルティングが入る病院経営の形」がさらに増えていくのではないでしょうか。「医師は医師の仕事だけをする」という単純な話ではありませんが、役割分担ができるからこそ、私のように30代でも院長を務めることができているのだと思います。
自分だからこそできるリーダーシップの形
「周りをうまく巻き込み、モチベーターになる」
従業員の年齢層の中では、私は比較的若い立場になると思います。これまで多くの職種の方々と、いち臨床医として接してきましたが、院長に就任した当初は「自分はどういう振る舞いをすればいいのだろう」と悩むこともありました。院長という立場になると、他職種との関わりはもちろん、院内外のさまざまな場に顔を出し、対応していく必要があります。その役割の広さや難しさは、実際にやってみて強く感じています。
そうした中でコミュニケーションで特に意識しているのは、「できるだけ自分の足で、顔を見に行く」ということです。組織がもう少し大きくなれば、すべて自分が駆け回るというのは難しくなると思いますが、今の本多病院の規模だからこそ、直接話しに行く、会いに行くという姿勢は大切にしています。

リーダーシップの前提として、誰かが思い描く「理想のリーダー像」が、すべての人や組織に当てはまるわけではないと思っています。それぞれの良さを活かしたリーダーシップの形があるはずです。自分の場合は、組織を前向きに引っ張っていく「明るさ」や「前向きさ」が強みだと感じています。そうした持ち味を活かしながら、周囲をうまく巻き込み、モチベーターとしての役割を果たせるリーダーでありたいですね。
若手医師支援でやっていること「Generalist Bar(ジェネラリスト・バー)」
本多病院の院長としての仕事以外にも、日本プライマリ・ケア連合学会の専門医部会「若手医師支援部門」に所属し、活動しています。
そもそも「若手」とは誰を指すのか。研修医かもしれませんし、専攻医かもしれません。あるいは、へき地で一人で働き始めたばかりの医師も、その土地での経験という意味では“若手”と言えるかもしれません。まずは「若手ってどこを指すんだろう」とメンバー全員で考えるところから始め、学会発表の立ち上げなどを含めて、さまざまな方向から支援ができるよう取り組んでいます。私と同年代の、全国の総合診療医と、チームを組んで活動しています。

もう一つ取り組んでいるのが、「Generalist Bar(ジェネラリスト・バー)」です。LINEのオープンチャットにある「ライブトーク」という、ラジオのような機能を使い、ゲストをお招きして、総合診療にまつわるさまざまな話をしています。「Bar」という名前の通り、私自身は“マスター”の役割を担っています。「誰かの心に刺さればいいな」という思いで、2週間に1回から1か月に1回のペースで開催しています。
現在は医師向けに約460名の方が参加してくださっていますが、今後はさらに輪を広げていきたいと考えています。
若手医師へ伝えたいこと——「人との繋がりを、一つひとつ大切にしていく」
私自身、医師になって10年を迎えています。この“医師になって10年経った”というタイミングは、キャリアの中でも一つの転換期だと感じています。実際、周囲を見渡してみても、「大学病院を離れて市中病院でポストに就いている人」もいれば、「法人から運営を任され、院長や役員という立場になっている人」もいます。大学に残り、研究や教育の分野で、さらに上を目指している人もいます。
同級生とお酒をの飲みに行くと「次はどうする?」という話題になることも多いですね。さまざまな選択肢がある中で、ちょうど立ち止まって考える時期が、医師になって10年になった頃なのだと思います。
そんなキャリアの中で、私が大事にしていることは大きく2つあります。
1つ目は、「人とのつながりを、一つひとつ本当に大切にしていくこと」です。すべての出会いが、すぐに自分にとってプラスになるとは限りません。ただ、いつ、どんな形でチャンスが巡ってくるかは分からないものです。人との出会いやつながりを大切にしていくことが、結果的にキャリアの選択肢を広げてくれるのだと思っています。
もう1つは、「自分がやりたいことを発信すること」です。常に発信し続けることで、それがいわば“言霊”のようになり、現実につながっていくのではないかと感じています。発信を含めて、行動しなければ何も起こりません。そうした積み重ねが、今の自分のキャリアにつながっているのだと思います。
人との繋がりを大切にしながら積み重ねた信頼と、そこから巡ってきた理事長・院長というオファー。
「行動しないと、何も起こらない」——言葉と行動で周りを巻き込んでいく、市民病院のリーダーとしての挑戦は続いていきます。
前回【前編】では、小児科医を目指していた石川先生が、総合診療医の道を選んだ背景とは。
実際に“へき地”と言われる場所で経験した、地域の方々との温かな関わり、そして当時の思いも振り返っています。
医療法人社団 静恒会 本多病院(設立:1935年)HP:https://www.seikou-kai.jp/
内科、外科、整形外科などを有し、一般急性期病床と地域包括ケア病床を備えるケアミックス病院。『質の良い 安全な医療を 地域の皆さまに提供する』を理念に掲げ、コミュニティ&コミュニティホスピタルとして、地域に密着し、地域に必要とされ、地域に貢献する医療サービスの提供を目指している。
メディカルジョブアワード2026は 2月28日(土)に開催
石川 輝先生のお話を直接会場で伺える「メディカルジョブアワード2026」は2026年2月28日に開催いたします。ぜひ、お申込みの上でご参加ください。
※企業様のご参加は、スポンサーの方のみ受け付けています。
info@med-pro.jpまでご連絡ください。






