海外に渡航する際は、現地の感染症や衛生環境への備えが欠かせません。特に中国に行く際は、感染症対策・食品衛生・ワクチン接種について知識を持っておくと安心です。私も初めて中国を訪れた際は不安でしたが、事前に調べて準備したおかげで健康に過ごせました。安全に旅を楽しむために、渡航前に確認しておきたいポイントをまとめます。

中国で流行する感染症とは

中国は国土が広大で地域によって気候も様々です。そのため地域ごとに注意すべき病気も異なりますが、以下のような感染症が報告されています。

  • 食中毒・赤痢・腸チフス:特に暑い季節(5~10月)の北京では、食中毒や赤痢、腸チフスなど胃腸系の感染症が多発します 。調理されたものは十分に加熱され、熱いうちに食べることが大切です 。
  • 狂犬病:犬に噛まれて感染する狂犬病は、中国では毎年多数の死亡例があり、北京や上海など都市部でも感染報告があります 。動物にはむやみに手を出さないようにしましょう 。
  • 鳥インフルエンザ:鳥インフルエンザ:鶏やアヒルなどの家禽から感染する高病原性インフルエンザ(H7N9型など)の発症報告もあります。
  • マラリア:雲南省や海南省など南部・中部の一部地域ではマラリアの発生があります 。都市部でのリスクは低いですが、該当地域に行く場合は蚊に刺されない対策が必要です。 •住血吸虫症:湖や河川に生息する寄生虫による感染症で、中国では長江流域など一部で報告されています 。汚染された淡水に皮膚から感染するため、川や湖で直接水に触れないよう注意してください 。

このほか、日本ではあまり見られない感染症(例:結核や麻疹など)も依然として存在します。日頃から報道や厚労省検疫所の情報をチェックし、渡航先で流行している病気がないか確認しましょう。

食品・飲料での注意点

旅先で美味しいものを楽しみたい反面、食べ物や飲み物が原因の体調不良は避けたいですよね。中国の屋台料理は魅力的ですが、選び方と衛生管理に気をつけることが大切です。筆者も現地の夜市で色々な料理に挑戦しましたが、アツアツの出来立てだけを選ぶようにしていたからか、運が良かったのか、幸い一度もお腹を壊したことはありませんでした。以下、食品・飲料の具体的な注意点をまとめます。

  • 水・氷に注意:基本的に水道水はそのまま飲まないようにしましょう。飲料は市販のミネラルウォーターを利用し、歯磨きやうがいにもできるだけペットボトル水を使うと安心です。コンビニ売られている水はとても安く手に入るので、現在でも不便には思ったことないです。氷も衛生が不確実な屋台では避け、飲み物は氷抜きで注文するか瓶入りのものを選びましょう。
  • 屋台・ローカル食堂の利用:評判の良い店を選び、料理は十分加熱された熱々の状態で提供されるものを食べるよう心がけます 。長時間放置された食品や生焼けの串焼きは避けてください。見た目や匂いがおかしいものは無理に食べないことも必要です。
  • 生もの・加熱不足の食品:刺身や生ガキなどの生鮮食品、生焼けの肉や魚は避けましょう。中国でもお刺身を出す店がありますが、新鮮さや冷蔵管理に不安が残ります。野菜サラダも生水で洗われている可能性があるため注意が必要です。生野菜より加熱料理を、生卵より固ゆで卵を選ぶなど工夫しましょう。ちなみに私も刺身や生卵を食べることがありますが、あまりローカルなお店は選ばず、衛生面に信頼のおける少し高めのお店にしているせいか、これまで体調を崩したことはありません。
  • 果物の扱い:屋台のカットフルーツは美味しそうですが、洗浄や保存状態が不明です。果物は自分で皮をむいて食べられるもの(バナナやみかん等)を選ぶか、一度きれいな水で洗ってから口にするようにします。
  • 乳製品・その他:ヨーグルトや生乳など未殺菌の乳製品にも注意が必要です。大都市では品質管理された製品が多いですが、地方では要注意です。また、市販のアイスクリームやデザートも冷凍状態が保たれていないと食中毒の原因になりえます。基本は「加熱・殺菌されたもの」を選ぶことが安全策です。
成都の夜市に行った時
北京の夜市に行った時

ワクチン接種のおすすめと入手法

渡航前にどんな予防接種を受けるべきかは迷うところですよね。実は中国に渡航する際、原則として義務付けられているワクチンはありません(※黄熱病流行国からの入国を除く)。しかし、安心して滞在するために予防接種は強く推奨されています。

特に留学や長期滞在者は、学校の入学手続きや奨学金申請時に予防接種証明書の提出を求められる場合もあります 。母子手帳などで自分の接種履歴を確認し、未接種のものがあれば渡航前に受けておきましょう。

渡航前に推奨される主なワクチン

  • A型肝炎ワクチン:汚染された水や食べ物からうつる肝炎です。中国では日本よりA型肝炎の発症リスクが高いため、短期の旅行者でも接種が推奨されています 。2回以上の接種が必要で、完了まで時間がかかるので早めに準備しましょう。
  • B型肝炎ワクチン:血液や体液を介して感染する肝炎です。中国や東南アジアはB型肝炎ウイルスの保有率が高く 、医療従事や長期滞在者は特に注意が必要です。1ヶ月以上の長期滞在予定者には接種が勧められます 。一度抗体ができれば長期間効果が続きます 。
  • 破傷風トキソイド(破傷風ワクチン):ケガをした傷口から侵入する菌による感染症です。渡航中に転倒や怪我をする可能性もあるため、最新の破傷風トキソイドを接種済みか確認しましょう。日本の定期接種を受けていればおおむね免疫がありますが、最終接種から10年以上経過している場合は追加接種を検討してください。
  • 日本脳炎ワクチン:日本脳炎ウイルスを持つ蚊に刺されることで発症する病気です。中国では都市部ではほぼ心配ありませんが、農村部や東南部への長期滞在ではリスクがあります 。田舎に赴く予定がある人や駐在員のお子さん等は事前に接種を検討しましょう。
  • 狂犬病ワクチン:狂犬病は致死率ほぼ100%の恐ろしい病気ですが、ワクチン接種で発症を防ぐことができます。犬や猫など動物と接する可能性がある場合や、地方を旅行する予定がある場合は予防接種を強く推奨します 。中国では狂犬病ワクチンの入手が限られる地域もあるため、日本で余裕をもって接種しておくと安心です。 •そのほかのワクチン:季節性インフルエンザワクチンは毎年流行株が変わるので渡航前に最新のものを接種しましょう 。新型コロナウイルスワクチンも最新の接種を済ませておくと安心です。さらに、麻疹・風疹・おたふく風邪(ムンプス)・水痘などのいわゆる子どもの頃の予防接種も漏れなく受けているか確認してください。日本では任意接種のおたふく風邪ワクチンや、定期接種化が遅れた水痘ワクチンなどは世代によって未接種の場合があります。私自身も渡航する前に、おたふく風邪ワクチンと水痘ワクチンは以前一度接種済でしたが、新たに接種していきました。渡航中にこれらに感染すると勉強や仕事に支障が出ますので、抗体がない病気については事前に予防接種を受けることをおすすめします。

ワクチンはどこで受けられる? 入手方法

渡航者向けの予防接種は、トラベルクリニックや渡航外来を実施している医療機関で受けられます。例えば、東京の「日中友好医院」(参考:http://jcf-clinic.com/vaccination/index.html)など渡航医学に詳しいクリニックでは、中国渡航者向けの主要なワクチンを一通り取り扱っています 。ちなみに奨学金申請の時の体格検査もこちらの病院でできます。お住まいの地域でも、自治体の予防接種センターや検疫所提携の病院がある場合があるので確認してみましょう。
また、厚生労働省の予防接種実施機関の探し方 を参考にするのもおすすめです。
(参考:https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/vaccination.html)ワクチンによっては複数回の接種と一定の間隔が必要です(例:A型肝炎・B型肝炎は計2~3回、狂犬病は3回接種など )。そのため、渡航直前では間に合わないこともあります。ビザや渡航日程が決まったら、できるだけ早めに医療機関に相談して接種計画を立てることが重要です。

日常生活での予防法

現地での日常生活における感染症予防のポイントを押さえておきましょう。ちょっとした心がけで病気のリスクを大きく下げることができます。•手洗い・消毒の徹底:感染症予防の基本は手洗いです。外出先から戻った時や食事前、トイレの後などは石けんで丁寧に手を洗う習慣をつけましょう 。流水と石けんで20秒以上かけて洗うのが理想です。水が使えない場面ではアルコール消毒液を持ち歩き、適宜利用してください。

  • マスク着用・咳エチケット:人混みや密閉空間に行くときは、状況に応じてマスクの着用も検討しましょう。特にインフルエンザが流行している季節や、昨今の新型コロナの状況を踏まえると、マスクで飛沫を防ぐことは自分と周囲の安全につながります。咳やくしゃみをするときは腕で覆うなどエチケットを守りましょう。
  • 虫刺され対策:蚊やダニを媒介とする病気の予防には虫除け対策が有効です。虫が多い地域では長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を減らしてください。さらにディート(DEET)配合の虫よけスプレーを肌や衣服に使用しましょう。宿泊先でも窓の網戸をチェックし、必要に応じて蚊帳を利用します 。特に夕方から夜間にかけての屋外では注意が必要です。
  • 動物との接触に注意:可愛い野良犬や野良猫を見かけても、むやみに近寄ったり触ったりしないでください 。動物が持つ病原体(狂犬病ウイルスやノミ・ダニなど)に曝露されるリスクを避けるためです。やむを得ず動物に触れた場合は、すぐに手を洗い消毒しましょう。動物園やペットショップでも触れ合い後の手洗いをお忘れなく。
  • 身の回りの衛生管理:現地では飲食物以外にも、日用品の衛生にも気を配ります。例えば、ハンカチやティッシュを常に携帯し、公衆トイレ利用後はジェル消毒液で手指を清潔に保つなどしましょう。屋台で使う箸や食器はできれば使い捨てのものや自分で持参した清潔なものを使うと安心です。部屋の中もこまめに清掃し、ゴミは蓋付きのゴミ箱に入れて虫を寄せ付けない工夫をしましょう。

最後に

日常の予防策を徹底しつつ、無理せず健康管理することも大切です。十分な睡眠と栄養をとり、疲れをためないように心がけてください。もし体調に異変を感じた場合は早めに現地の医療機関を受診しましょう。北京や上海など大都市には日本語や英語が通じるクリニックもあり安心です 。備えあれば憂いなし。事前の準備と予防策をしっかり整えて、安全で楽しい中国滞在をお過ごしください!

参考
  1. 中国渡航前ワクチン・予防接種
  2. 中国渡航時に推奨されるワクチン(予防接種)
  3. 厚生労働省 検疫所 FORTH
  4. 中国留学前の予防接種に行ってきた!
  5. 医療法人社団 日中友好医院
  6. 予防接種実施機関の探し方

Xも日々更新しております!
最新記事掲載時は、Xでご案内いたします!
ぜひフォローを宜しくお願いします。

Visited 5 times, 1 visit(s) today