中国の病院では、365日24時間体制の医療提供が義務づけられており、それを支えているのが「値班(当直)制度」です。本記事では、その基本構造、当直医の資格、勤務ルール、交代制度、診療科による違いまで、日本との違いも交えて解説します。

値班(当直)制度の基本原則

中国の病院では、《医疗机构管理条例》や《医师值班及交接班制度》に基づき、全院で統一された当直体制を設けています。臨床部門だけでなく、検査・画像診断・看護部門も含め、24時間対応が基本です。週末・祝日も例外ではありません。

当直時間の分類

  • 白班(日勤):08:00〜11:30/14:00〜17:30(2部制)
  • 夜班(夜勤):20:00〜翌08:00(または22:00開始の場合もあり)
  • 急診(救急)当直:24時間交代制、常時医師がローテーション勤務

※外科・内科などでは「24時間連続当直→翌日も日勤継続」といった過酷な勤務も。

当直医の資格と三層構造

中国の大病院では、当直医は3段階(層)に分類され、それぞれに明確な役割があります

区分担当者主な役割
一線住院医、若手主治医など初期診療、病棟対応、急変処置など
二線高年次主治医(3年以上)など一線医師の支援・判断補助など
三線副主任医師以上など呼び出し対応、高度判断など

※資格が不足する場合は、上位職の医師が下位業務を代行します。

勤務・交代ルール

  • 常駐義務:一線当直医は病棟から離れることは禁止。
  • 交代勤務(交接班):患者の病状や治療内容などを記録し、口頭+書面+ベッドサイド引き継ぎ(特に重症・術後患者)が義務。
  • 記録の厳格化:交代簿に署名と時刻を記録。責任の所在を明確に。
  • 上級医への報告フロー:一線 → 二線 → 三線 → 総当直 → 医務管理部門および院の担当副院長

診療科による違い

  • 外科系:08:00〜翌08:00の24時間制が一般的。夜勤明けも手術・外来に従事することが多い。
  • 救急科:完全24時間交代制。救急と通常外来が交互に勤務。
  • 専門外来:基本的に夜勤なし。必要に応じて当直医が対応。

まとめ

中国の病院では、常にどの時間帯でも医師が勤務している体制が基本であり、具体的な当直スケジュールは病院や診療科によって異なります。ただし、すべてに共通する目的は「患者の安全と医療サービスの継続性の確保」です。

※具体的な当直体制を知りたい場合は、各病院の医務部門に直接問い合わせることが推奨されます。

副業・掛け持ち勤務:「走穴」 vs 「多点执业」

  • 「走穴」 – 非合法なアルバイト: 本来所属している病院の許可なく、他院で報酬目的に診療行為を行うことを指します(日本で言う無断副業に相当)。資格の有無を問わず誰でも行え、高額報酬を得られますが未申告が普通で、医療事故時の責任は全て個人に及びます。社会的には「医師の闇市場」とみなされ、摘発されれば非法行医(無許可医療)として処罰対象です 。
  • 「多点执业」 – 合法な複数勤務地勤務: 政府公認のもと、一定の資格要件を満たす医師が複数の医療機関に登録して勤務する制度です。一般に主治医以上の中級職で5年以上の経験がある医師が対象で 、所属病院の事前同意と当局への登録手続きが必要です。報酬は各勤務先と正式契約を結び税務申告もされます。制度上は合法ですが、複数勤務地で働く医師は昇進や福利厚生面で制約を受ける場合もあり 、現状ではあまり普及していません。
  • 補足: 政策的には「走穴」を撲滅し「多点执业」という公認プラットフォームへの移行が図られていますが、高収入を得やすいアルバイト(走穴)の方が医師に選ばれがちという指摘があります 。

「宿直医」が存在しない理由

日本で見られる「宿直医」は中国には存在しません。理由は以下の通り

  • 夜間も実働が前提であり、当直は実際に働く勤務とされる
  • 医師は1つの医療機関にしか登録できず、宿直バイトのような働き方は制度上不可
  • 当直は交代制であり、複数層の医師が常時対応できる仕組みがあるため •特殊事例はあるが定着せず: 北京・上海の一部私立病院で試験的に「夜勤専任医」が置かれた例や、日系病院での導入事例もありました。しかし、いずれも離職率の高さや院内評価の低さ、さらには地元医師からの反発といった要因で長続きしていません。夜勤専任医は現状、中国の医療界では例外中の例外と言えます。

まとめ

中国の当直制度は、医療の継続性を確保するための24時間対応体制で、一線から三線までの層別当直が特徴です。勤務後の休息は病院や診療科によって異なり、連続勤務となることもありますが、効率的なローテーションや制度改善も進められつつあります。

また、一部大病院ではAIによる「スマート排班(自動シフト管理)」が導入され、勤務の偏りを是正し、医師の負担軽減と公平な労働環境の実現が期待されています。これらの改革は、持続可能な夜勤体制と医師の働き方改革を目指す全国的なモデルケースとして注目されています。

参考
  1. 【医生24小时值班制度休息时间规定 – 九松健康】
  2. 赵英杰老师:浅谈神经外科医生的日常工作
  3. “跑场费”7000元起,多点执业斗不过医生走穴-新华网
  4. 【提醒】医务人员加班,该发加班费还是补休
  5. 【注意 | 新考执业医师多点执业!助理可以吗?】
  6. 【卫生部关于医师多点执业有关问题的通知】
  7. 【有任何法律问题,来法行宝咨询~您的免费AI律师!】
  8. 【有任何法律问题,来法行宝咨询~您的免费AI律师!】
  9. 【如何看待医生兼职和走穴—-中国科学院】
  10. 中国医生,到底多少天要值一次夜班?
  11. 【医院高质量发展】值班与交接班制度解读】
  12. 【医院每个时间段都有值班医生吗 – 九松健康】
  13. 【核心制度】医疗质量安全核心制度要点释义(第二版)丨⑤值班和交接班制度-哈尔滨医科大学附属第六医院
  14. 大三甲医生工作时长样本调查:每天至少10小时,连轴转是常态
  15. 中国医生薪酬待遇调查
  16. 【AI值班信息管理系统:智能调度,轻松值守】

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