急成長を続ける中国の美容市場。その中心には、科学的スキンケアだけでなく、数千年の歴史を持つ中医学の知恵が融合した“新しい美のかたち”があります。
本記事では、実際に中国で医療を学ぶ筆者が、現地で体験したリアルなスキンケアルーティンや美容医療の実態、そして注目を集める中医美容の最前線をレポート。
中国女子の定番スキンケアブランド
まず、中国の若い女性に人気のスキンケアブランドを見てみましょう。 意外なことに、SK-IIやエリクシール、コスメデコルテといった日本製の高級エイジングケアブランドが、10代・20代の中国女子にとって定番となっています。本来は30代以上をターゲットにしたハイエンド化粧品ですが、中国のSNSでは「エイジングケアは早く始めるべき」といった声が多く、実際に20代前半からSK-IIを5年以上愛用している女性もいるほどです。これらの製品は、保湿力やハリの向上に定評があり、乾燥しやすい中国の大陸性気候において、若いうちから乾燥やくすみを防ぎたいというニーズに合致しているようです。実際、中国では乾燥した風の影響で乾燥肌に悩む人が多く、保湿機能の高いスキンケア製品が好まれています。
2025年の最新ランキング(百度優選)によれば、トップ10は以下の通りです:
1位:LA MER(ラ・メール)
2位:Estée Lauder(エスティーローダー)
3位:Helena Rubinstein(ヘレナ・ルビンスタイン)
4位:LANCOME(ランコム)
5位:L’ORÉAL(ロレアル)
6位:SHISEIDO(資生堂)
7位:Kiehl’s(キールズ)
8位:CLARINS(クラランス)
9位:SK-II
10位:WINONA(薇诺娜)
エリクシールやコスメデコルテはこちらのランキングには入っていませんが、SK-IIは現在も引き続き高い人気を誇っています。
一方、近年は中国発の国産ブランドも急成長を遂げています。
2023年の「ダブル11(独身の日)」セールでは、スキンケア部門のトップ20にPROYA(珀莱雅)、WINONA(薇诺娜)、QUADHA(夸迪)、CHANDO(自然堂)といった中国ブランドが多数ランクインしました。なかでも珀莱雅は20〜40代と幅広い世代に支持される人気ブランドで、肌再生技術を応用したエイジングケア製品が看板商品です。高い保湿力と浸透力を備え、ほうれい線や目元のシワを目立たなくするクリーム(100mLで約289元=約6,000円)など、効果実感にこだわった製品が支持を集めています。 また、WINONA(薇诺娜)のように、敏感肌向けの低刺激処方に特化したブランドも注目されています。実際、中国では「敏感肌」を自認する女性が約3割にのぼり、安全で刺激の少ない成分を求める傾向が強まっています。こうした背景から、国産ブランドの品質向上も相まって、「自分の肌に合ったものを選びたい」「手頃な価格で続けたい」と考える人が増え、国産ブランドへの支持が急速に高まっているのです。
美容皮膚科でのケアが当たり前?
中国の20〜30代女性の間では「美肌ブーム」が加速しており、専門家の手を借りた美容ケアもごく一般的になっています。朝晩のセルフケアはもちろん、定期的にフェイシャルエステに通う人も多く、その感覚は日本でネイルサロンに行くのと同じような手軽さだと感じます。エステは高級スパからリーズナブルなローカル店までさまざまあり、通いやすく「美容が日常の一部」として定着しています。
さらに、美容皮膚科(医療美容)の利用者も年々増加しています。レーザーや光治療(フォトフェイシャル)、ケミカルピーリング、ヒアルロン酸注射、ボトックス、プチ整形など、多彩な施術が気軽に受けられる環境が整っており、中国全土で美容クリニックの数も拡大しています。
美容医療には高額なイメージがあり、日本ではなかなか挑戦することができませんでしたが、中国では比較的リーズナブルに受けられるため、気軽に試すことができ、私自身も中国滞在中に、1回あたり約2,000円で光治療を定期的に受けています。施術の効果は実感できましたし、清潔感のあるクリニックで、施術前後には担当アドバイザーが付き、内容説明や次回予約などを丁寧にサポートしてくれる点にも安心感がありました。 このような美容医療の普及には、中国における美容意識の高まりや経済力の向上も影響しています。また、大気汚染や強い紫外線などの外的ストレスが多い都市部では、肌トラブルを防ぐために早めに専門家の力を借りるという意識も根付きつつあります。


中医学×美容の融合ケアとは
最後に、中国ならではのアプローチとして注目されているのが、中医学(伝統中国医学)と美容の融合です。
中国には「医食同源」や「内外兼修」といった思想が根付いており、健康と美容は身体の内外からバランスよく整えるものと捉えられています。
最近ではこの伝統医学の知見を、現代スキンケアに応用する「中医美容」が注目されています。たとえば、相宜本草(Inoherb)、佰草集(Herborist)、東辺野獣(Herbeast)などのブランドは、甘草(カンゾウ)や霊芝(レイシ)などの生薬成分を配合したコスメを展開しています。Herbeastは霊芝の美容効果に着目して生まれたブランドで、設立からわずか2年で漢方コスメ部門の売上1位を記録するなど、話題を集めました。その他、谷雨は甘草成分による美白ラインを展開し、溪木源(SIMPCARE)は山茶花エキスを主成分に据えるなど、多くのブランドが漢方植物エキスを活用しています。
消費者の間でも、「自然由来で安心できる」「食品グレードの原料で肌にやさしい」といった理由から、こうした製品への関心が高まっています。特にコロナ以降、安全性や低刺激を求める傾向が強まり、漢方美容成分が再評価されているのです。
さらに、美容鍼やカッサ(刮痧)など中医由来の施術も人気を集めています。
中国の美容クリニックでは、顔の経絡やツボを刺激する美顔鍼灸や、薬膳フェイスマスク、漢方アロマによるマッサージなどが提供されています。美容鍼によって血行を促進し、カッサでリンパの流れを改善することで、むくみやくすみが軽減されるとされており、実際にリピーターも多いです。
中医美容は数千年の歴史があり、『本草綱目』には美容に効果があるとされる生薬が500種類以上記載されています。このような伝統知識と最新の美容技術が融合することで、「中医×美容」という新たなトレンドが中国で確実に広がっています。
まとめ
今回ご紹介した中国のスキンケア文化は、伝統医学・美容医療・日々のセルフケアが融合した“総合的な美の習慣”でした。若いうちから肌と丁寧に向き合う姿勢は、美容にとどまらず、医療や健康観にも通じる新たな視点を私たちに与えてくれます。
参考
1.【护肤品品牌排行】
2.https://cte.trendexpress.jp/blog/20181023-ranking.html
3.https://tnc-trend.jp/china113/
4.中国美容市場の最新トレンドを発信する「China Cosmetic Lab」が企業向けに中国トレンドのリサーチ&レポートサービスの提供を開始 | CULTA株式会社のプレスリリース
5.https://www.wwdjapan.com/articles/1451515
6.https://precious.jp/articles/-/50991
7.构建“中医药+”融合发展格局 中医美容开辟新赛道_凤凰网
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