医師という職業は、患者の命を預かる重責と不規則な勤務時間、そして絶え間ない学習要求により、心身ともに極めてハードな環境にあります。このような状況下で働く医師にとって、休日の過ごし方は単なる娯楽ではなく、持続可能なキャリアを築くための重要な要素となります。
適切な休日の過ごし方は、ストレス軽減、創造性の向上、そして仕事への新たなモチベーション創出に直結します。今回は、医師が心身ともにリフレッシュできる効果的な休日の過ごし方を、具体的な実践例とともに5つのカテゴリーに分けてご紹介します。
1. 趣味への没頭による完全なリフレッシュ
医師にとって趣味の時間は、医療現場での緊張状態から完全に解放される貴重な機会です。好きなことに没頭することで、仕事のストレスから解放され、心身を深くリフレッシュすることができます。
読書による知的刺激と現実逃避
読書は医師にとって特に効果的な趣味の一つです。小説を通じた現実逃避では、ファンタジー作品が特におすすめです。J.K.ローリングの「ハリー・ポッター」シリーズは魔法の世界に浸ることで子供心を取り戻し、J.R.R.トールキンの「指輪物語」では壮大なファンタジー世界に没頭できます。アンディ・ウィアーの「プロジェクト・ヘイル・メアリー」のような宇宙を舞台にしたSF小説は、スリリングな展開で日常から完全に離れることができます。
医療従事者ならではの楽しみ方として、医療ミステリー小説も人気です。海堂尊さんの「チーム・バチスタの栄光」シリーズは医療現場の裏側をリアルに描き、知念実希人さんの「仮面病棟」などの作品はサスペンス要素を加えた医療ミステリーとして高い評価を得ています。
専門書の読書も、知識のアップデートを図りながらリフレッシュできる一石二鳥のアプローチです。最新の医学知識や治療法を学ぶことで、知的好奇心を満たしながら職業的成長も実現できます。
映画鑑賞による感情的解放
映画は短時間で強力な感情体験をもたらし、日常からの完全な逃避を可能にします。感動系では「ショーシャンクの空に」の友情と希望のテーマや、「ライフ・イズ・ビューティフル」の親子愛を描いた深い物語が心を動かします。
コメディ映画では「モンティ・パイソン」シリーズのナンセンスな笑いや、「ハングオーバー!」シリーズのハチャメチャな展開で思いっきり笑うことができます。医療系映画では「パッチ・アダムス」の実在医師を描いた作品や、「ドクター」の医療現場を見つめ直す物語など、職業的共感を得ながら新たな視点を獲得できます。
音楽鑑賞による心の調律
音楽は医師の心身状態を効果的に調整できる強力なツールです。心を落ち着かせたい時にはクラシック音楽が最適で、モーツァルトの美しいメロディーとハーモニーは心をリラックスさせ、バッハの荘厳で深みのある音楽は集中力を高めてくれます。
リラックス効果を求める場合はジャズがおすすめです。マイルス・デイヴィスのクールでスタイリッシュな音楽や、ジョン・コルトレーンのスピリチュアルなジャズは心を解放してくれます。気分を上げたい時にはロック音楽が効果的で、ビートルズの普遍的な楽曲やクイーンの壮大なスケールの音楽でエネルギーを補充できます。
スポーツによる身体的リフレッシュ
身体を動かすことは、医師の職業病である運動不足解消と同時に、強力なストレス解消効果をもたらします。ジョギングは手軽に始められる運動として人気で、Nike Run ClubやRuntasticなどのランニングアプリを活用すれば記録や分析も可能になります。
本格的な体力向上を目指す場合は、ジムでのトレーニングが効果的です。パーソナルトレーニングを利用すれば専門トレーナーの指導のもと、効率的に身体を鍛えることができます。ヨガは柔軟性向上とストレス軽減の両方に効果的で、YouTubeチャンネル「B-Flow」などを活用すれば自宅でも本格的なヨガを実践できます。
旅行による環境変化
旅行は医師にとって最も効果的なリフレッシュ方法の一つです。じゃらんnetや楽天トラベル、Yahoo!トラベルなどの旅行サイトを活用すれば、お得なプランを見つけることができます。
国内旅行では温泉地が特に人気です。日本三名泉の一つである草津温泉は効能豊かな温泉として知られ、箱根温泉では様々な泉質の湯めぐりを楽しめます。関西を代表する有馬温泉では金泉と銀泉の2つの異なる泉質を体験できます。
自然を求める場合は、上高地の雄大な穂高連峰、尾瀬の静寂な湿原と湖沼、屋久島の神秘的な縄文杉など、それぞれ異なる自然の魅力を体験できます。
海外旅行では、ヨーロッパのパリ、ローマ、バルセロナなどで歴史的建造物や芸術作品に触れたり、ハワイ、モルディブ、沖縄などのビーチリゾートで心身を癒したりできます。
その他の趣味による多様なアプローチ
最新ゲームではPlayStation 5、Nintendo Switch、Xbox Series Xなどのコンソールで話題の作品を楽しんだり、昔懐かしいレトロゲームで童心に帰ったり、カードゲームで友人や家族と交流したりできます。
料理では、クックパッドやDELISH KITCHENなどのレシピサイトを参考に新しいレシピに挑戦したり、ローストビーフや手打ちパスタなど手の込んだ料理で創作の喜びを味わったりできます。
DIYでは、カインズホームやコーナン、島忠などのホームセンターで材料を調達し、家具組み立てや部屋の模様替えで住環境を改善しながらリフレッシュできます。
2. 家族や友人との絆を深める時間
医師という職業は時として孤独感を感じやすいものです。大切な家族や友人と過ごす時間は、心を温かくし、人間関係の絆を深める貴重な機会となります。
家族旅行による共有体験
家族との時間を大切にするためには、共通の体験を通じた絆作りが効果的です。ディズニーリゾートは子供から大人まで楽しめる夢の国として、家族全員が同じ感動を共有できます。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンではハリウッド映画の世界を体験しながら、非日常的な時間を過ごせます。
旅行先としては、沖縄の美しい海や自然環境、北海道の雄大な自然と美味しい食べ物など、それぞれ異なる魅力を持つ地域で家族の絆を深めることができます。
友人との食事による社交的リフレッシュ
友人との食事は、医師の社交的な側面を満たす重要な時間です。東京の高級レストランでは、鮨あらい、鮨よしはる、さいとうなどのミシュラン三つ星店での鮨、龍吟、神楽坂石かわ、かんだなどの和食、ジョエル・ロブション、ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション、Quintessenceなどのフレンチで特別な時間を過ごせます。
カジュアルな選択肢としては、木曽路のしゃぶしゃぶと日本料理、塚田農場の地鶏料理と焼酎、くろきんの海鮮料理と日本酒など、落ち着いた雰囲気の居酒屋チェーンも人気です。
ホームパーティーによる親密な交流
自宅でのホームパーティーは、よりリラックスした環境で親しい人々との時間を楽しめます。クックパッドやDELISH KITCHENなどのレシピサイトを参考に、手作りピザを生地から作ったり、クリスマスや誕生日などの特別な日にローストチキンを準備したりすることで、料理の過程も含めて楽しい時間を共有できます。
3. 自然との触れ合いによる原始的癒し
自然に触れることは、都市部で働く医師にとって特に重要なリフレッシュ方法です。自然の風景、音、香りを感じることで、心身のリラックス効果が期待でき、ストレスを根本的に軽減することができます。
ハイキングによる適度な運動と自然体験
ハイキングは運動効果と自然体験を同時に得られる理想的な活動です。高尾山は初心者でも登りやすく都心からのアクセスも良好で、大山は美しい景色とともに充実したハイキングコースを提供しています。
これらの山々では、登山による適度な運動効果に加えて、森林浴による癒し効果、山頂からの達成感など、多面的なリフレッシュ効果を得ることができます。
キャンプによる非日常体験
キャンプは現代生活から完全に離れ、自然と一体になる貴重な体験です。富士山の麓のふもとっぱらキャンプ場や朝霧ジャンボリーオートキャンプ場では、雄大な富士山を眺めながら特別な時間を過ごせます。
湖畔でのキャンプでは、静かな環境の中で釣りやカヌーを楽しみながら、都市部では味わえない静寂と自然のリズムを体験できます。
釣りによる瞑想的時間
釣りは動と静のバランスが取れた自然体験です。東京湾や相模湾での海釣りは手軽に楽しめ、渓流釣りや鮎釣りなどの川釣りでは本格的な釣り体験ができます。湖での釣りでは、バス釣りやヘラ釣りなど様々な種類の魚を狙いながら、集中力を高めつつリラックスした時間を過ごせます。
釣りの待ち時間は自然の中での瞑想的な時間となり、日常の慌ただしさから解放される貴重な機会となります。
温泉による身体的・精神的回復
温泉は日本古来の癒し文化の集大成です。草津温泉、箱根温泉、有馬温泉など、それぞれ異なる泉質と効能を持つ温泉地では、身体の疲労回復だけでなく、精神的なリラックス効果も得られます。
温泉の成分による血行促進効果、温熱効果による筋肉の緊張緩和、そして自然環境の中での入浴体験は、医師の職業的ストレスを根本的に癒してくれます。
4. 文化的体験による感性の豊かさ
美術館、博物館、コンサート、演劇などの文化的体験は、医師の感性を刺激し心を豊かにする重要な要素です。これらの体験は知的好奇心を満たすとともに、創造性や想像力を育む効果があります。
美術館での芸術的感動
美術館での体験は、日常では触れることのない芸術的感動をもたらします。東京都美術館では上野公園の落ち着いた環境の中で様々なジャンルの作品を鑑賞でき、森美術館では六本木ヒルズの現代的な空間で最先端の現代アートに触れることができます。
芸術作品との対話は、医師の感性を豊かにし、患者との関わりにおいても新たな視点をもたらす可能性があります。
博物館での知的探求
博物館は知的好奇心を満たす絶好の場所です。国立科学博物館では自然科学に関する豊富な展示を通じて科学的思考を刺激し、東京国立博物館では日本の歴史や文化に関する深い理解を得ることができます。
これらの体験は医師としての科学的思考を新たな角度から刺激し、より広い視野での医療実践につながる可能性があります。
コンサートでの音楽的体験
生の音楽体験は録音では得られない特別な感動をもたらします。サントリーホールでのクラシック音楽コンサートでは、最高品質の音響環境で音楽の深さを体験でき、東京ドームなどの大規模会場では、多くの観客と共有する一体感を味わうことができます。
演劇による人間ドラマの体験
演劇は人間の感情や関係性を深く探求する芸術形式です。劇団四季の「ライオンキング」では壮大なミュージカルの世界に浸り、「オペラ座の怪人」では美しくも切ない物語に心を動かされます。
シアターサンモールやこまばアゴラ劇場などの小劇場では、より親密な空間で実験的な演劇を体験でき、人間の心理や社会問題について深く考える機会を得られます。
5. 何もしない時間の価値
現代社会では常に何かをしていることが求められがちですが、医師にとって「何もしない時間」は極めて重要です。積極的な休息は心身の回復を促し、より良いパフォーマンスを発揮するための基盤となります。
質の高い睡眠による根本的回復
睡眠は医師の健康維持とパフォーマンス向上において最も重要な要素です。睡眠時間をしっかりと確保し、質の高い睡眠をとることで、集中力や判断力の向上、ストレス耐性の強化が期待できます。
Sleep CycleやAutoSleepなどの睡眠アプリを活用すれば、睡眠の質を客観的に測定し、改善点を見つけることができます。医師という職業の特性上、不規則な勤務時間が避けられない場合も多いですが、可能な限り睡眠の質を向上させることが重要です。
読書によるパッシブなリラックス
ソファでくつろぎながらの読書は、アクティブな趣味とは異なるパッシブなリラックス効果をもたらします。この時間は純粋にリラックス効果を求める読書であり、知識や教養を深めることも副次的効果として期待できます。
好きなジャンルの本を手に取り、時間を気にせずにページをめくる行為は、日常の時間的プレッシャーから解放される貴重な体験となります。
音楽鑑賞による受動的癒し
リラックス効果のある音楽を聴きながら目を閉じる時間は、心を落ち着かせストレスを軽減する効果があります。この時間は音楽に身を委ね、何も考えずに音の世界に浸ることで、深いリラクゼーション状態を体験できます。
アロマテラピーによる嗅覚からの癒し
ラベンダーやカモミールなどのリラックス効果のあるアロマを焚くことで、嗅覚を通じた癒し効果を得ることができます。アロマテラピーは香りによってリラックス効果やリフレッシュ効果を得ることができ、他の活動と組み合わせることで相乗効果も期待できます。
まとめ:医師の持続可能な休日設計
医師の休日の過ごし方は個人の価値観や生活スタイルによって大きく異なりますが、共通して重要なのは「オンオフの切り替えをしっかり行い、心身を休ませること」です。
効果的な休日を過ごすためには、まず自分にとって何が最もリフレッシュ効果が高いかを理解することが重要です。アクティブな活動を好む人もいれば、静かな時間を求める人もいます。また、一人の時間を大切にする人もいれば、人との交流を重視する人もいます。
今回ご紹介した5つのカテゴリーを参考に、自分の性格や現在の心身の状態に最も適した過ごし方を選択し、組み合わせることで、理想的な休日を設計することができるでしょう。
重要なのは、休日の時間を「仕事のための準備期間」ではなく、「人生を豊かにするための貴重な時間」として位置づけることです。この視点を持つことで、休日が単なる疲労回復の時間から、人間としての成長と充実感を得る時間へと変化します。
医師という責任重大な職業だからこそ、休日の過ごし方にもプロフェッショナルな意識を持ち、戦略的にリフレッシュすることで、より充実した医師生活と豊かな人生を実現することができるでしょう。
次回予告:医師のストレス解消法の深掘り
続く第2回では、今回の休日の過ごし方をさらに発展させ、医師が日々のストレスを効果的に解消するための具体的な方法を詳しく解説します。趣味から運動、食事、睡眠、マインドフルネス、そして専門家のアドバイスまで、心身を癒す包括的なアプローチをご紹介予定です。医師の皆様の健康的で充実したライフスタイル構築にお役立てください。
著者:鎌形博展
医師、株式会社EN 代表取締役、医療法人社団季邦会 理事長、東京医科大学病院 非常勤医師

東京都出身。埼玉県育ち。
明治薬科薬学部を卒業後、中外製薬会社でMRとなるも、友人の死をきっかけに脱サラして、北里大学医学部へ編入する。
卒業後は東京医科大学病院救命救急センターにて救急医として従事。2017年には慶應義塾大学大学院にて医療政策を学び、MBAを取得。東北大学発医療AIベンチャー、東京大学発ベンチャーを起業した他、医療機器開発や事業開発のコンサルティングも経験。2019年、うちだ内科医院を継承開業。以降、2020年に医療法人季邦会(美谷島内科呼吸器科医院)を継承し、2021年には街のクリニック 日野・八王子を新規開業。2023年には株式会社EN創業。国際緊急援助隊隊員・東京DMAT隊員・社会医学系専門医。趣味はBBQ。43歳で剣道・フェンシングを再開