クリニックを開業するにあたって、物件選びは非常に重要な要素です。 なぜなら、物件はクリニックの「顔」となり、患者様にとっての第一印象を大きく左右するからです。 また、立地条件によって、集患力や経営の安定性も大きく変わってきます。

今回は、後悔のない物件選びのためのポイントを、わかりやすく解説していきます。

物件選びの重要性

  • なぜ物件選びが重要なのか?
    物件は、クリニックの立地、広さ、設備、雰囲気などを決定づける要素であり、患者様だけでなく、働くスタッフにとっても重要なものです。 良い物件を選ぶことは、患者様の満足度向上、スタッフのモチベーション向上、そしてクリニックの成功に繋がります。
  • 物件選びを失敗するとどうなるか?
    物件選びを失敗すると、以下のような問題が発生する可能性があります。
    ◦集患が困難になる: 人通りの少ない場所や、アクセスが悪い場所では、患者様に来院してもらうことが難しくなります。
    ◦経営が不安定になる: 高すぎる家賃や、不適切な広さの物件では、経営を圧迫する可能性があります。
    ◦スタッフのモチベーションが低下する、採用が困難になる: 狭くて働きにくい環境や、通勤に不便な場所は、スタッフのモチベーションを低下させる可能性があります。求人への応募も少なくなる可能性があります。
    ◦クリニックのイメージダウン: 老朽化した建物や、清潔感のない物件は、クリニックのイメージダウンに繋がります。
  • 成功する物件選びのポイント
    成功する物件選びのポイントは、以下の3点です。
    ◦クリニックのコンセプトに合致していること: どのようなクリニックにしたいのか、ターゲット層は誰か、などを考慮して物件を選びましょう。
    ◦立地条件が良いこと: 駅からの距離、交通量、人通り、周辺環境などを考慮しましょう。
    ◦物件の条件が良いこと: 広さ、間取り、階数、家賃、共益費、契約条件などを考慮しましょう。
    ◦WEB上の立地が良いこと:昨今、集患の重要な要素であるWEB対策に取り組んでいる競合が少ないことは、重要な視点となっています。
    ◦連携施設が豊富であること:コンセプト、診療内容によっては地域の医療機関との連携がキーになる場合もあります。

物件探しの前に考えること

物件探しを始める前に、以下の点を明確にしておきましょう。

  • どんなクリニックにしたいか? (コンセプト): どのような診療科目で、どのような患者層をターゲットにするのか、どのような雰囲気のクリニックにしたいのかなど、コンセプトを明確にしましょう。
  • ターゲット層は誰か?: ターゲット層によって、適切な立地条件が変わってきます。例えば、高齢者をターゲットにする場合は、駅からの近さやバリアフリー対応などが重要になります。
  • 必要な広さは?: 診療科目、想定される患者数、スタッフ数などを考慮して、必要な広さを算出しましょう。
  • 予算はどのくらいか?: 家賃、共益費、敷金、礼金など、物件にかかる費用を考慮して、予算を設定しましょう。

物件探しの方法

物件探しの方法は、主に以下のものがあります。

  • 不動産業者への相談: 専門知識を持った不動産業者に相談することで、希望条件に合った物件を紹介してもらえます。
  • インターネット検索: 多くの物件情報サイトがあり、条件を絞り込んで検索することができます。
  • 地域情報誌: 地域情報誌には、地元の不動産情報が掲載されている場合があります。
  • その他: 知人からの紹介や、自分で街を歩いて探す方法もあります。

物件選びのポイント

物件を選ぶ際には、以下のポイントを考慮しましょう。

  • 立地条件
    ◦駅やバス停からの距離: 駅やバス停から近いほど、患者様にとってアクセスが良く、集患に有利です。
    ◦交通量: 交通量が多い道路沿いは、視認性が高く、集患に有利ですが、騒音や排気ガスに注意が必要です。中央分離帯があるような大通りよりも、交通量の多い片道1車線の生活道路の方が有利ということもよくあります。
    ◦人通り: 人通りの多い場所は、視認性が高く、集患に有利です。
    ◦周辺環境: 周辺に商業施設や公共施設がある場所は、患者様にとって利便性が高く、集患に有利です。
    ◦競合クリニック: 競合クリニックが多い場所は、集患が難しい可能性があります。
  • 物件の条件
    ◦広さ: 診療科目、想定される患者数、スタッフ数などを考慮して、適切な広さを選びましょう。
    ◦間取り: 診療科目や診療スタイルに合わせて、適切な間取りを選びましょう。
    ◦階数: 1階は、視認性が高く、アクセスが良いですが、家賃が高い傾向があります。2階以上は、家賃が安い傾向がありますが、エレベーターの有無などに注意が必要です。
    ◦家賃: 予算に合わせて、適切な家賃の物件を選びましょう。
    ◦共益費: 共益費は、建物の維持管理費などに使われます。家賃と合わせて、総額で検討しましょう。
    ◦契約条件: 契約期間、更新料、解約条件などを確認しましょう。まれに理不尽な契約内容のことがありますので、注意してください。
  • その他
    ◦駐車場の有無: 患者様にとって、駐車場の有無は重要なポイントです。
    ◦バリアフリー対応: 高齢者や障害者の方でも安心して来院できるよう、バリアフリー対応の物件を選びましょう。
    ◦近隣住民の層: クリニックのターゲット層と、近隣住民の層が合致しているか確認しましょう。

不動産業者との交渉術

不動産業者との交渉では、以下の点を意識しましょう。医院は長期間の賃貸が期待できる有料顧客であることをアピールすると良いでしょう。

  • 希望条件を明確に伝える: 希望する立地条件、広さ、予算などを明確に伝えましょう。
  • 物件のメリット・デメリットを把握する: 物件のメリットだけでなく、デメリットも把握した上で交渉しましょう。
  • 家賃交渉: 家賃交渉は、可能な範囲で行いましょう。
  • 契約条件の確認: 契約期間、更新料、解約条件などを確認し、納得した上で契約しましょう。

契約時の注意点

契約時には、以下の点に注意しましょう。

  • 契約書の内容をしっかり確認する: 契約書の内容をしっかり確認し、不明な点は必ず質問しましょう。
  • 契約期間、更新料、解約条件などを確認する: 契約期間、更新料、解約条件などを確認し、納得した上で契約しましょう。

まとめ

物件選びは、クリニックの成功を左右する重要な要素です。 クリニックのコンセプト、ターゲット層、予算などを考慮し、慎重に物件を選びましょう。 不動産業者との交渉や契約時には、注意すべき点があります。 しっかりと準備を行い、後悔のない物件選びをしましょう。

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2025/03/31
著者:鎌形博展
医師、株式会社EN 代表取締役、医療法人社団季邦会 理事長、東京医科大学病院 非常勤医師


東京都出身。埼玉県育ち。
明治薬科薬学部を卒業後、中外製薬会社でMRとなるも、友人の死をきっかけに脱サラして、北里大学医学部へ編入する。
卒業後は東京医科大学病院救命救急センターにて救急医として従事。2017年には慶應義塾大学大学院にて医療政策を学び、MBAを取得。東北大学発医療AIベンチャー、東京大学発ベンチャーを起業した他、医療機器開発や事業開発のコンサルティングも経験。2019年、うちだ内科医院を継承開業。以降、2020年に医療法人季邦会(美谷島内科呼吸器科医院)を継承し、2021年には街のクリニック 日野・八王子を新規開業。2023年には株式会社EN創業。国際緊急援助隊隊員・東京DMAT隊員・社会医学系専門医。趣味はBBQ。43歳で剣道・フェンシングを再開。

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