1. はじめに
聖路加国際病院・心臓血管外科の中村と申します。今日は、私が所属する病院ではなく、私たちが関わる「ハートアライアンス」についてご紹介させていただきます。
私は1993年生まれで、横浜で育ちました。2018年に医学部を卒業し、聖路加国際病院で初期研修を行いました。その後、心臓血管外科の後期研修を経て、現在7年目の心臓血管外科医です。研修中に他の病院での武者修行も経験し、このキャリアは「ハートアライアンス」の支援があってこそ達成できたものです。

2. ハートアライアンスとは
「ハートアライアンス」は、心臓血管外科の診療標準化と業務効率化を目指し、医療機関の枠を超えて協力するチームです。患者様、医療従事者、医療機関、そして社会のために医療の現場からイノベーションを起こすことをミッションにしています。
2016年に東京ベイと聖路加病院が医師の育成で連携を開始し、その後、虎ノ門病院が参加し、現在では順天堂大学病院やクリニックも加わり、首都圏を中心に活動しています。これらの施設では、心臓血管外科医だけでなく、循環器内科、麻酔科、看護師、理学療法士など、多職種が協力する「ハートチーム」として活動しています。
3. 心臓血管外科の現状と課題
日本全国で心臓血管手術の件数は増加しており、私たちの仕事もますます多忙になっています。ところが、働き方改革が進んでも、医師の時間外労働は依然として長く、80時間以上働く医師も多く見受けられます。現場の声では、働き方改革後も「労働時間は変わらない」と感じている医師が多く、外科医としての技術向上や専門医の育成に対する懸念も強いです。
特に、時間を削減すべき業務として研究や学会活動が挙げられ、これらを減らさなければ外科医として成長するのが難しいという現実があります。胸部外科学会では、施設集約化やタスクシフト(業務の振り分け)が必要だと提言していますが、これには多くの課題が残っています。
4. ハートアライアンスの取り組み
ハートアライアンスは、心臓血管外科における働き方改革と業務効率化を実現するために、以下の3つの重要な取り組みを行っています。これらの取り組みは、医療の現場における負担を軽減し、質の高い医療を提供するために欠かせない要素です。
1. 仕組みの共有
- 施設間での業務の標準化
- 手術器具、滅菌ドレープ、人工心肺回路の統一
- 手術説明資料の共通化
- 患者フォローアップ体制の標準化
2. 人の共有
- オンコール体制のシェア
- 医師の労働負担の軽減
- 診療看護師の活用
- 緊急手術の人員確保
3. 知識の共有
- 合同ウェビナーの定期開催
- 施設を超えた手術トレーニング
- 若手医師の交流によるモチベーション向上
5. まとめ
「ハートアライアンス」は、心臓血管外科の働き方改革を進め、医師の負担を軽減し、患者に質の高い医療を提供するための重要な取り組みです。これからも、多職種の協力や技術の共有を進め、医療現場でのイノベーションを生み出し続けることが求められます。私たち医師も、この取り組みを通じて、より良いキャリア形成と技術向上を目指しています。