マッチングに影響も？海外医学部卒が避けて通れない「日本語診療能力調査」

ここ最近、海外医学部を卒業した方が日本で臨床研修に参加するための制度がたびたび見直されていて、「制度が変わったらしい」「また元に戻るみたい」といった話が飛び交っています。はっきりした情報がつかみにくく、不安に感じた方も少なくないかもしれません。その中でも近年とくに注目されているのが、「日本語診療能力調査」です。
2025年度には、この調査への合格がマッチング参加の前提条件（「日本語診療能力調査の試験日（9月末）とマッチング登録締切（7月末）が噛み合わず、参加できない」）となったことで話題を呼びましたが、現在は一部条件が緩和されたという報告もあり、引き続き動向が注目されています。とはいえ、この調査が今後のキャリアにおいてますます重要になることは間違いありません。

本記事では、日本語診療能力調査の目的や評価項目、合格基準、受験時の注意点について、初めての方にもわかりやすく解説していきます。

日本語診療能力調査とは？

日本語診療能力調査は、外国の医学部を卒業した方が日本で医師として診療を行う際に必要な日本語運用能力を評価するための試験です。

単なる語学試験ではなく、実際の診療現場で通用する日本語能力を測るという点が最大の特徴です。

試験の目的

この調査は以下を目的に実施されます。

日本語を用いて診察するために十分な能力を有しているか否かを調査する。
具体的には、現病歴や身体所見等の医療情報の収集、検査や治療の計画策定及び診断書の作成等について、日本の医学校において医学の課程を修めた者と同等の能力を有するか否かを調査する。

評価される5つの能力領域

日常診療において関わる機会の多い主要な症候を呈した患者に対する医療面接等及び当該診療に関する記述や説明を行い、次の各領域について調査委員２名が各々４段階（３～０）の評価を行う。

評価項目	内容
聴く能力	患者等及び医療従事者の話を聴き、内容を正しく理解することができるか。
話す能力	患者等及び医療従事者に診療内容を正確に説明し、理解を得ることができるか。
書く能力	基本的な医療記録を日本語で適切に作成することができるか。
読み取る能力	日本で使われる医学用語を正しく理解した上で音読することができるか。
診察する能力	患者に対して具体的な説明を行いながら適切に身体所見をとることができるか。また、その所見を医療従事者に適切に説明することができるか。

評価方法とスコア基準

各評価項目は、調査委員2名が以下の4段階で採点します。

スコア	内容
3	日本語で医学教育を受けたものと変わらない
2	一部に困難はあるが、診療の支障とならない
1	全体的に困難はあるが、かろうじて問題を克服することができる
0	誤解を生じる危険等、診察上の不都合がある

合格基準

日本語診療能力調査の合格条件は次の2点です。

100点満点換算で60点以上
すべての評価項目で「0点」がないことつまり、1つでも致命的に不足している能力がある場合、不合格となります。安全で正確な診療コミュニケーション力が総合的に求められる試験です。

試験時期と注意点

実施時期：例年9月下旬
年1回の実施のため、受験機会を逃すと翌年まで待機が必要
書類審査通過後に受験資格が与えられる

試験対策のポイント

模擬問診や模擬診察でのロールプレイ練習
医療用語を用いたカルテ記載のトレーニング
日本語の医療文書や動画教材を活用した学習
例：例：「診察ができる」（メディックメディア）、OSCE対策動画など

医師や看護師とのチーム医療を想定した会話練習

まとめ

「日本語診療能力調査」は、海外医学部を卒業した人達が日本で医師として働くための、大切なステップのひとつです。試されるのは単なる語学力だけでなく、患者さんとの信頼関係を築いたり、医療チームと連携しながら診療を行う“実践的な日本語力”です。制度や試験に戸惑うこともあるかもしれませんが、できることから少しずつ準備を進めていけたら安心だなと感じています。私自身も、同じ道を目指す一人として、日々少しずつ勉強を重ねています。