クリニック開業において、内装・設計は非常に重要な要素です。快適な空間は、患者様の安心感と満足度を高めるだけでなく、スタッフの働きやすさにも繋がり、ひいてはクリニックの成功に大きく貢献します。
今回は、クリニックの内装・設計について、患者様とスタッフの両方の視点から考え、成功するクリニックづくりのためのポイントをご紹介します。
患者様にとって快適な空間とは?
クリニックに訪れる患者様は、不安や緊張を抱えていることが少なくありません。そのため、安心感を与え、リラックスできる空間を提供することが重要です。
患者様目線で考えられた内装のポイント
- 落ち着ける雰囲気: 暖色系の色使いや自然素材、間接照明などを活用し、温かみのある空間を演出しましょう。
- 明るく清潔感のある空間: 白や薄いベージュなど明るい色を基調にする、窓を大きく取って自然光を取り入れるなど、清潔感を重視しましょう。
- 分かりやすい案内表示: 受付、診察室、トイレなど、各所の案内表示を分かりやすくすることで、患者様の不安を軽減できます。
- プライバシーへの配慮: 待合室の座席間隔を広く取る、診察室を個室にするなど、プライバシーに配慮した設計が大切です。
スタッフにとって働きやすい空間とは?
スタッフが快適に働ける環境は、業務効率の向上やモチベーション維持に繋がります。
スタッフの働きやすさを考慮したポイント
- 動線を考慮した効率的なレイアウト: 診察室、処置室、検査室の配置を工夫し、スタッフの移動距離を最小限に抑えましょう。
- ストレスを軽減する空間設計: スタッフ休憩室を設け、リラックスできる空間を提供しましょう。
- 収納スペースの確保: 医療機器や備品を整理整頓できるよう、十分な収納スペースを確保しましょう。
クリニックのコンセプトを反映した内装デザイン
クリニックの専門性やターゲット層を考慮し、コンセプトを明確に反映した内装デザインにしましょう。
- ターゲット層に合わせたデザイン: 小児科であれば明るい色使いや遊び心のある空間、婦人科であれば落ち着いた雰囲気など、ターゲット層に合わせたデザインが重要です。
- 専門性をアピールするデザイン: 最新医療機器の導入や清潔感、高級感を演出する素材選びなど、専門性をアピールできる内装にしましょう。
内装・設計のポイント
受付・待合室
- クリニックの顔となる受付は、明るく清潔感のある印象にしましょう。
- 待合室は、患者様がリラックスして過ごせるよう、快適なソファや椅子、雑誌、テレビなどを設置しましょう。
- キッズスペースを設ける場合は、安全性に配慮しましょう。
- Wi-Fi環境を整備することで、患者様の利便性を高められます。
診察室
- 患者様がリラックスして話せるよう、落ち着いた雰囲気の個室にしましょう。
- プライバシーに配慮し、防音対策も検討しましょう。
- 医療機器の配置や動線を工夫し、スムーズな診察が行えるようにしましょう。
処置室・検査室
- 機能性と清潔感を重視した設計にしましょう。
- 医療機器の配置と動線を工夫し、効率的な作業ができるようにしましょう。
- 感染対策として、換気システムの導入や抗菌素材の使用などを検討しましょう。
その他のスペース
- スタッフ休憩室は、スタッフがリラックスできる快適な空間にしましょう。
- トイレは、清潔感と使いやすさを重視しましょう。
- カウンセリングルームは、プライバシーに配慮した個室にしましょう。
- 収納スペースは、医療機器や備品を整理整頓できるよう、十分な広さを確保しましょう。
バリアフリーとユニバーサルデザイン
高齢者や障がい者など、あらゆる人が利用しやすいよう、バリアフリーとユニバーサルデザインを考慮した設計が重要です。
- スロープ、エレベーター、手すりなどを設置し、移動の負担を軽減しましょう。
- 広い通路や車椅子対応トイレを確保しましょう。
- 多様なニーズに対応できるよう、柔軟性のある空間設計を心がけましょう。
照明と色彩計画
照明と色彩は、空間の雰囲気を大きく左右する要素です。
- 診察室には、適切な明るさと色温度の照明を選び、正確な診断ができる環境を整えましょう。
- 待合室には、リラックスできる暖色系の照明がおすすめです。
- 色彩心理学に基づいた空間設計を行い、患者様の心理面に配慮しましょう。
感染症対策
院内感染予防のため、以下の点を考慮しましょう。
- 換気システムを導入し、常に新鮮な空気を保ちましょう。
- 壁や床に抗菌素材を使用しましょう。
- 手洗い、消毒設備を適切な場所に設置しましょう。
設計士との連携:理想のクリニックを形にする
クリニックの内装設計は、専門家である設計士と連携して進めることが重要です。
- 設計士とのコミュニケーション: 理想のクリニック像を明確に伝え、イメージ図や写真などを活用して具体的なイメージを共有しましょう。設計士の提案を聞き、疑問点は積極的に質問しましょう。
- 図面作成のポイント: 患者動線とスタッフ動線を分けて考え、各部屋の広さや配置を最適化しましょう。バリアフリー設計や感染症対策も忘れずに行いましょう。
患者様とスタッフの業務効率を考えた動線設計
動線設計は、患者様とスタッフ双方にとって快適な空間を作る上で非常に重要です。
- 患者動線: 受付から診察室、会計までの流れをスムーズにし、案内表示を分かりやすくすることで、患者様のストレスを軽減できます。
- スタッフ動線: 受付、診察室、処置室、検査室間の移動距離を短くし、医療機器や備品の配置を効率的にすることで、スタッフの業務効率が向上します。
コストの相場観と内装工事期間
内装工事にかかる費用と期間は、事前に把握しておくことが大切です。
- コストの相場: 内装工事費は、坪単価で30万円~100万円程度が相場です。費用は、内装材の種類、デザイン、広さ、工事のなどによって変動します。設計費、監理費、諸経費なども考慮しましょう。
- 内装工事期間: 一般的に、設計期間は1ヶ月~3ヶ月程度、工事期間は2ヶ月~4ヶ月程度です。合計で3ヶ月~7ヶ月程度の期間が必要となります。
相見積もりの進め方
複数の業者から見積もりを取り、比較検討することで、コストを抑えることができます。
- 複数の業者から見積もりを取る: 3社以上から見積もりを取り、見積もり内容を確認し、不明点は質問しましょう。価格だけでなく、実績や技術力、担当者の人柄も考慮しましょう。
- 見積もり比較のポイント: 総費用だけでなく、内訳も確認しましょう。使用する素材や設備、工事内容などを比較し、アフターフォローや保証体制も確認しましょう。
まとめ
クリニックの内装・設計は、患者様とスタッフ双方にとって快適で機能的な空間作りが重要です。
設計士と密に連携を取り、理想のクリニックを形にしましょう。
動線設計、コスト管理、相見積もりなど、 気を配るべきポイントを押さえ、スムーズなクリニック開業を目指しましょう。
次回予告:「医療機器選びはまるで相棒探し!?」
「どんな医療機器が必要かな?」
クリニック開業準備、着々と進んでいますね!でも、ちょっと待った!
医療機器選びって、実はとっても奥が深いんです。
診療科目や規模によって、相棒となるべき医療機器は全く違うし、最新機種から中古品まで、選択肢も色々。
「高ければ良いってもんじゃないし…」
「使い勝手も大事だし…」
「そもそも何が必要なの?!」
なんて悩み、きっとありますよね?
大丈夫! 第9回は、医療機器選びの相棒、見つけちゃいましょう!
必要な医療機器リストから、選び方のポイント、コストを抑えるコツまで、まるっと解決します!
お楽しみに!
2025/04/03
著者:鎌形博展
医師、株式会社EN 代表取締役、医療法人社団季邦会 理事長、東京医科大学病院 非常勤医師

東京都出身。埼玉県育ち。
明治薬科薬学部を卒業後、中外製薬会社でMRとなるも、友人の死をきっかけに脱サラして、北里大学医学部へ編入する。
卒業後は東京医科大学病院救命救急センターにて救急医として従事。2017年には慶應義塾大学大学院にて医療政策を学び、MBAを取得。東北大学発医療AIベンチャー、東京大学発ベンチャーを起業した他、医療機器開発や事業開発のコンサルティングも経験。2019年、うちだ内科医院を継承開業。以降、2020年に医療法人季邦会(美谷島内科呼吸器科医院)を継承し、2021年には街のクリニック 日野・八王子を新規開業。2023年には株式会社EN創業。国際緊急援助隊隊員・東京DMAT隊員・社会医学系専門医。趣味はBBQ。43歳で剣道・フェンシングを再開。