中国の医学部を無事に卒業した後、中国で医師として働くためには「中国の医師国家試験(国試)」に合格し、中国の医師資格を取得する必要があります。本記事では、中国の医師国家試験を受験する方法・流れ・条件について解説します。受験資格の条件や外国人受験の可否、試験のスケジュールと申込手順、合格後の資格取得と登録、日本の医師免許との関係、さらには留学生へのアドバイスや注意点も含めて説明します。

国試受験の条件(学歴要件・インターン)

中国医師国家試験の受験資格

基本的に、中国政府教育部が認可する中国の全日制医学部(本科)を卒業していることが最低条件です 。つまり、中国で医学の学士号(MBBSなど)を取得している必要があります。さらに、中国では医学部卒業後に1年間のインターン(試用期間)を修了することが受験資格の要件となっています。このインターン期間は中国語で「進修生」とも呼ばれ、通常、卒業した年の9月から約1年間、条件の合う病院で臨床研修を行うものです 。この1年間の臨床実習(試用期間)を完了していないと、中国の医師国家試験を受験できない決まりになっています。

  • 学歴要件:中国の医学部(臨床医学、中医学、口腔医学など)を卒業し学士号を取得していること。卒業証書と学位証を持っている必要があります。
  • インターン(試用期間):卒業後に連続して1年間、附属病院など中国国内の医療機関で、指導医の下で臨床研修を行うこと。この研修期間の修了証明(進修生修了証)が試験出願時に求められます。研修は指定された医療機関で行う必要があり、途中中断せず1年間継続して完了することが条件です。

    ※補足:医学部卒業後すぐに大学院へ進学する道を選ぶ留学生もいますが、その場合でも適切な形で臨床研修(進修生相当の活動)を行いながらでないと受験資格を得ることは難しいので注意が必要です。必ず大学や指導教官と相談の上、国試受験資格を満たす進路を計画しましょう。

外国人の受験は可能?必要書類や手続き

外国人でも受験できるか

結論から言えば、一定の条件を満たせば外国人留学生でも中国の医師国家試験を受験可能です。中国政府は2002年以降、外国籍の者であっても中国の医学校で必要な課程を修了し所定の研修を受けていれば、国試の受験を認める方針を示しています。したがって日本人を含む留学生も、前述の学歴要件(中国の医学部卒業)と1年の臨床研修修了という条件を満たせば受験可能です。

必要な手続きのポイント

外国人が受験する場合、中国人学生と基本的な手順は同じですが、追加で必要となる書類や手続きがあります。

  • 進修生申請:医学部卒業後、基本的には自分の卒業大学に対して「外国人医師資格試験実習申請審査表」を提出し、附属病院での1年インターン受け入れ許可を得る必要があります 。大学や病院が審査を行い、問題なければ実習許可通知書が発行されます。この書類に基づき、中国の在外公館(大使館・領事館)でインターン用のビザ(Xビザ)を申請し取得します。入国後30日以内に居留許可の手続きも行う必要があります。
  • 試験への出願書類:オンラインで受験登録をした後、指定された期間内に試験センターでの書類審査(現場での資格審査)があります。外国人受験者の場合、以下の書類が求められます

◦パスポート(有効な外国人身分証明)
◦卒業証書(医学学位証)の原本およびコピー
◦インターン修了証明(医師資格試験試用期考核証明)。研修先の病院が発行するもので、外国人の場合は「外籍人员参加中国医師資格考试実習申请审核表」という所定フォームへの記入・公証が必要になります。大学院在学中に受験する場合も同様の実習証明が求められます。
◦その他、顔写真のアップロードや受験票(准考証)用の手数料支払いなど、一般の受験者と同様に必要な手続きを完了させます 。書類審査で問題がなければ受験票が 交付され、試験本番に臨めます。

POINT

外国人留学生であっても試験内容や評価基準は中国人と同じです。当然ながら試験はすべて中国語で行われますので、高度な中国語運用能力と医学専門用語の理解力が求められます。受験までに十分な語学力を身につけておくことが重要です。

試験のスケジュールと申し込み手順

試験スケジュール(年間の流れ)

中国の医師国家試験は例年、実技試験(臨床技能試験)と筆記試験(医学総合筆試)の2段階に分かれています。おおまかな年間スケジュールは次の通りです。

  • 受験公告の発表: 毎年12月頃に翌年度の医師資格試験に関する公式公告が、中国国家衛生健康委員会や国家医学考试中心(国家医療試験センター)のサイト上で公表されます。ここでオンライン登録期間や試験日程が周知されます。
  • オンライン登録:通常、1月中旬~下旬にかけてインターネットでの受験申請登録が行われます。受験者は国家医学考试中心の公式サイト(考生服務システム)にアクセスして個人情報や学歴・実習経歴を入力し、登録を完了させます。登録完了後、システムから「报名成功通知単(申込完了通知)」を印刷できます。
  • 書類の現地提出・資格審査:オンライン登録後、2月~3月頃に各地域の試験運営当局(各省・市の医師資格考试考点オフィス)にて現場での資格審査があります 。受験者本人が指定された会場に出向き、パスポート・卒業証・実習証明など必要書類を提出します 。係員による書類確認・資格チェックが行われ、問題なければ受験料の支払いと受験票(准考証)の交付を受けます。
  • 実技試験(臨床技能試験):毎年6.7月頃に実施されます 。内容は臨床技能に関する試験で、診察や処置の手技、臨床判断力などを評価します。試験地ごとに試験日が割り振られ、病院等で実際の模擬患者やシミュレーションを用いて行われます。
  • 筆記試験(医学総合筆試):毎年8.9月頃に実施されます。2日間にわたり学科試験が行われ、医学知識全般(基礎医学、臨床医学、公衆衛生など)についてマークシート形式で出題されます。臨床医学(西洋医学)の場合、国家統一の筆記試験となります。
  • 合格発表:筆記試験の結果は例年12月頃に発表されます 。国家医学考试中心の公式サイト上で合格者の受験番号が公示され、各受験者はオンラインで自身の成績を確認できます。合格基準点は毎年調整されますが、総合点での判定となります。
申込手順のまとめ

受験希望者は、まず公式公告で示された期間内にオンライン登録を完了し、その後の現地での資格審査で必要書類を提出して受験資格を確定させます。オンライン登録時には写真アップロード等も必要になるため事前準備が大切です。また、書類審査では不備があると受験できなくなるため、前述のパスポートや卒業証明・実習証明など必要書類を漏れなく用意しましょう。

試験当日は受験票と身分証(パスポート)などを持参し、指定された会場で受験します。試験は中国語で行われるため、専門用語を含め中国語でスムーズに対応できるよう十分に勉強しておく必要があります 。

合格後の医師資格の取得

試験合格後に得られる資格: 中国医師国家試験(実技・筆記の双方)に合格すると、中華人民共和国執業医師資格が与えられます。この証書は、その人が医師資格試験に合格し医師としての資格を有することを証明するものです。

日本の医師免許との関係性(日本で使えるのか?)

中国の医師免許は日本で有効?

原則として、中国で取得した医師免許(資格)は日本国内ではそのまま効力を持ちません。日本で医師として働くには、日本の医師国家試験に合格して日本の医師免許を取得する必要があります。したがって、たとえ中国で医師資格を得ても、日本で医師になるには改めて国家試験を受けなくてはなりません 。

留学生への注意点・アドバイス

中国語能力の重要性

繰り返しになりますが、中国の医師国家試験は全て中国語で実施され、非常に高度な専門知識と言語運用力を要します。日常会話ができる程度では不十分で、解剖学や生理学から内科学・外科学に至るまで専門用語を正確に理解し使いこなせるレベルの中国語が必要です。早い段階から専門の予備校教材や過去問、対策本などを活用し、中国語で医学を学ぶ訓練を積みましょう。また、臨床実習中も積極的に中国語で患者や指導医とコミュニケーションを図り、語学力と実践力を養うことが大切です。

インターン手続きとビザ

留学生にとって見落としがちなのが卒業後のインターン(進修生)手続きです。卒業後にそのまま帰国してしまうと国試の受験資格が得られません。必ず卒業時に大学を通じて附属病院での研修許可を申請し、適切なビザを取得して1年間の研修を完遂しましょう 。ビザの更新や健康診断、現地での居留証手続きなど事務的な準備も発生しますので、大学の留学生オフィスや在中日本大使館とも連絡を取りながら抜かりなく対応してください。特に在中日本大使館には在留届を提出し、自身の現地連絡先を登録しておくと安心です(緊急時の支援や最新情報の提供を受けられます)。

試験対策とメンタルケア

中国の国試は範囲が広く難易度も高いため、計画的な勉強と情報収集が合格の鍵です。現地の中国人学生と情報交換したり、過去に合格した先輩留学生の体験談を参考にしたりすると良いでしょう。過去問演習はもちろん、模擬試験や対策講座(中国語)への参加も効果的です。長丁場の勉強になるため、体調管理やメンタルケアも重要です。適度に休息を取りつつ、モチベーションを維持する工夫をしてください。

まとめ

中国の医学部留学から国試合格、そして医師資格取得までの道のりは不安定なことも多く、沢山の壁にぶつかって、決して平坦な道のりではありません。しかし、日本と中国双方の医療を経験し国際的な視野を持つことは、将来の大きな財産となると信じています。言語や制度の違いに戸惑うこともあるかもしれませんが、綿密な準備とチャレンジ精神で乗り越えてください。先輩たちの軌跡を見ると、多くの方が努力の末に中国で医師資格を取得し、さらには日本の国家試験にも挑戦して活躍の場を広げています。

注意事項(筆者より)

本記事は、筆者自身が調査・体験をもとにまとめた内容ですが、中国の医師国家試験に関する制度や手続きは毎年見直されており、変更される可能性があります。できる限り正確な情報をお届けできるよう努めましたが、万が一情報に誤りや最新の動向と異なる点がありましたら、どうかご容赦ください。
実際に受験を検討される方は、必ずご自身で最新の情報をご確認ください。
特に以下の公式サイトなどの内容を必ずご参照いただけますよう、お願いいたします。

参考文献・情報源
  1. 【关于取得中国医学专业学历的外籍人员申请参加中华人民共和国医师资格考试有 关问题的通知 …………………………… 卫生部、中医药局、外交部、公安部__2002年第18号国务院公报_中国政府网】
  2. 師資格試験の登録、資格審査、支払いに関するよくある質問
  3.  医師国家試験受験資格認定について|厚生労働省
  4. 【外国人如何考取执业医师资格证?-知了爱学】
  5. 【外籍医生考中国医师资格证的全攻略 大家好!我是在北京工作的外籍医生,曾在2013年至2022年在北京】
  6.  国家医学考试网
  7. 中国医学留学のすべて -費用・大学・手続き・卒業後の進路を徹底解説-

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