中国の救急医は、過酷なシフト制勤務と膨大な患者対応に追われながら、総合診療スキルを駆使して多様な症例に対応しています。大都市の病院では1日2,000人超の患者を診ることもあり、まさに“最後の砦”として機能しています。現役救急医の声からその実情に迫ります。

過酷な勤務体制とシフト制度

中国医師国家試験の受験資格

中国の救急科(急诊科)は24時間体制で、医師たちは交代制の長時間勤務を求められます。科は大きく「診察室・救命処置室・観察室」の三つに分かれ、診察室では内科や外科などの初期対応が行われ、多くの患者は治療後に帰宅します。重症患者は、処置室や観察室に振り分けられます。

勤務は主に「白班(8:00〜16:00)」と「夜班(16:00〜翌8:00)」の交代制で、夜勤は「大夜(翌8時まで)」と「小夜(24時まで)」に分かれることもあります。夜勤明けは原則として翌日が休み。主班・副班・補助班による明確な分担体制のもと、夜間も休む間もなく業務が続き、研修医から主任医師まで多層的なチームで運営されています。 特に若手医師は夜勤の比重が高く、年長の医師は日勤を中心とする傾向にあります。実際、若手救急医の話では「10日間に6回出勤し、夕方16時から翌朝8時までのシフトもある。仮眠は取れるが、コールや電話ですぐに起こされてしまい、ほとんど休めない」と、過酷な実情が語られました。

1日あたりの膨大な患者数

日本でも救急医は多忙ですが、中国の救急現場はさらに過密です。北京市の主要な三次病院では、年間1,000万件におよぶ救急外来があり、1日あたり約250人の患者を診ている計算になります。これは救急が事実上「24時間営業の外来診療所」として稼働していることを意味します。

大都市の大型病院では平常時でも1日数百人規模、インフルエンザ流行期や新型コロナ流行時などには1,000人超の患者が押し寄せました 。例えば上海の瑞金医院では2022年末の感染拡大期に救急外来が1日1,600人に達したと報告されています 。さらに上海第一人民医院(虹口・松江の両キャンパス合計)ではピーク時に1日約2,500人もの救急患者を受け入れ、救急車も1日180台前後が到着する事態となりました 。こうした桁違いの患者数は圧倒的であり、中国の救急医には常に多数の患者を捌く重い負担がのしかかっています。

私自身が中国で救急実習を行った際、診察室では医師が水を飲む暇もないほど集中して診療にあたり、待合には高齢者、外傷患者、子どもなど、多様な患者とその家族であふれていました。

実際の救急のイメージ画像
実際の救急のイメージ画像

多様な症例に対応する総合診療スキル

これだけ多様かつ大量の患者に対応するため、救急医には極めて幅広い総合診療的スキルが求められます。救急外来には心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞)、多発外傷といった典型的な救命疾患はもちろん、糖尿病の急性合併症、腎不全の増悪、血小板減少に伴う出血、消化管出血、急性膵炎など内科系の緊急症 、さらには泥酔して暴れる人や身元不明の意識障害者まで、ありとあらゆる急病人が運び込まれます 。とりわけ夜間の急診科は「病院の中で最も忙しい舞台」であり、医師は複雑多岐な症状の患者に瞬時に対応しつつ、取り乱した患者家族にも対処しなければなりません 。 さらに、救急医は院内のハブ(中継駅)的な役割も担い、患者の容体を安定させた上で各専門科に引き継ぐための振り分け(トリアージ)を行います 。しかし中国では明確な初期診療(プライマリケア)の体制や重症度による受診振り分けが十分機能しておらず、救急科に雑多な患者が集中しがちです 。結果として、中国の救急医には「全ての人々・全ての疾患領域を相手にする」総合力が必須となります 。実際、急診医療のベテランである王仲医師も「救急医と全科(総合診療)医はいずれも全人群・全疾病谱(あらゆる年齢層と疾患スペクトラム)を対象とする点で共通している」と指摘しています。

[出典: 华医网采访报道我院全科医学科王仲主任:我为什么从急诊转型全科医生-媒体报道-清华大学附属北京清华长庚医院]

まさに中国の救急医は、不特定多数の患者を相手に瞬発力とオールラウンドな知識で命を救う“最後の砦”と言えるでしょう。

救急医へのインタビューより

現役の中国人救急医に少しお時間をいただき、働き方や日本医療への思いについてお話を伺いました。

なぜ救急医を選んだのですか?

「さまざまな症例に出会えることで、医師として成長できると思ったからです。それに、一人にじっくり向き合うよりも、より多くの人を助けられることにやりがいを感じましたし、それが自分に合っていると感じました。」

実際の勤務体制は?

「10日に6回出勤で、夕方16時から翌朝8時までの夜勤もあります。仮眠はできますが、呼び出しですぐに起こされることが多く、しっかり眠れることはほとんどありません。特に若手のうちは夜勤の回数が多く、体力的にも大変です。」

日本で働くことを考える人は多いですか?

「実際にはあまり多くないと思います。中国で医師としてのキャリアを積むこと自体が大変なので、そのうえでさらに日本で新しく環境を整えるのは相当な労力です。地元には家や人間関係もあるので、わざわざ他国で住まいを探し、仕事を得るのは現実的に難しいと感じる人が多いです。」

日本と中国の医療制度を比べてどうですか?

「制度そのものよりも、自分にとって暮らしやすいかどうかが大きなポイントでした。やはり、地元で仕事も生活も完結できるという安心感が、自分にとっては何よりの理由です。」

参考文献・情報源
  1. https://health.baidu.com/m/detail/ar_5924792973017588681
  2. https://www.sohu.com/a/141099879_296660
  3. http://cpc.people.com.cn/n/2014/1231/c83083-26306020.html
  4. https://zqb.cyol.com/html/2023-01/05/nw.D110000zgqnb_20230105_2-06.htm
  5. https://www.sohu.com/a/527491259_121118854
  6. 华医网采访报道我院全科医学科王仲主任:我为什么从急诊转型全科医生-媒体报道-清华大学附属北京清华长庚医院
  7. 【几点去医院属于急诊 – 九松健康】
  8. 【医院几点之后算急诊 – 九松健康】
  9. 【急诊科的24小时-新华网】
  10. 【急诊科_百度百科】
  11. 【“几乎每天新开一个病区,很快病人就收满”,上海十院全力救治急诊病人】
  12. 【急诊科的使命与坚守:面对感染的无畏挑战】
  13. 【急诊上班安排已更新。科普一下医生的上班时间安排吧,医生真的不是只出门诊的呀 – 小组讨论 – 豆瓣】

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