いよいよクリニック開業に向けて、具体的な準備を始める段階に入りました。 しかし、闇雲に準備を進める前に、まず立ち止まって考えていただきたいことがあります。

それは、 「どんなクリニックを創りたいのか?」 ということです。

この問いに対する答えこそ、クリニックの コンセプト となります。 コンセプトは、クリニックの羅針盤であり、すべての行動指針となるものです。 コンセプトが明確であれば、迷うことなく、自信を持って開業準備を進めることができます。

今回は、クリニックのコンセプトメイキングについて、具体的に解説していきます。

コンセプトの重要性

  • なぜコンセプトが重要なのか?
    コンセプトは、クリニックの 存在意義 を明確にし、 差別化 を図るために必要不可欠です。 患者様は、数あるクリニックの中から、 自分に合ったクリニック を選びます。 明確なコンセプトを持つことで、 ターゲットとなる患者層 に響くメッセージを発信し、 選ばれるクリニック になることができます。
  • コンセプトがないクリニックはどうなるのか?
    コンセプトがないクリニックは、 他のクリニックとの違い が分からず、 患者様に選ばれる理由 を明確に示すことができません。 結果として、 集患に苦労 し、 経営が安定しない 可能性があります。
  • 成功するクリニックのコンセプトとは?
    成功するクリニックのコンセプトは、 具体的 であり、 患者様のニーズ を捉えているものです。 また、 地域特性 や 競合状況 を考慮した、 独自性 のあるコンセプトであることも重要です。

クリニックの理念・ビジョン・ターゲット層

  • 理念:クリニックの存在意義、価値観
    理念は、クリニックが なぜ存在するのか 、 何を大切にしているのか を示すものです。 理念は、スタッフの行動指針となり、クリニック全体の 一体感 を醸成します。
  • ビジョン:クリニックの将来像、目指す姿
    ビジョンは、クリニックが 将来どのような姿を目指しているのか を示すものです。 ビジョンは、スタッフの モチベーション向上 に繋がり、クリニックの 成長 を促進します。
  • ターゲット層:どんな患者を対象とするのか
    ターゲット層は、クリニックが どのような患者様を対象としているのか を明確にするものです。 ターゲット層を明確にすることで、 効果的な集患戦略 を立てることができます。 例えば、 小児科であれば、年齢層や疾患、子供の性格、親御さんの層などを想定 、内科であれば、年齢層やライフスタイル、健康に対する意識などを想定、訪問診療であれば、年齢層や疾患、家族構成、介護状況などを想定

競合分析と差別化戦略

  • 競合クリニックの調査:診療科目、診療時間、料金、評判
    競合クリニックを調査することで、 自院の強みと弱み を把握し、 差別化を図るための戦略を立てることができます。 調査項目としては、診療科目、診療時間、料金、評判、立地、設備、サービス、スタッフ、WEBマーケティングなどがあります。
  • 差別化ポイント:専門性、技術、サービス、雰囲気
    競合との差別化ポイントは、 専門性 、 技術 、 サービス 、 雰囲気 など、様々です。 例えば、【特定の疾患に特化した専門クリニック】、【  最新の医療機器を導入したクリニック 】、【患者様一人ひとりに寄り添った丁寧な診療 】、【 アットホームな雰囲気でリラックスできるクリニック】などです。
  • 独自性の確立
    差別化ポイントを明確にすることで、 自院だけの強み を打ち出し、 独自性 を確立することができます。 独自性のあるクリニックは、 患者様に選ばれやすく 、 競争に勝ち抜く ことができます。

クリニックの強みを明確にする

  • 強みとは何か?:他のクリニックにない優位性
    強みとは、 他のクリニックにない優位性 のことです。 強みを活かすことで、 患者様に選ばれる理由 を明確に示すことができます。
  • 強みの見つけ方:自己分析、スタッフの意見、患者さんの声
    強みを見つけるためには、 自己分析 、 スタッフの意見 、 患者さんの声 などを参考にします。 例えば、 医師としての専門性、経験、スキル 、 スタッフのホスピタリティ、チームワーク 、患者様からの評判、口コミ
  • 強みを活かしたクリニックづくり
    強みを明確にしたら、それを 最大限に活かしたクリニックづくり を目指します。 例えば、専門性を活かした診療科目の設定 、 強みをアピールするホームページや広告の作成、強みを活かしたサービスの提供といったものです。

    クリニックのコンセプトメイキングは、開業準備の 最初のステップ であり、 最も重要なプロセス の一つです。 時間をかけて、 じっくりと 考え、 明確なコンセプト を策定しましょう。

    なお、このコンセプトメイキングと合わせて、最も重要なものが市場の分析、顧客の理解です。地域の状況やニーズとマッチしないコンセプトをどれだけ練りこんでもいけません。

    自分のやりたいことと、地域・顧客が求めていることをマッチングさせることを意識して進めると良いでしょう。

次回予告:「成功するクリニック開業の鍵は、エリアマーケティングにあり!」

第4回は、クリニック経営の土台となるエリアマーケティングと市場分析について徹底解説します。

「どんな地域で、どんな医療ニーズがあるのか?」 「競合となるクリニックはどんな状況なのか?」 「自院の強みを活かせる場所はどこか?」

データに基づいたエリアマーケティングと市場分析の手法を具体的にご紹介。

「あなたのクリニック」が地域社会に貢献し、患者様に選ばれるための戦略を学ぶことができます。

ぜひ第4回をご覧いただき、成功への第一歩を踏み出してください。

2025/04/03
著者:鎌形博展
医師、株式会社EN 代表取締役、医療法人社団季邦会 理事長、東京医科大学病院 非常勤医師


東京都出身。埼玉県育ち。
明治薬科薬学部を卒業後、中外製薬会社でMRとなるも、友人の死をきっかけに脱サラして、北里大学医学部へ編入する。
卒業後は東京医科大学病院救命救急センターにて救急医として従事。2017年には慶應義塾大学大学院にて医療政策を学び、MBAを取得。東北大学発医療AIベンチャー、東京大学発ベンチャーを起業した他、医療機器開発や事業開発のコンサルティングも経験。2019年、うちだ内科医院を継承開業。以降、2020年に医療法人季邦会(美谷島内科呼吸器科医院)を継承し、2021年には街のクリニック 日野・八王子を新規開業。2023年には株式会社EN創業。国際緊急援助隊隊員・東京DMAT隊員・社会医学系専門医。趣味はBBQ。43歳で剣道・フェンシングを再開。

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