クリニック開業において、医療機器の選定は、初期投資の中でも大きな割合を占める重要な決断です。診療科目やクリニックの規模、目指す医療の質によって、必要な機器は大きく異なります。
今回は、医療機器選定の基本的な考え方から、具体的な選定方法、購入・リース・レンタルの選択肢、そしてコストを抑えるためのポイントまで、詳しく解説していきます。
いつから検討する?医療機器選定のタイミング
医療機器の選定は、開業準備の初期段階から始めることが重要です。内装工事やレイアウトを考える際にも、医療機器のサイズや配置を考慮する必要があるからです。
具体的には、物件が決まった段階、遅くとも内装工事が始まる前には、医療機器の選定を始めておくようにしましょう。
診療科目に合わせて必要な機器をリストアップ
まずは、開業する診療科目と、提供する医療サービスに必要な医療機器をリストアップしましょう。
- 基本的な医療機器: 聴診器、血圧計、体温計、パルスオキシメーターなど、どの診療科目でも必要となる基本的な医療機器を揃えましょう。
- 専門的な医療機器: 内科であれば心電図、レントゲン装置、超音波診断装置など、診療科目特有の専門的な医療機器が必要となります。
- その他: 電子カルテシステム、医療事務システム、予約システム、自動精算機、問診システム、デジタルサイネージなど、クリニック運営に必要な機器も検討しましょう。
最新機種?中古品?購入?リース?レンタル?それぞれのメリット・デメリットとコスト比較
医療機器の購入方法は、大きく分けて「購入」「リース」「レンタル」の3つがあります。それぞれのメリット・デメリットとコストを比較検討し、クリニックの状況に合わせて最適な方法を選びましょう。
購入方法 | メリット | デメリット | コスト |
購入 | ・所有権が得られる ・長期的に見るとコストを抑えられる ・減価償却できる | ・初期費用が高額 ・機器の入れ替えが難しい | 高 |
リース | ・初期費用を抑えられる ・最新機種を導入しやすい ・リース期間終了後、機器を返却できる | ・所有権は得られない ・リース期間中は解約できない | 中 |
レンタル | ・初期費用が最も安い ・必要な時に必要な機器を借りられる ・短期間の利用に最適 | ・レンタル期間が長くなるとコストが高くなる ・最新機種はレンタルできない場合がある | 小 |
医療機器選定のポイント
医療機器を選ぶ際には、以下のポイントを考慮しましょう。
- 性能: 医療機器の精度、機能、操作性などを比較し、診療に必要な性能を満たしているか確認しましょう。
- 価格: 予算に合わせて、コストパフォーマンスの高い機器を選びましょう。
- メーカー: 信頼できるメーカーの機器を選び、アフターサービスやメンテナンス体制も確認しましょう。
- 使いやすさ: スタッフが使いやすく、操作しやすい機器を選びましょう。
- 省スペース: クリニックのスペースに合わせて、コンパクトな機器を選ぶことも重要です。
- 耐久性: 長く使える耐久性のある機器を選びましょう。
相見積もりの進め方
医療機器は高額なものが多いため、複数の業者から見積もりを取り、比較検討することが重要です。通常は卸に見積もりを取り、競争させます。一部、メーカーに直接見積もりを要求することも検討することは可能です。その場合、直接見積もりを先に依頼しましょう。
- 複数の業者に問い合わせ: 少なくとも2社以上の業者に見積もりを依頼しましょう。
- 見積もり内容の確認: 見積書の内容を仔细に確認し、価格だけでなく、納期、保証内容、アフターサービスなども比較しましょう。
- 交渉: 価格や条件について、業者と交渉する余地もあります。
コストを抑えるためのポイント
医療機器の選定は、開業費用の中でも大きな割合を占めるため、コストを抑えることが重要です。
- 中古品の活用: 使用頻度の低い機器や、型落ちでも性能に問題がない機器は、中古品を検討することでコストを抑えられます。
- リース・レンタルの活用: 初期費用を抑えたい場合は、リースやレンタルを検討しましょう。
- 複数社からの見積もり: 複数の業者から見積もりを取り、比較検討することで、より安い価格で購入できます。
- 補助金の活用: 医療機器の購入に活用できる補助金制度がないか、事前に確認しましょう。カルテや自動精算機などの購入の際には使用できる補助金も珍しくありません。
まとめ
医療機器の選定は、クリニックの診療内容や規模、予算などを考慮し、慎重に行う必要があります。
必要な機器をリストアップし、性能、価格、使いやすさなどを比較検討することで、最適な医療機器を揃え、質の高い医療サービスを提供できる環境を整えましょう。
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2025/04/03
著者:鎌形博展
医師、株式会社EN 代表取締役、医療法人社団季邦会 理事長、東京医科大学病院 非常勤医師

東京都出身。埼玉県育ち。
明治薬科薬学部を卒業後、中外製薬会社でMRとなるも、友人の死をきっかけに脱サラして、北里大学医学部へ編入する。
卒業後は東京医科大学病院救命救急センターにて救急医として従事。2017年には慶應義塾大学大学院にて医療政策を学び、MBAを取得。東北大学発医療AIベンチャー、東京大学発ベンチャーを起業した他、医療機器開発や事業開発のコンサルティングも経験。2019年、うちだ内科医院を継承開業。以降、2020年に医療法人季邦会(美谷島内科呼吸器科医院)を継承し、2021年には街のクリニック 日野・八王子を新規開業。2023年には株式会社EN創業。国際緊急援助隊隊員・東京DMAT隊員・社会医学系専門医。趣味はBBQ。43歳で剣道・フェンシングを再開。