共同研究で来日のインド人留学生や研究者に300万円支援へ AIなど研究力向上(テレビ朝日系(ANN))
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文部科学省は、AIなど先端技術分野での研究力向上を目指し、インドからの大学院生や若手研究者を対象とする支援策を発表しました。2025年度の予算案では、最大270人を対象に1人あたり年間300万円を支援し、共同研究を行う日本の大学を公募する予定です。この政策の目的は、研究力向上と優秀な人材の日本国内への定着ですが、果たしてどれだけの成果が期待できるのでしょうか?
政策の概要と期待される成果
文科省の狙いは、研究交流を通じて日本の技術競争力を強化することです。インドはAIや理工系分野において論文の質・量で世界的な存在感を示しており、日印の共同研究は互いに大きな利益をもたらすと期待されています。
特に、日本のロボティクスやAI応用分野は世界的にも評価が高く、インドの若手研究者にとっても魅力的な研究環境となるでしょう。さらに、年間300万円の支援は研究活動と生活を大きく支えるものであり、研究後のキャリア支援を通じて、日本企業や大学への就職の道も開かれるとされています。
課題は「日本への定着」—アメリカ・欧州の壁
しかし、この政策には「インド人研究者は本当に日本に定着するのか?」という疑問がつきまといます。アメリカやヨーロッパは、研究資金の潤沢さ、研究ネットワークの広さ、英語環境といった点で依然として大きな魅力を持っています。特に、言語の壁は日本にとって深刻な課題です。研究活動が日本語中心であれば、インドからの研究者は十分に実力を発揮できないかもしれません。
また、キャリアパスについても、日本の学術界はポストが限られており、転職市場も欧米ほど柔軟ではありません。結果として、プログラム終了後にインドへ帰国するか、欧米へと流出する可能性も考えられます。
それでも日本が「選ばれる理由」はあるのか?
インド人研究者が日本を選び、定着するためには、いくつかの要因が考えられます。
1. 研究分野の強み
日本はロボティクス、材料科学、AI応用分野などで高い実績があります。これらの分野での共同研究は、インドの研究者にとってキャリアの向上につながるでしょう。
2. 経済的・研究支援の魅力
年間300万円の支援は、特に若手研究者にとって大きなインセンティブです。また、インド人研究者に特化したキャリア支援が整えば、長期的な日本定着のきっかけになります。
3. キャリアパスと産学連携の充実
文科省が明言する「キャリアパスの支援」には、日本企業や大学での就職サポートが含まれると期待されます。AIやIT分野の人材不足が進む日本にとって、インドの研究者は貴重な存在です。
4. 日印関係の親密さ
近年、日印関係は経済・安全保障両面で強化されています。親日的なインド人研究者は多く、米国や欧州の移民政策が厳格化する中で、日本が開かれた政策を打ち出せば、十分に選択肢となり得ます。
課題を克服するために日本ができること
この政策が一時的な「人材集め」で終わらず、日本への長期定着につながるためには、以下の取り組みが求められます。
・英語環境の整備: 大学や研究機関で英語による研究指導や授業を拡充する。
・生活・家族支援の強化: 住宅、医療、子供の教育など、研究者の家族が安心して暮らせるサポートを提供する。
・キャリアパスの可視化: 日本企業や研究機関と連携し、研究終了後の就職ルートを示す。
・国際共同研究の拡大: インドへの技術移転や共同研究プロジェクトを強化し、インド側にも利益がある「Win-Win」の関係を築く。
結論:持続的な戦略が未来を決める
この政策は、日本がインドとの人的交流を深め、研究競争力を高めるための重要な一歩です。しかし、単年度の予算で終わらせるのではなく、言語、キャリア、生活面の課題を中長期的に解決していく必要があります。
「選ばれる国」になるために、日本は単なる資金支援にとどまらず、研究者が「ここに住み、研究を続けたい」と思える環境を作ることが鍵となるでしょう。
あなたは、この政策が日本の研究力向上とインド人研究者の定着につながると思いますか? それとも、まだ課題は多いと感じますか?
2025/02/06
著者:鎌形博展
医師、株式会社EN 代表取締役、医療法人社団季邦会 理事長、東京医科大学病院 非常勤医師

東京都出身。埼玉県育ち。
明治薬科薬学部を卒業後、中外製薬会社でMRとなるも、友人の死をきっかけに脱サラして、北里大学医学部へ編入する。
卒業後は東京医科大学病院救命救急センターにて救急医として従事。2017年には慶應義塾大学大学院にて医療政策を学び、MBAを取得。東北大学発医療AIベンチャー、東京大学発ベンチャーを起業した他、医療機器開発や事業開発のコンサルティングも経験。2019年、うちだ内科医院を継承開業。以降、2020年に医療法人季邦会(美谷島内科呼吸器科医院)を継承し、2021年には街のクリニック 日野・八王子を新規開業。2023年には株式会社EN創業。国際緊急援助隊隊員・東京DMAT隊員・社会医学系専門医。趣味はBBQ。43歳で剣道・フェンシングを再開