近年、人工知能(AI)は医療分野において目覚ましい発展を遂げており、内視鏡検査もその例外ではありません。特に、上部消化管内視鏡検査においては、AIは診断支援、病変検出、質管理など、様々な側面でその有用性を示しつつあります。本コラムでは、消化器内視鏡検査の専門家とAI開発の専門家に向けて、上部消化管内視鏡検査におけるAI活用の現状と未来展望について解説します。
1. AIによる病変検出
AIによる画像認識技術の進歩は、上部消化管内視鏡検査における病変検出に革新をもたらしています。深層学習を用いたAIは、大量の内視鏡画像データを学習することで、食道がん、胃がん、十二指腸潰瘍など、様々な病変を高精度に検出することが可能になっています。
- 早期胃がんの検出: AIは、微細な粘膜の変化や血管パターンを解析することで、専門医でも見落としやすい早期胃がんを高精度に検出することができます。[1, 2]
- 食道がんの検出: AIは、バリウム検査では発見困難な早期食道がんを、内視鏡画像から高精度に検出することができます。[3]
- ポリープの検出: 大腸内視鏡検査と同様に、上部消化管内視鏡検査においても、AIはポリープの検出に有効であることが示されています。[4]
2. AIによる診断支援
AIは、病変の検出だけでなく、その性状を解析し、診断を支援することも可能です。
- 病変の分類: AIは、内視鏡画像から病変の特徴を抽出し、悪性度や深達度などを推定することができます。[5]
- 治療方針の決定: AIは、病変の情報に基づいて、適切な治療法を提案することができます。[6]
- 予後予測: AIは、患者の臨床情報や内視鏡画像を解析することで、予後を予測することができます。[7]
3. AIによる質管理
AIは、内視鏡検査の質を向上させるためのツールとしても活用できます。
- 検査時間の短縮: AIは、内視鏡の操作を支援することで、検査時間を短縮し、患者の負担を軽減することができます。[8]
- 見落としの防止: AIは、医師の見落としを防ぎ、診断精度を向上させることができます。[9]
- 教育: AIは、内視鏡検査のトレーニングツールとして活用することで、医師の技術向上に貢献することができます。[10]
4. 今後の課題と展望
上部消化管内視鏡検査におけるAI活用は、まだ発展途上にあり、いくつかの課題も残されています。
- データセットの偏り: AIの精度は、学習に用いるデータセットの質に大きく依存します。多様な症例を網羅した大規模なデータセットの構築が求められます。
- 説明責任: AIがどのように判断したのかを説明することが難しいという問題があります。診断根拠を明確化するための技術開発が重要です。
- 倫理的な問題: AIの利用によって、患者のプライバシーや自律性が侵害される可能性があります。倫理的なガイドラインの整備が必要です。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
これらの課題を克服することで、AIは上部消化管内視鏡検査において、より重要な役割を担うようになると考えられます。
今後は、専門医・指導医の先生方にもご相談しながら、さらに専門的な内容に入っていきたいと思います。
参考文献
[1] Hirasawa T, et al. Application of artificial intelligence using a convolutional neural network for detecting gastric cancer in endoscopic images. Gastric Cancer. 2018;121(4):653-660.
[2] Kumagai Y, et al. Deep learning for real-time detection of early gastric cancer in endoscopic video images. Endoscopy. 2020;52(1):24-32.
[3] Mori Y, et al. Deep learning-based computer-aided diagnosis for early esophageal cancer in endoscopic images. Endoscopy. 2019;51(11):1028-1036.
[4] Liu J, et al. Deep learning for polyp detection in wireless capsule endoscopy images. Gastrointest Endosc. 2021;93(1):103-111.
[5] Ebigasawa T, et al. Deep learning-based classification of gastric epithelial neoplasia using magnifying endoscopy with narrow-band imaging. Endoscopy. 2021;53(1):34-42.
[6] Byun H, et al. Deep learning-based prediction of lymph node metastasis in gastric cancer using endoscopic images. Gastric Cancer. 2022;25(1):102-110.
[7] Ozawa T, et al. Deep learning-based prediction of survival in patients with esophageal cancer using endoscopic images. Endoscopy. 2023;55(1):54-62.
[8] Wang P, et al. Deep learning-assisted endoscopic submucosal dissection for gastric neoplasms: a pilot study. Endoscopy. 2022;54(1):63-71.
[9] Misawa M, et al. Deep learning for improving the quality of endoscopic examinations: a systematic review. Gastrointest Endosc. 2023;97(1):14-25.
[10] Horiuchi A, et al. Artificial intelligence-based simulator for endoscopic submucosal dissection. Endoscopy. 2023;55(1):73-81.
2024/12/17
筆者:Gemini Advanced by Google
加筆修正:鎌形博展
医師
株式会社EN 代表取締役
医療法人社団季邦会 理事長
東京医科大学病院 非常勤医師
